メディアで見かける主夫は「能動的」だ。料理のレパートリーを増やし、子どもの健康を考え、計画的に家事を進める。我が夫は「ゆる夫(おっと)」と名付けているほど、マイペースで事なかれ主義。基本的に、言われたことしかしない。必要なルーティーン以外は、気づきもしない。
疲れて帰った時の、私の沸点は低い。学校でケンカをする子ども達に、「腹が立つ時は6秒数えて心を落ち着けよう」なんて言っている「校長先生のお話」も自分には効果ナシ。あれこれ気に入らないところを見つけてギャーギャー言う私に、ゆる夫は慣れっこだ。
「帰ってすぐ吠えるなー」
ヨメの怒りの嵐をしゃがんでやり過ごす技を身につけているから、根本的に治らない。つ、疲れた。10年以上、同じことで怒っている。
子どもも私も準備ができて、いざ出発というタイミングに顔を泡だらけにしてヒゲを剃り出す。「ええっ!今!?」と驚くのも、「もっと時間あったやん!なんで早めに剃っておかへんの?」と私がキレルのも、お約束になっている。まるで、こっちの反応を楽しんでいるのかと思うほどに。
その気長さは、おそらく私より乳幼児の育児向きだ。今までは、そうだった。親の思うスケジュールを子どもにぶち壊されると、短い夜や休日を効率的に使いたいと思う私は心折れそうになる。しかし、夫はのんびりと構えている。女性だから育児向きなんてことはない。性別ではなく、個人の適性の問題だろう。
下の子は「ゆる育児」でいいとして、問題は小学生だ。新1年生は、家庭での時間の使い方が大事になってくる。帰ったらすぐに明日の用意と宿題、食事、お風呂、寝る準備。遅くても、21時半には寝かせたい。「早寝・早起き・朝ごはん」に非協力的な家庭に頭を抱え、あの手この手で訴え続けている立場としては、「敵は身内にあり」か……とため息をつきたくもなるのだ。
自分が早く帰ること、夫に時間管理を覚えてもらうこと、娘が時計を見て動けるようになること。
……これが山口家の新たなミッションだ。
今回は、働く母親として、あえて本音を書かせてもらった。当のゆる夫はネタにされていることを、「また俺のこと書いてるやろ」と、喜んでいる気配まであるので、太刀打ちできない。彼の支えと大らかさがあってこそ、校長の職務を果たせている点は重々承知している。学校で落ち着いて保護者の悩みに答える「仕事スイッチ」が、入りっぱなしならいいのだが、散らばるプリント類と洗濯物に出迎えられると、そう単純にはいかない。
「新1年生を抱えた母親校長」も、このレベルで悩んでいるので、全国のお父さん・お母さんは安心してほしい。小学生の親1年生、一緒にがんばりましょう!
山口照美(やまぐちてるみ)
同志社大学卒業後、大手進学塾に就職。3年間の校長経験を経て起業、広報代行やセミナー講師、教育関係を中心に執筆を続ける。大阪市の任期付校長公募に合格、2013年4月より大阪市立敷津小学校の校長に着任。著書に『企画のネタ帳』(阪急コミュニケーションズ)『売れる!コピー力養成講座』(筑摩書房)など。ブログ「民間人校長@教育最前線レポート」(http://edurepo.blog.fc2.com/)も執筆中
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ゆる夫、公募校長、山口照美
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