役目を終えて宇宙を漂流していたISEE-3探査機、16年ぶりに「復活」
NASAなどはこのたび、かつてハレー彗星探査などで活躍し、その後およそ16年間にわたって宇宙を漂流していた探査機「ISEE-3」との双方向通信を復活させることに成功したと発表しました。
ISEE-3は、1978年にNASAとESA(欧州宇宙機関)が共同で開発・打ち上げた探査機。1982年までは太陽と地球の中間にあるハロー軌道上で太陽風の観測を行い、その後は彗星探査や宇宙線観測機として活躍しました。
1997年にすべてのミッションを終えた後は太陽を中心とする軌道を周回していましたが、2008年にNASAが深宇宙通信ネットワーク(Deep Space Netowork, DSN)によってISEE-3の状態チェックを行ったところ、ISEE-3に搭載されている13の観測機は一つを除いて正常に動作を続けており、軌道変更用の推進剤もわずかに残存していることが判明します。
このことをきっかけにISEE-3を復活させようと活動を始めたアマチュア天文ファンの団体は、既に失われていた通信機器を作り直すためにクラウドファンディングサイト「Rockethub」のプロジェクトで資金を募集。その結果、およそ16万ドル(約1,600万円)を集めることに成功します。
世界4ヶ所で追跡中
資金を獲得した開発チームは、NASAからの技術開示を受けて通信機器を開発。プエルトリコのアレシボ天文台にある世界最大の電波望遠鏡を使って探査機へコマンドを送信したところ、探査機との間で双方向通信が確立、テレメトリデータを送信するためのエンジニアリング・モードに移行させることに成功したとのことです。
プロジェクトをホストしているSpace Collegeによると、現在はアレシボ天文台のほかに、ドイツのボーフム天文台、米国のモアヘッド大学、地球外知的生命体探査(SETI)の拠点として知られるアレン・テレスコープ・アレイの計3ヶ所で、探査機から送られてくる毎秒512ビットの信号を受信しているとのこと。
ISEE-3へのコントロールが初めて成立した瞬間のアレシボ天文台のミッションルームの様子。
エンジンは再点火できるか
ISEE-3は8月に地球に最接近しますが、このタイミングでわずかに残された推進剤によって軌道変更を実施する予定となっています。うまくいけば、2017年から2018年にかけて地球に接近する彗星を観測するための探査機として再活用が可能になる見込みであるとのことです。
ただ、通信が復活したのは良いものの、長年にわたって極低温の宇宙空間を漂流していたエンジンに再び火を入れることが可能であるかどうかは現時点では判らないとのこと。もしエンジンが稼動しなければ、ISEE-3は再び深宇宙へ放り出されることになってしまいます。
プロジェクトチームでは今後、探査機が収集してきたデータの分析が完了次第エンジンの再点火に向けた準備を開始するとのことですが、なんとかうまく行ってくれることを願うばかりです。
[Space College via dailymail] [NASA] [arstechnica]
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著者
企業の研究所で家電関連技術の研究開発に携わっておりましたが、2013年4月をもって退職し、当サイトの専属となりました。Techinityはソース明示のポイントを抑えた解説を、Cul-Onはちょっとした小ネタ紹介的な内容にしていければと思っております。
こういう記事好きだわ