アルツハイマー病の原因物質が作られるのを防ぐタンパク質「ILEI」を滋賀医科大と東京都健康長寿医療センターのチームが特定し、4日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ電子版に発表した。副作用がない予防法の開発が期待できるという。
アルツハイマー病は、脳内に「アミロイドベータ」(Aβ)という物質が蓄積して発症するとされる。これまでAβ生成に関わる酵素を阻害する治療薬も開発されてきた。しかし酵素は体の他の場所でも重要な働きをするため、阻害すると皮膚がんなどの副作用が起きる可能性があり、実用化されていない。
チームによると、ILEIは脳内にあり、Aβのもとになる物質に働き掛け、別の無害な物質に分解する性質を持つ。酵素の邪魔をしないため、副作用もないという。
アルツハイマー病のマウスで、ILEIが多く作られるようにすると、何もしていないマウスと比較してAβ量が半減した。マウスを迷路で走らせて記憶障害の程度を調べる実験でも、ILEIが多いと記憶障害が起きにくかった。
チームの西村正樹准教授(神経科学)は「脳内のILEIの量を増やせば、発症を抑えられる。安全な予防薬の開発につなげたい」としている。〔共同〕
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