官民一体型学校:花まる学習会導入で説明会 佐賀・武雄

毎日新聞 2014年06月05日 07時45分

 佐賀県武雄市が来春から市立小学校に学習塾の指導法を組み込んで開設する「官民一体型学校」の説明会が4日、モデル校の同市立武内小であった。教師1人が児童数十人を相手に一方的に教える一斉授業の弊害を避け思考力を培う狙いだが、保護者からは期待とともに「児童や教師は新たな授業法になじめるか」との不安も聞かれた。

 説明会には保護者ら約150人が出席。提携先の「花まる学習会」(さいたま市)の高濱正伸代表(55)が「この国は働けない大人を量産している。今の子供は考える力と人間関係づくりが弱い」などと学校教育の問題点を指摘し、独自の授業方法「モジュール授業」の有効性を訴えた。

 モジュール授業は低学年では児童5、6人に講師が1人つき、四字熟語や文章朗読、作文などを実施。1回90分の授業を数分〜20分で区切り、約10のプログラムを行う。達成感を味わいつつ想像力や思考力を培うという。

 質疑応答で、市内の医師、西川武彦さん(37)が「先生への負担は増えるのでは」と質問。樋渡啓祐(ひわたしけいすけ)市長は「事務的な負担を減らし子供と向き合う時間を増やしたい」と答えた。また、別の質問に対し高濱代表は「(一部授業で)導入している長野県の小学校は活気が出ている」と強調した。説明会後、西川さんは「今日の説明では何もわからない。授業方法は先生に任せればいいのでは」と語った。

 息子2人が同小に通う中川内由樹さん(35)は「佐賀市で花まる方式を導入している塾があり興味がある。新しい取り組みは子供たちにとっていいことだ」。また、同小に通う子供はいないが、来場した元高校教諭の男性(60)は「花まる塾が何か市民も知らないまま導入が決まった。市長のパフォーマンスだ。教師の数を増やすことが先」と批判した。

 一方、教員側には不安も。佐賀県教職員組合の田中啓善書記長は「教育課程に踏み込めば公教育がゆがめられる。武雄市の教員が他の自治体に転勤した時、転勤先で指導力が通用するのか環境になじめるか」と指摘する。

 高濱代表は27日にも武雄入りし教員らに対し授業の概要や狙いを説明する。武内小では8月に公開授業をし10月ごろ本格的な授業を始める予定という。【石井尚、関東晋慈】

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