Updated: Tokyo  2014/06/06 07:15  |  New York  2014/06/05 18:15  |  London  2014/06/05 23:15
 

給料上がらないのに食料価格高騰-悲惨指数上昇

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  6月6日(ブルームバーグ):タツナミ・ミエコさんは安倍晋三政権が進めているリフレ政策に納得できないでいる。

都内の巣鴨商店街で買い物をしていたタツナミさん(70)は「毎日いただいているものがすべて高くなっている。いろいろな工夫をしている。例えば、お肉の量を半分にして、野菜をいっぱい入れるとか」と話す。タツナミさんは着物着付け師を引退し、今は年金生活だ。

総務省の消費者物価指数によると、4月の食料価格 は消費税率引き上げを受けて過去23年間で最も高い伸びを示した。みずほ証券が発表した4月の日本版「ミザリー(悲惨)指数」は7.0%と1981年以来の高水準に達した。一方で、厚生労働省が発表した4月の毎月勤労統計調査によると、1人当たりの現金給与総額に物価変動の影響を加味した実質賃金指数 は4年以上ぶりの落ち込みを示した。

食料価格は消費者物価指数の約25%を占めるため、食料価格上昇を通じて物価の高止まりが続けば安倍政権が来年実施予定の10%への消費税引き上げを判断する際、家計支出が圧迫され消費 が落ち込んでいる可能性がある。安倍政権は消費税増税の痛みを緩和するために、景気刺激策、税額控除、給付金増額などの手段を取らざるを得なくなるかもしれない。

消費意欲

JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは賃金が上がる保証がないのに物価が上がれば、消費意欲が冷え込むとし、安倍政権は景気がよくなるとの国民の期待を高める必要があると指摘した。

4月の食料価格は前年同月比5%上昇し、生鮮食品の上昇率は10%だった。玉ネギは37%、サケは30%それぞれ上昇した。

今年4月までの1年間で円は対ドルで5%下落。カロリーベースで食料自給率が約39%の日本にとって輸入物価押し上げにつながる。2011年3月の東京電力福島第一原発事故以降、全原発が一時期を除いて稼働を停止しており、化石燃料輸入への依存度も増している。

総務省のデータによると、4月の都内小売店の輸入牛肉価格は100グラム当たり230円と、前年同月の187円から上昇した。アジア開発銀行研究所の吉野直行所長(慶応大学名誉教授)によると、円安でエネルギーコストが上昇し温室栽培の野菜の値段にも影響している。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト、食料価格が5月も上昇し、その後は高値で横ばいになると予想している。

安倍政権の掲げている生産・所得・支出の「前向きの循環メカニズム」の一環として、日銀は物価の2%上昇を目標としている。4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI )は前年同月比で3.2%上昇。  

しかし、安倍政権のインフレ率以上の賃上げを進める政策は停滞のリスクにさらされている。基本給などの所定内給与は4月まで23カ月連続で減少 。

ゴールドマン・サックス・グループは5月からのベースアップを0.5%と予想。ブルームバーグ・ニュースがまとめた今年のインフレ率のエコノミスト予想中央値2.6%を下回った。

家計への圧迫

家計への圧迫が続けば、安倍政権の支持率を損ないかねない。日本経済新聞によると、安倍政権への支持率は5月に53%となり、12年12月時点の62%から低下した。

法人税率の引き下げが自民党の方針となったが、連立与党の公明党は消費税の10%への引き上げ時に食料品などへの軽減税率導入を優先するべきだとの立場を示しており、安倍首相が圧力を受けている。

みずほ証券の上野氏は安倍政権の政策の選択肢として、低所得者層の負担を緩和するための給付金増額などを挙げている。

アジア開銀研究所の吉野所長は食料価格が上昇すれば、1997年の消費増税時のように耐久財やぜいたく品への支出、外食が減ると予想。消費の落ち込みには政府の景気刺激策が必要になるとの見方を示した。

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「賃金上昇の恩恵が行き渡らないだけあって、これから物価上昇続くとシニア層のマインドが冷えるリスクがある」と指摘した。熊野氏の試算によると、13年の消費で世帯主が60歳以上の家計が占める割合は約47%だった。

タツナミさんは「年金は高くなっているどころか、減っている。アベノミクスで大企業は繁栄しているかもしれないが、私たちの生活は厳しい。あまり遊べなくなった」とぼやく。

原題:Abenomics Spells Most Misery Since ’81 as Retiree Skimpson Meat(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 Isabel Reynolds ireynolds1@bloomberg.net;東京 Chikako Mogi cmogi@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.netアンディ・シャープ, 上野英治郎

更新日時: 2014/06/06 00:01 JST

 
 
 
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