崩壊が始まった「STAP細胞」の神話と幻想 - 岸輝雄と野依良治の権力闘争

小保方晴子をめぐる事件が急展開している。今日(6/4)の朝、PCを立ち上げたら、小保方晴子がNature誌に投稿した主要論文の撤回に同意したという一報があった。Nature誌に採択・掲載されたSTAP論文はArticleとLetterの2本あり、このうちLetter論文の方は、5/28にすでに取り下げに同意していた。このときの小保方晴子の言い分は、Letterの責任著者は自分ではなく若山照彦で、実験も全て若山照彦によるものであり、自分は責任著者ではないから撤回しても構わないのだという説明だった。三木秀夫を通じて、「もう1本の論文は撤回する意向はない」とあらためて述べ、「STAP細胞の存在を明らかにした主論文が大切で、(Letterは)発展型にすぎない」と言っている。今回、主要論文(Article)の撤回に同意して署名したことは、1週間前の発言を翻すものだ。ここで、4/9の小保方晴子の記者会見の場面を思い出さなくてはいけないが、論文を撤回する意思はないのかとの質問にこう答えている。「論文の撤回は、その結論が完全に間違いであったと著者が国際的に発表することになる。結論が正しい以上、撤回は正しい行為ではない」。こう強気で言い返して、頑固に撤回を拒んでいた。2ヶ月前のことだ。小保方晴子の言葉に即せば、、自らArticleを撤回したということは、「STAP細胞の存在を明らかにした」という結論が「完全に間違いであった」と「国際的に発表」したことに他ならない。

小保方晴子が主要論文の撤回に応じた裏には、前日(6/3)にNHKで報道された、実験マウスの細胞に関する重大疑惑の件が関係していることは間違いない。昨夜(6/3)、NHKの7時のニュースを見ていたら、冒頭から二つ目の話題として、すなわち、栃木の女児殺害事件の報道の次に、大きく時間を割いて詳しく紹介していた。「STAP細胞」の問題をめぐるNHKの報道には安定感と信頼性がある。そして、重要なスクープ報道を発信する。科学部の記者の藤原淳登がよく頑張っている。今回も衝撃の情報で驚かされた。横浜にある理化学研究所統合生命医科学研究センターの上級研究員である遠藤高帆が、小保方晴子らが実験で「STAP細胞」を培養して出来たとして公開した細胞の遺伝子データを調べたところ、実験に使ってないはずのマウスの細胞だった事実が判明したという。実験マウスの種類は「F1」のはずなのに、「B6」と「CD1」の種類であったことが明らかになった。これは、3/25にNHKが報道したところの、若山照彦が告発したマウスのすり替え疑惑と関連し、その信憑性を裏付ける決定的な情報だ。3/25の報道では、若山照彦が「129系統」のマウスを小保方晴子に渡したところ、小保方晴子が作製に成功したとして返してきた「STAP細胞」は、それとは異なる「B6」と「F1」の種類のマウスの細胞だったという説明だった。3/25の報道と6/3の報道では、マウスのすり替えの中味が違う。今の時点では、この異同について正確な内実は分からない。

しかし、小保方晴子が実験マウスのすり替えをやっていた事実は、ほぼ決定的になったと言っていいだろう。3/25の報道で暴露されたすり替えは、若山照彦からのリーク情報である。6/3の報道で明らかにされたすり替えは、理研(横浜)の遠藤高帆が告発したものだ。2chの書き込みにあるように、この遠藤高帆こそ、3月初旬からslashdot上に「STAP細胞の非実在について」の記事を連載、早くから問題提起を続けて注目されてきた「kaho」なる人物である。まさに、この事件で高く評価されるところの、いわゆる「ネットの集合知」に参加し寄与した中心人物の一人だ。「kaho」なる匿名の人物が理研内部の研究者であることは、早くから2chで噂になっていたが、堂々の上級研究員だった。3/25の若山照彦のリークは、小保方晴子から手渡された「STAP細胞」の2株を自身で簡易分析した結果、マウスすり替えが判明したもので、6/3の遠藤高帆の告発は、Nature論文の付属情報としてインターネットのデータベースに登録されている「STAP培養細胞」のデータを分析して、マウスすり換えの証拠を発見したものだ。二つのすり替えの発見は、現時点の情報では、別々のものであると考えられる。が、昨日(6/3)のNHKの報道では、遠藤高帆の告発について、他の国内の複数の研究チームが共同でサポートしている事実も指摘されていて、この連携の輪がどこかで若山照彦とも繋がっていることが推測される。

