安倍晋三と書いて、新自由主義者と読む

安倍晋三と書いて、新自由主義者と読む

安倍晋三首相はどこに向かっているのか

安倍首相は新自由主義者なのか?ということがときおりネット上などで議論されることがあります。私などははっきりと、安倍首相は小泉純一郎の後継者であり、はっきりと新自由主義的な構造改革論者であると考えています。

安倍首相は第一次安倍政権成立時の演説でこのように述べています。

 まず初めに、はっきりと申し上げておきたいことは、5年間小泉総理が進めてまいりました構造改革を私もしっかりと引き継ぎ、この構造改革を行ってまいります。構造改革はしばらく休んだ方がいい、あるいは大きく修正をした方がいいという声もあります。私は、この構造改革をむしろ加速させ、そして補強していきたいと考えております。
(http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2006/09/26press.html)

つまり、少なくとも第一次安倍政権成立時においては、安倍首相は自らを小泉純一郎の新自由主義的な改革路線の継承者であると自認しているわけですね。そして、残念なことに、その路線に対する見直しや修正に関する言葉は一切聞かされず、むしろダボス会議の演説では、

既得権益の岩盤を打ち破る、ドリルの刃になるのだと、私は言ってきました。
春先には、国家戦略特区が動き出します。
向こう2年間、そこでは、いかなる既得権益といえども、私の「ドリル」から、無傷ではいられません。
(http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0122speech.html)

と述べており、見直しや修正を行うどころか、むしろより強力に改革を押し進めていくと宣言しているワケです。安倍首相のこういった発言は枚挙にいとまがありませんが、これらから読み取れることは、安倍首相は日本を取り戻す気など全くなく、反対に国民を国際競争のまっただ中に突き落とす、非常に残忍な経済思想を持った人物であると言えるでしょう。

余談ですが、この点においては、政権の理念においては、小泉政権の改革路線の修正を掲げた民主党政権の方がまだマシだったのではないかと思います、まあ、もっとも民主党政権も当初掲げた福祉政策がほとんど全て失敗し、結局、菅直人、野田佳彦とトップが代わるにつれて、元の改革路線へと回帰していってしまったワケですが(この失敗に関しては、特に均衡財政へのこだわりと、経済政策の無策という二つの要素が大きかったように思います)。

しかし、このような現実にも関わらず、大胆にも「安倍さんは新自由主義者などではない!!」とアクロバティック擁護を行った人物がいます。それが誰かというとリフレ派経済評論家の上念司氏です。

太鼓持ちのミスリードに気をつけましょう

今回、取り上げたいのは、こちらの動画です

【メディアの嘘を見抜け】「新自由主義」の誤用、安倍と白川はこんなに違う[桜H25/10/23]
(https://www.youtube.com/watch?v=TCjrbv56Qws)

 上念氏の主張を簡単に説明すると、新自由主義者の代表的な存在と見なされているミルトン・フリードマンとその弟子である白川元日銀総裁は、裁量的な財政政策と金融政策の有効性を否定したが。それに対して安倍政権は、アベノミクス第一の矢【金融緩和】と第二の矢【財政出動】によってデフレ脱却を目指した。よって、安倍晋三は、フリードマンの真逆であり、新自由主義者ではないという主張です。

 えー、「ミルトン・フリードマンこそ随一のマネタリストであって、金融政策は否定してないだろ!!」という溜息まじりのツッコミはさておきまして、先の上念氏の主張を検討すると、一つ(意図的か、無意識的かはわかりませんが)悪質なミスリードを行っている疑義が存在するんですね。

 先の主張は、安倍首相は、フリードマンの否定した金融政策と財政政策を行うことで、デフレ不況からの脱却を目指した!!だから、安倍首相は新自由主義のミルトン・フリードマンとは真逆だ!!だから、安倍首相は新自由主義者ではない!!という主張なのですが、しかし、少し考えればわかるように、安倍批判を行っている人たちのうち、いわゆるアベノミクスの第一の矢、第二の矢である財政政策と金融政策によるデフレ脱却政策を指して「安倍は新自由主義者だ!!」と批判しているわけではないんですね。

 そうではなく実際には、第三の矢である成長戦略(構造改革)を指して、「安倍首相は新自由主義者だ!!」と批判しているわけです。この第三の矢である成長戦略、これは実際には小泉政権時の構造改革の言い換えに過ぎないのですが、この成長戦略は、それ単体でも十分すぎるほどに有害なのですが、さらに厄介な問題として、このアベノミクス第三の矢の存在は、第一の矢、第二の矢の性質とは、相反するものなのです。

→ 次ページ:「第三の矢は、日本人の頑張りを、日本人が受け取れないようにする政策だ!」を読む

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西部邁

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