皆さんは削らない虫歯治療というのをご存知でしょうか?一時期テレビなどでも放送され,話題になっていました。その中に3Mix‐MP法というものがあり,近くの歯医者がその方法を行うことができるということなので行ってみました。
まず3Mix-MP法ですが,共同通信によって以下のように報道されています。従来の治療法に比べて以下のような利点があるとのこと。
▽抗菌剤を置くだけ
宅重氏によると、これは感染した象牙質を削り取る従来の方法では周囲の象牙細管の奥にまで入り込んだ菌をすべて取り除くことができないため。菌を残さないよう多めに削り取ったり、削った後に消毒したりするが、それでも完全に無菌化することは難しいという。
これに対し、3Mix-MP法は病巣を取り除かずに殺菌して自然修復を促すのが特徴。軟化象牙質や感染した歯髄もできるだけ削ったり抜いたりしないで残す。代わりにメトロニダゾール、ミノサイクリン、シプロフロキサシンという3種類の抗菌剤を調合して虫歯の穴に置き、そのまま穴をふさぐ。
こうするだけで抗菌剤が歯の隅々に浸透して歯髄を含む歯全体を無菌化。ほとんどの場合、1回の治療で虫歯の痛みはなくなり進行も止まる。大きく削ったり歯髄を抜いたりすることによるトラブルがない上、削らずに残した軟化象牙質もカルシウムが沈着するなどして再び硬くなるという。
しかしこのような効果に対して3Mix法の開発者である岩田正明氏は以下のようなことをホームページ上で書いており,すべての歯科治療に応用できるものではないとしています。
3MIX法の理解が必要です
「3Mix-MP法は病巣を取り除かずに殺菌して自然修復を促すのが特徴」については、たとえこの方法でも、高度に破壊された組織は再生しませんので取り除かなければなりません。3MIXは、いづれもう蝕の治療薬として厚生労働省薬事課の認可が得られていません。そのために、歯科医師がう蝕治療に用いる場合は、その安全性、効果などを患者さんによく説明し、十分なインフォームドコンセントにより、患者さんからの使用のOKを得て始めて使うことができます。また、3種の薬の中には、あるいはその患者さんに何らかの副作用がある物もあるかもしれませんので、患者さんの状態をよくきいて安全を確かめてから使うことが必須です。3MIX法は、すでに開発後30年以上にわたって、全国で多くの歯科医に試みられているもので、その中で最も効果的な薬剤は、合成化学療法剤のメトロノダゾールです。う蝕患部細菌の大部分が偏性嫌気性菌であること、メトロニダゾールがそれらの殺菌に極めて効果的であることの基礎的・臨床的研究がこの方法の原点です。この薬は、戦後、女性のトリコモナス膣炎の特効薬として長年、多量に用いられてきた薬で、極めて安全な物です。しかしながら、日本の法律では、薬の認可は、使用目的別に申請・許可を取らなければならず、虫歯治療用ではまだ認可が得られていません。認可を得るには、製薬会社が、発ガン性、慢性毒性、局所貯留性などについて、実験動物による試験が必要ですが、そのためには膨大な費用がかかります。もし認可をとっても、安い薬ですから製薬会社も元が取れませんから認可申請をしませんので、現在も厚生労働省無認可という事です。トリコモナス膣炎の場合は、大量に使用されるので開発費をかけても十分に経済効果がありますので製薬会社はそのような研究をして安全性を確認して認可を取っています。虫歯の治療に使う量は、トリコモナス治療の何千分の一の量ですから安全なことは明らかです。決して薬が危険だから認可が得られないわけではありません。最近話題の3MIX-MP法は、薬を混ぜる材料としてのMPについて、これらを歯の組織内に残した場合にどうなるかの研究報告がありません。通常の歯科材料に混ぜる従来の3MIX法は、混ぜる材料は歯科材料としてJIS規格をパスした物を使っています。 しかし、3Mix法ももちろんう蝕治療に万能ではありません。また、時代と共に新しい効果的な化学療法剤も開発されてきております現在、メトロニダゾールは勿論有効ですが、それ以外の薬剤は、従来の3Mixにこだわる必要は無く、それぞれの状況によって歯科医が選択されれば良いと思います。最近では、私は、3Mixという呼び名を止めて、う蝕治療用抗菌剤という言葉を使っています。間違った情報に惑わされることなく正しい治療を受けられることを希望して、開発者としてここに若干の解説をさせて戴きました。
このように3Mix-MP法は確立された治療法ではなく,その効果についても宣伝されているようなものではないという反論があるようです。そこで実際にその治療を行っている歯医者さんに行って聞いてみました。この歯医者さんは3Mix-Mp法の開発者の方がいる仙台の歯医者さんと提携して行っていたことがあるので,その治療法にはかなり詳しいと思います。
そこで聞いた内容は以下のようなことでした。
- 薬剤を投与した際に唾液が入らないように注意しなければならないので,子どもなどでは難しい。
- 1,2年は大丈夫だかその後再発する方も多く,それならば最初から削っておいた方が効果がある。
- よって当院では依頼があれば3Mix-MP法を施すことはできるが,お勧めしていない。どうしても削る音が嫌いというなら別ですが。
という説明でした。共同通信社が伝えている内容とはずいぶんと違うものですね。実際にこの治療法を行っている歯医者さんですので,その情報に偽りはないとは思いますが,もしこの削らない虫歯治療に興味がある方は歯医者で相談されるのが良いかと思います。
先ほど引用した岩田正明氏は以下のようにも述べています。
最近の一部新聞・テレビ報道にご注意ください!!
「削らない、痛くない虫歯治療法」は、残念ですが、現在まだありません。治療後の「再発」を防ぐのは本人の努力です。
マスコミは正しい情報を提供しているか
最近、一部のテレビ、新聞などで盛んに「削らない、痛くない、再発しない虫歯治療法・3MIX-MP法」といった内容の夢のような報道がなされており、国民の皆様と、真剣に医療現場で働く歯科医師にとって誤解と混乱を招く困った宣伝がされています。
もちろんこのような治療法が適している人もいるかと思いますし,他にも以下のような虫歯治療があるようですから,いろいろな歯科医の話を決めて治療を選択することが良いのではないでしょうか。ちなみに私は普通の削る治療を選択して,今日も歯のクリーニングに行ってきます!!
削らない治療もある!最新の虫歯治療が進んでた - NAVER まとめ