The Economist

韓国経済:膨れ上がる家計債務

2014.06.05(木)  The Economist

 そして今、新たな債務減免計画が、これらの信用力の低い低所得家計を銀行の世界に引き戻すことを目指している。

 2013年3月に創設された国営の国民幸福基金(NHF)は、リーさんの膨大な利息と債務元本の半分を減免した。リーさんは今、残り半分の債務を10年かけて低金利で返済している。リーさんはこれまでまじめに返済してきたおかげで、17年ぶりに銀行口座を開設することができた。

 18兆ウォン規模のNHFは、創設されてからの1年間で、リーさん以外にも24万9000人の人が債務を半分減免されるのを手助けしてきた。NHFは6カ月以上返済が滞っている1億ウォン未満のローンを金融機関から買い取り、元本を最大で70%減免する。このほか4万8000人の債務者が、高利を低利に切り替える「ドリームローン」を受けた。特に実直な債務者は、銀行がもっと信用力の高い人にしか提供しない金利で最大1000万ウォンまで融資を受けられる。

 NHFは貧しい人の窮状を和らげることに焦点を置いてきた。しかし韓国の債務の大半は、まだ富裕層が抱えている。富裕層が融資を得ようとする際の最大の障害は、住宅ローンに対する制限だ。韓国では、住宅ローンは不動産価値の50%を超えてはならない。それでも、住宅ローンは中間所得世帯の債務の半分を占めている。

 もっと自由度の高いノンバンクの融資に頼ったり、金利が上下した時(ほぼすべての住宅ローンは変動金利)の応急措置として、そうしたノンバンク融資を利用したりする住宅所有者が増えている。

厳しくなる中流家庭の懐事情

 これが、以前なら万が一の場合に備えて、または定年退職後を考えて大事に貯蓄されていたお金を枯渇させた。韓国の家計貯蓄率は1988年の19%から2012年の4%まで急落し、OECDの中で最も低い部類に入る。しかし、韓国の年金基金は規模が小さく、社会福祉給付は限られている。

 ローンの返済は、中流家庭の所得の4分の1を食いつぶす。マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)によると、住宅ローンを含めると、これらの家計の半数以上は銀行に預けるお金より出費が多い赤字状態と見なすことができ、その割合は1990年の15%から大きく上昇したという。

 韓国の首都ソウルでは住宅価格が下がっており、韓国家計の財力が圧迫されつつある。韓国政府は今、明確に家計債務の削減に努めている。そのためには、急性の債務だけでなく慢性的な債務にも取り組む必要がある。

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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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