佐藤日銀委員:供給制約で経済伸び悩むか岐路に-潜在成長率の低下で
6月5日(ブルームバーグ):日本銀行の佐藤健裕審議委員は5日午前、大分市内で講演し日本経済の実力である「潜在成長率が低下した可能性がある」とした上で、現在は供給面の制約から先行き経済が伸び悩むか、あるいは制約をてこに一段の生産性向上を成し遂げ、新たな成長ステージに向かうか、「岐路にあるように思われる」と述べた。
佐藤委員は足元の物価上昇について「円安・エネルギー価格上昇とともに、相対的に生産性の低い非製造業中心の回復で経済が主に雇用面から意外に早く供給力の天井にぶつかりつつあることも影響しているように思われる」と指摘。
需要と供給の差である需給ギャップの縮小も「足元の物価に幾分影響を及ぼしているとみられる」としながらも、「これには需要面の持ち直しに加え、供給面の制約も影響しているとみられ、経済・ 物価の回復メカニズムとして日銀が本来目指している姿とは異なり得る点には注意を要する」と語った。
佐藤委員はこのように述べた上で、日銀の「物価安定の目標」が目指しているのは「物価だけが上昇するのではなく、全般的な経済情勢の改善とともに賃金が上昇し、それとバランスよく物価が上昇する世界である」と指摘。「日銀が単に物価上昇だけを追求していくといった誤解は避けなければならない」と述べた。
2%目標は上下に許容範囲金融政策運営については、「日銀は『2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、量的・質的金融緩和を継続する』とのコミットメントを明示しているが、『安定的に持続するために必要な時点』の部分は私の理解では、見通しベースで判断するということだ」と指摘。
物価安定の目標は「もとより2%をピンポイントで目指す硬直的な枠組みではなく、上下双方向にアローワンスを持つ柔軟な枠組みであると私は理解しており、そうした理解のもと、その達成のハードルを柔軟に考えている」と語った。
判断の基準となる物価指標についても、「物価安定の目標の達成度合いがあたかも生鮮食品を除く消費者物価のみで判定されるかのような誤解も見受けられる」とした上で、物価安定の目標の定義は「消費者物価(総合)であってコアではない」と指摘。
物価の基調を判断するに当たっては「総合やコア、あるいはコアコアのみならず、総合除く帰属家賃といった生計費に近い概念を示す指標、ひいては賃金を含む幅広い指標を丹念にみていく必要があり、特定の指数に政策がひも付きになっているわけではない」と述べた。
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更新日時: 2014/06/05 12:01 JST