藤田さつき
2014年6月5日16時43分
南極海での調査捕鯨中止を日本に命じた国際司法裁判所(ICJ)判決から2カ月――。ネット通販大手の楽天が鯨肉の販売を禁じたり、仕入れをやめる飲食店が出始めたりするなど、判決の影響が広がっている。販売業者からは将来への不安やあきらめの声が漏れる。
「楽天はオンラインで鯨肉を取引する世界最大の会社だ」。今年3月18日、楽天を名指しし、こう指摘するリポートがインターネット上に公表された。
リポートを出したのは、米英に拠点を置く国際環境NGO「Environmental Investigation Agency」。リポートは、楽天が絶滅の恐れがあるクジラや、和歌山県太地(たいじ)町が舞台の映画「ザ・コーブ」に登場する、追い込み漁のイルカの肉を扱っていると主張。同社が運営する通販サイト「楽天市場」で「鯨肉」を検索すると773商品がヒットしたとし、楽天側に鯨肉販売の中止を求めるツイートやメールを送るよう呼びかけた。
その約2週間後の3月31日、ICJが日本に調査捕鯨中止を命じた。農林水産省は今年度の南極海の調査捕鯨を取りやめ、北西太平洋でも捕獲数を減らすことを決めた。来年度以降は、改めて計画を検討するとしている。
楽天は事前に鯨肉関連商品を販売するページへの海外からのアクセスを制限していたが、判決翌日の4月1日には出店業者に「全ての鯨・イルカの部位を用いた製品を禁止商材とし、今後1カ月以内に該当商品を削除いただくことを本日決定いたしました」とするメールを一斉に送信。南極海だけでなく、北西太平洋の調査捕鯨や沿岸捕鯨の鯨・イルカ肉もすべて「不適切」を理由に取り扱いを禁じた。2012年2月ごろにはネット通販大手アマゾンジャパンも取り扱いを中止していた。
「まるで悪いものを売っているみたいじゃないか」。明治以降、長崎で鯨肉卸を営む「日野商店」の通販担当者は「禁止商材」という言葉にショックを受けた。楽天市場を通じた同社の売り上げは年間数千万円で、「中止の影響は大きい」と嘆く。
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朝日新聞社会部
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