というのは、最初に若山照彦が「STAP細胞」への疑義を表明したとき、若山照彦は、手元に持つ「STAP幹細胞」を第三者機関に提供して分析を依頼しているからである。遠藤高帆の告発を報じたNHKの説明では、小保方晴子が「作製」した「STAP細胞」を培養液に浸してできた「細胞」(「STAP培養細胞」)の遺伝子データは、「B6」系統マウスに由来するES細胞と、「CD1」系統マウスに由来するTS細胞と、その二つが混在したものだった。まさに、小保方晴子の「STAP細胞」のカラクリの手口が中味まで透視され、その正体が科学的に暴露された瞬間と言える。これらの疑義と推理は、2ch等でずっと囁かれ、「集合知」の仮説として議論されてきたものだが、今回、科学の検証手続きで小保方晴子のウソが暴かれた意義は大きい。捏造が証明された。「STAP細胞」は実はES細胞のスリカエだったのではないかという疑義に対して、擁護派がずっと反論してきた根拠は、ES細胞は胎盤に分化できないという一点である。しかし、胎盤への分化がTS細胞によるものだったとすると、この反論は否定され一蹴される。NHKのニュースでは、東大の菅野純夫を映像解説で登場させ、「STAP細胞」はES細胞とTS細胞を混在させたものであると結論づけ、揺るぎない真相として断定させていた。私は、5/10に「6月に崩壊する『STAP細胞』共同幻想」と題した予測記事を書いたが、6月に入ってまだ4日の時点で、音を立てて「崩壊」が始まった感を否めない。

昨日(6/3)は、毎日の須田桃子も記事を書いている。若山照彦が第三者機関に調査依頼していた「STAP幹細胞」の結果が出ていて、やはり別のマウスだったと報じた。大きなニュースだ。若山照彦が言っていた「第三者機関」の調査結果が、初めてマスコミに出た。3月の情報では、分析結果が出るのは3ヶ月後ということだったが、今、その時点にさしかかっている。若山照彦は、「今は話せないが、詳しい解析結果は近く、記者会見をして公表する」と語っていて、若山照彦の会見が近い。会場は騒然とするだろう。毎日の記事とNHKのニュースは連関している。二つともマウスすり替えの事実を科学的検証の結果として伝えたものであり、そして理研に対して、ラボの冷凍庫に保存されているマウスの細胞を遺伝子解析し、単に局所的な論文不正だけでなく、実験全体を再調査せよと求めている。これは、小保方晴子を論文不正で切り捨てつつ、「STAP細胞」を「STAP現象」と言い換えて姑息に生き残らせ、笹井芳樹と丹羽仁史に累が及ばぬよう防衛している理研に対して、鉄槌の一撃を加えた批判と言える。このNHKの報道の後、2chでは丹羽仁史に対する疑惑と非難が轟然と高まった。ES細胞とTS細胞を混在させた手口を考えたとき、当然、そこには丹羽仁史の関与が疑われることになる。私は、4/7に丹羽仁史が会見した後、世論(2ch)が急に納得し、丹羽仁史をシロ認定して批判を止めたのが不思議で仕方なかったが、ようやく元に戻った感がして安堵している。

