Yoichiro.T ITアーキテクト 開発言語:Java エンジニア歴:16年

SIerからSNSへ。オープンソースへの興味をきっかけに、SNS業界へたどり着いた。

LINEへ入社する前のキャリアについて教えてください。

新卒でSIerに入って、業務アプリをつくっていました。その当時から、オープンな技術に興味があって、趣味で技術的なコミュニティに参加したりしていました。第3回のMashup Awards(日本最大級のWebアプリケーション開発コンテスト)で受賞したことをきっかけに、Google API Expert(現Google Developers Expert)のOpenSocial担当公認エキスパートになったんです。そこから、どんどんソーシャルアプリに興味をもちはじめて、本を出したり、いろんな活動をしていました。そして、気がついたらSNS業界にいたという感じです。

エンジニアの中でも、どんなタイプの人がSNS業界に興味をもつのだと思いますか。

プロジェクトを回すことより、技術に興味があるタイプなのかもしれません。そっちに興味をもちはじめると、オープンな技術の勉強になっていくのですが、最近はネット企業で培われた技術がSIにも流れてくる、という感じなので、自然と大規模システムやWebサービスでスケールするには…、といった話題に触れていくことになります。そして、そういう企業に注目したり、勉強会に参加していると、同じようなことに興味をもつ人と話をする機会が増え、結果として「一緒にやらないか」と誘われるようになっていくと思います。

LINEへの入社の決め手は何だったのでしょうか。

LINEに入社してちょうど1年が経ちました。生活に密着したサービスを手がけたいと思ったのが入社のきっかけです。前職もSNS業界だったのですが、ここ数年、SNSのプラットフォームといえばソーシャルゲームが主流でした。でも、SNSはゲーム以外にも、もっといろんなサービスとつながることができると、ずっと思っていたんです。今、やっとそれができる場所に来ることができたと感じています。

LINEは将来的にどんなサービスを提供できるのですか。

2014年2月26日に、カンファレンスイベント「LINE Showcase 2014 Feb.」を開催したのですが、そこで「LINEビジネスコネクト」が発表されました。これは、公式アカウントの各種機能を企業向けにAPIで提供し、各企業がカスタマイズして活用できるサービスです。この機能を応用すると、ピザのスタンプを送信するだけで宅配ピザの注文ができたり、レンタルしていた商品の返却日前日にLINEで通知を送ったり、LINEから位置情報を送信してタクシーを手配するなど、世の中のありとあらゆるサービスがLINEを通して提供されるようになります。

ビジネスコネクトによって、世の中はどう変わると思いますか。

今、Webでピザを注文したり、タクシーを手配しようとすると、その企業が提供している公式ページにアクセスしたり、公式アプリをダウンロードしないといけないじゃないですか。それが全部、LINEからできるようになる。いちいち公式ページやアプリを探したり、現在地を入力する煩わしさもないし、普段、友達とメッセージやスタンプをやりとりする延長線上で様々なサービスを使うことができるようになります。ユーザーにとって簡単で便利になるし、各企業も自社で一からアプリをつくってダウンロードしてもらうという参入障壁がなくなります。それによって、また新しい種類のコミュニケーションが生まれるんじゃないでしょうか。

常にその時代で一番おもしろい場所にいたい。LINEは今まさにそういう場所だと思う。

現在の担当領域や、手がけている案件について教えてください。

私は、Gameなどのアプリや他社のサービス等と連携するために、LINEプラットフォームをどんな技術で作るべきかを考えています。そして今は主に、ビジネスコネクトのアーキテクチャを担当しています。つい最近では、各企業のエンジニアに自社の顧客データとLINEユーザーのアカウント情報を紐付けるためのシステムをつくってもらうのですが、そのために必要なドキュメントも整理しました。今、営業担当者がそれをもって、様々な企業を回っているところです。

ビジネスコネクトの構想はいつからスタートしたのでしょうか。

私が入社した1年前には、すでにビジネスコネクトの構想がありました。2年前に「プラットフォーム戦略」を打ち出し、メッセンジャーツールからプラットフォームへと進化したLINEは、外部のコンテンツ事業者と連携し、ゲームや占い、クーポンなどのアプリを提供してきました。そして今回、更にいろんな企業と連携するためにAPIを公開し、外部の企業が開発したアプリをLINEから提供できるようにしました。私が入社したタイミングでは、まだ外部パートナーのアプリと連携するために必要なAPIやドキュメントが整理されていませんでした。そういったものの整備を、入社から今までやってきたことになります。