前に書いたが、丹羽仁史も笹井芳樹もこの事件の関与者なのであり、オーディットの対象なのだ。こういう場合、オーディットの対象者は、まず組織によって現場から隔離されなくてはならず、隔離されて査問を受けなくてはならない。査問者に潔白を証明しないといけない。それなのに、理研は二人に堂々と理研の人間の立場で会見をさせ、専門知識を並べて記者を煙に巻く演説をさせ、丹羽仁史には「STAP細胞」の検証実験の責任者をやらせるという身分保障を与えていた。NHKのニュースと毎日の記事は、改革委の岸輝雄の動きと連動している。岸輝雄は、6/2に、理研で行われている「STAP細胞」の検証実験に小保方晴子を参加させろと要求、その意向をマスコミに捲き、理研が進めている小保方晴子懲戒処分のシナリオに待ったをかけた。岸輝雄は、野依良治による事件の解決の仕方に猛反対で、前回(5/9)、「再調査せず」の決定を下したときも、調査は未だ不十分で懲戒委へ持ち込むのは拙速だと文句をつけ、調査をやり直ししろと理研を批判していた。岸輝雄と野依良治の間で熾烈な権力闘争をやっている。2chの議論はその点の認識が弱い。2chの面々は、岸輝雄を正義の味方のようにナイーブに信じ込んでいるが、それは少し怪しい。私の見方は少し懐疑的で、岸輝雄が、野依長治を追い落として理研の理事長に収まろうとしているように見えてならない。岸輝雄の主張は、基本的に正論なのだが、理研叩きの裏側に小保方擁護の真意があるのではないか。そう疑うのは私だけだろうか。

岸輝雄の一貫した主張は、この事件は理研にも責任があるという論法で、小保方晴子だけの「トカゲの尻尾切り」はやめろというものだ。理研の調査に対して、もっと本格的にやり直せと言い、笹井芳樹の責任も見逃すなという意味のことをずっと言い続けてきた。その主張の先に、野依良治に対する責任追及の意図があるのは丸見えで、それはまた世論の支持を受けるものでもある。そして、この岸改革委による反野依の動きと毎日の須田桃子の記事が連動している。両者が手を握っているように窺われる。果たして、岸輝雄は本当に小保方晴子を断罪する意思があるのか。もし、それがなく、単に野依体制を潰すことだけが岸輝男の狙いで、理研叩きの正論は政治の道具であったとすれば、われわれは岸輝男に裏切られることになる。もし、小保方晴子を理研の検証実験に入れ、職員としての地位を保全してやれば、6月の懲戒処分は消えてなくなる。先送りになる。7月も、8月も、小保方晴子は理研のラボで堂々と「実験」をやり、また新しい捏造の手口を開発するか、言い訳と「真犯人」のアイディアを思いつき、誰かの責任に押しつけ、マスコミの前で泣き、世間の同情論を集める戦略に出るだろう。これほど「STAP細胞」の嘘が明白になったのに、懲戒処分を遅らせていいのか。正論は確かに岸輝雄の側にあり、野依良治の姿勢は不当な「トカゲの尻尾切り」に違いない。だが、岸輝雄の提案を支持するうちに、いつの間にか全て理研の組織の所為にされ、小保方晴子の不正が免責されてしまうのではないかという心配が漂う。

私の疑念は、岸輝雄が、裏で下村博文や安倍晋三と繋がっているのではないかというものだ。安倍晋三と下村博文は、例の「成長戦略」の「女性重視」策の動機や、個人的な趣味で、小保方晴子を救済しようとしている可能性が高い。再調査は必要だし、「STAP細胞」実験そのものを検証する本格調査も必要だが、小保方晴子への懲戒処分を先送りしてはいけない。小保方晴子による「STAP細胞」の再現実験は、理研ではなく、理研以外のラボで行わせるべきだ。



by yoniumuhibi | 2014-06-04 23:30 | Trackback | Comments(7)
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Commented by 荻原 理 at 2014-06-04 18:20 x
ヤン・ヘンドリック・シェーンの、論文捏造の話が偶然か今夜放送の「ザ!世界仰天ニュ一ス」で放送されます。この時期に何故・・・。
Commented by 柿右衛門 at 2014-06-04 21:09 x
次は、理研の小保方氏に対する処分内容や、早稲田大学が博士号を剥奪するか否かに焦点が当てられるだろうが、もうひとつ。

ヒステリックなまでに頑強だった小保方擁護派たちが、どのように身を処すかが見もの。自己保身のために自己の言説を翻すか、知らんぷりを決め込むか。

これによって、上質な人間か、下卑た人間かがわかるリトマス試験紙のような機会なので、じっくり人間ウォッチングをさせてもらおうと思う。
潔く非を認めれば、人間としての評価は下がらないのであるが、似たもの同士という言葉どおり、本人以上に往生際が悪い態度を取るような気がする。少なくとも、山中教授を罵倒したT氏は謝罪するべき。
Commented by るまんど at 2014-06-04 23:41 x
私も同感です。
小保方の懲戒解雇は遅らせてはならない。
姑息な小保方なら弁護士と共謀しずるずると居座るだろう。
どうも小保方は「理研に残りたい」ただそれだけに執着しているように思えてならない。
STAPの有無も小保方にとってはどうでもよいのではないだろうか?
理研に残るための駆け引き材料にSTAPの有無を使っているように見える。
理研でのリーダーという地位と収入さえ確保できれば、それでいいのだろう。

だが、小保方は重要でありかつ常識人であれば誰でも分かる事を理解していないようだ。
理研の研究者達はもう迎え入れてくれない事を、、、
Commented by ホログラム at 2014-06-05 01:38 x
このSTAP問題は小保方の不正行為であると同時に理研にとっても掘り下げられたくない恥部であって、地位保全という点では両者は対立しているものの、細かい調査はされたくないという点では両者の利害が一致してるのですが、小保方が理研に対する斜め上の反撃に出たことでそこを見落とす人が少なくありません。

また小保方を検証に参加させるのは非常に危険で、捏造・不正の常習犯かつその行為に対する罪悪感を持ち合わせていないため結果を取り繕うために再び捏造を行う可能性が高く、24時間つねに監視の目を光らせておくぐらいでないと不正が防げない可能性があります。逆に参加させたうえで不正を完全にシャットアウトすることに成功すれば、インチキであるSTAPなど再現はされようもないので小保方に傾くワイドショー世論を一掃する効果も得られるかもしれませんが、無類の泣き落とし技術を持つ小保方ですから、それを駆使して同情だけは引き続けそうで頭が痛くなります。
Commented at 2014-06-05 01:53 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 猫公爵 at 2014-06-05 15:02 x
わざと検証実験に参加させて、見事に失敗させて、その後で確信犯的詐欺を組織の名の下に行ったとして小保方を懲戒解雇し、丹羽・笹井らインチキ一派も一蓮托生で葬り去ろうとしているというのは買いかぶりすぎですかね? だとしても、ただの権力闘争ではなくて、そうあってもらいたいものです。
Commented by 柿右衛門 at 2014-06-05 15:06 x
往生際が悪いと言えば・・・↓は正気だろうか

下村文部科学大臣は国会内で記者団に対し、「研究の不正が指摘され理化学研究所も事実だという確証を得られないなかで、論文の取り下げは適切な判断だと思う。今後は小保方さんが先頭に立って理化学研究所の中で再検証をし、再実証することで、1日も早くSTAP細胞があるということをみずから証明することを期待したい」と述べました。

また山中教授を罵倒したY氏にいたっては、この期に及んでも、小保方バッシング派に対して大批判を展開。その根拠は何回読んでも意味不明。柄谷行人やら小林秀雄やら、もっともらしく出しているが、これを読んで理解できる人は日本に何人いるか。ヒマな人は読んでほしい。もはや団塊の世代の居直り感覚にはうんざり。老害の一種

最近100万人に一人の確率で発症する難病の人と話す機会があった。ありとあらゆる病院、医師を渡り歩いたが、手術も薬剤もなんら治療法がない状態のなか、やはりiPS細胞だけが、唯一残された希望である。小保方氏は、科学を冒涜したのみならず、このような絶望と闘っている人々の心情をも冒涜したのである。
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