プラットフォームの担当として、大切なことを教えてください。

やはり、様々なアプリと安全に連携することが何よりも大切だと思っています。今までの時代のWebは、大勢がブラウザを通してあるページを見に来て、パーソナライズされたHTMLを動的に返すという仕組みがほとんどでした。でも、メッセージングはもっと細かい情報をいろんな端末に届けなければいけないわけです。なるべく早く、ロストしないように。今後、各企業との連携が増えれば、トラフィックの量も増加します。実は、ユーザーにとってシンプルな仕組みほど、その裏にある技術は非常に高度なものが求められます。

では、自身が働く上で大切にしていることは何ですか。

SIer時代も含めて、いつも一番おもしろいことをやっているところに身を置きたいと思い続けてきました。そういった環境にいると得るものが多いし、最新のものに触れることができるから。業務をこなすだけでなく、興味のある技術は自分で勉強して、実際に手を動かしてつくってみたりして、知識を吸収するようにしています。その結果、いろんな企業や人から誘われるようになったというのが、ここ数年の転職の理由でした。業界によっては、年齢が上がると自動的に管理職になる企業もあります。でも、私は常に新しい技術に触れたり、チャレンジできる場所にいたいんです。

新しい技術にチャレンジするために、どんな工夫をしていますか。

実は通勤で往復で約100分電車に乗っています。この時間をぼーっと過ごしているのは、本当にもったいないことです。そこで、毎日グリーン車に乗って、勉強や情報収集をしています。もちろんグリーン車代がかかるので、それなりに出費があって家計的にどうなんだというのはあるのですが、でも、何かおもしろいことをしたり、情報発信していると、雑誌の編集者から記事の依頼をいただいたりするので、そこできっとPayするかなと(笑)。こうして、毎日少しでもトレンドを追いかけることを大切にしています。もし、新しいソリューションが発表されて、その仕組みが分からないようになったら隠居かな(笑)。

会議ではなく、立ち話で解決。スピード感をもって新しい技術を開発していきましょう。

快進撃を続けているLINEですが、今後大切にすべきことは何だと思いますか。

ビジネスコネクトがはじまり、いろんなサービスをLINEから展開していくわけですが、LINE本来の機能をおろそかにしてはいけないと思っています。今、ゲームのユーザー数がものすごい勢いで拡大していますが、みんなゲームだけをやって、友達と話さなくなったわけではないと思うんです。LINEはその部分をずっと大切にしてきました。だからこそ、いろんな方面に展開しても、ユーザーがついてきてくれるんじゃないかと思っています。

LINEでは、エンジニアの意見は通りやすいのでしょうか。

毎日のように社内のいろんな人から「こんなAPIない?」といった相談を受けます。LINEの機能全体を把握していて、すぐに返事ができるのは、プラットフォームのエンジニアだけだからだと思います。例えば、ゲームの企画担当者から「もっとたくさんゲームのフィードを流したい」といった相談を受けた時、チームのメンバーと話し合って、プラットフォームエンジニアの視点から「それはLINEらしくないんじゃないか」と伝えたことがあります。LINEは非常にフラットな社風なので、職種や役職を気にするような感覚はないですね。エンジニアから「もっとこうした方が良いのでは?」と提案するのは、ごく普通のことです。性格的にも、ディスカッションをすることが嫌いではないので、いつも社内のいろんな人と話をしていますね。「たまには開発しなさい」って言われるほど(笑)。

普段、どんな風に話し合っているのでしょうか。

会議室でのミーティングは、本当に少ないです。チームメンバーをその場でつかまえて、「こんな相談を受けたんだけど…」って立ち話で解決したり。そうじゃないと、遅くてじれったくなってしまいます。あと、社内でもLINEで会話することが多いです。みんな、もくもくと作業をしているように見えるけど、もしメッセージを音声にしたら、ものすごくガヤガヤしてるんじゃないかな。これがスピード感の出ている要因のひとつだと思います。

エンジニアにとってLINEプラットフォームを担当する魅力は何でしょうか。

やはり、世界規模のトラフィックに向き合って、技術を向上させていくことだと思います。どこまでサービスのレベルを担保するのか。そのためにかなりのコストをかけているし、議論もしています。おそらく、答えはないんですよね。常に最適化していくしかない。ビジネスコネクトがはじまって、さらにハードルは高くなっています。そんな環境で技術を向上させることは、エンジニアにとっておもしろいことだと思います。まあ、辛くもあるんですけど(笑)。

最後に、これから入社する方へのメッセージをお願いします。

議論をしながらなにかをつくって行ける人と一緒に働きたいですね。もちろんスキルは必要ですが、技術だけとんがっていてもダメだと思うんです。誰かに相談されて、すぐに「無理」って言ってしまうのもダメ。選択肢を提示して、メリットとデメリットを出すことができないと。LINEには、ここ数年は仕事に困らないくらいのタスクがあるので、どんどん効率よくつくっていかなくちゃならない。そんな環境をたのしめる人と一緒にやりたいですね。現状に満足せず、常に危機感をもって進んでいきましょう。