斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

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釣り記事解説"おやつカンパニー、過半の役員が辞めていた!"

東洋経済オンラインで釣り記事があったので簡単に解説(というか小姑チェック)をします。なお、おやつカンパニーベビースターラーメンを売っている会社ですね。それに、カーライルというファンドが資本参加したというニュースが元ネタです。

おやつカンパニー、過半の役員が辞めていた! | 企業 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

http://www.flickr.com/photos/15737284@N06/2865493078

photo by sarahbest

 

過半数の株を持てば過半の役員を送り込むのは当然

まず東洋経済オンラインの記事は、タイトルで、役員の半数が、カーライルが株主になったことで変わったことを煽り気味に書いています。

おやつカンパニーが開示しているプレスリリース上では、

株式会社おやつカンパニー(以下:おやつカンパニー、代表:松田好旦、本社:三重県)と、グローバルに展開する投資会社であるカーライル・グループ(日本共同代表:安達保/山田和広、本社:米国ワシントンD.C.、以下:カーライル)は、おやつカンパニーの海外展開を加速するため、業務資本提携を致しました。

お知らせ|おやつカンパニー

業務資本提携ということになっていますが、恐らく今回の取引で株の過半はカーライルが取っているはずです。カーライルほどのPEファンドでこれぐらいの規模の会社を買うのに過半を出さないというのはまずありえません。他のニュースソースでも過半をカーライルが買収したとあります。

おやつカンパニー上場会社でもないですし、プレスリリースが義務付けられているわけでもないので、従業員や取引先に与える印象を考慮して、業務資本提携という柔らかい表現を使ったのだと思います。

株を過半持てば、通常は役員も過半を送り込めるわけで、役員が交代するのは何も不自然な話ではありません。どこでも行われている話です。『おやつカンパニーがカーライルに買収された!』というタイトルなら分かりますが、役員の過半が辞任したというタイトルはあまりにも素人の視点にもるものです。

 

取締役と執行役員の役割分担

それと、東洋経済オンラインでは、取締役から幹部が退陣したとして、これも大げさに取り扱っています。

そのリリースには、「経営執行につきましては、現在の代表取締役である松田好旦を中心に現経営陣が中心となって引き続き運営して参ります」と記されている。しかし、おやつカンパニーの法人登記を確認すると、今回の提携を機に経営陣の大幅な入れ替えが行われていることが分かった。

従来、取締役は8名だったが、今回の入れ替えで続投するのは、創業者・松田由雄氏の息子で社長の松田好旦氏を含む3名だけ。5月29日付けで「辞任」と登記された取締役は、会長だった井端昭雄氏、同社の主力工場でベビースターラーメンを製造する久居工場長も務めた笹井功二氏など5名。

確かに、幹部は取締役を辞任しているでしょうね。でも、それは会社を退職したということをそのまま意味するわけではありません。おやつカンパニーのプレスリリースからは、それらの幹部は恐らく執行役員という形で残っているのではないかと推測されます。"経営執行"は"現経営陣が中心になって"と書いてありますので。

東洋経済オンラインの記者は、カーライルとおやつカンパニーに取材をしているようですが、どうせなら、「取締役を辞任された経営幹部はまだ会社に残っていらっしゃるんですよね?執行役員という形になるんでしょうか??」と聞いておくべきです。プレスリリースでは経営陣が中心となると言っているわけですし、事実であるならば、おやつカンパニーとしても従業員や取引先に周知させていい情報であるため、これなら素直に教えてくれるはずです。

取締役はそれぞれ別々に株主から選任されるものであり、株主の利益を守りながら、株主価値を最大化するという任務があります。昔から会社にいるから取締役ができるというものではありません。

 

おやつカンパニーは買収する側?

もう一つ、東洋経済オンラインの記事ではこんなことも書かれています。

海外展開の拡大を見据え、買収や出資する食品メーカーが多い中、同社がとった戦略は大きく異なる。なぜ、このタイミングで業務・資本提携をしたのか。

食品メーカーが海外展開のために他社を買収することはあっても、買収された理由が分からないというものです。ある程度、会社の規模とそこから取れる戦略の選択肢を考えれば、これは別に理解できないものではありません。後段では、

おやつカンパニーの売上高は182億円(13年7月期)で従業員数370名。今回の出資額は200億円とも言われており、企業のサイズや投資額は安達氏が対象としていた企業像に合致する案件といえる。

とあるとおり、おやつカンパニーの売上高は200億円に満たない水準です。スナック会社といえば、カルビーですが、カルビーの売上高は約2000億円です。森永製菓は1600億円ぐらい。おやつカンパニーが売上高200億円でどれだけのキャッシュがあるか分かりませんが、海外企業を買収するのは大きな経営判断でしょう。海外の売上高20億円の会社を買収するのも躊躇するはず。

海外展開は進めたいけれど、自社単独では厳しいというのがあります。だからこそ、プレスリリースでは、

今般の業務資本提携で、カーライルの消費財分野における知見・経験、グローバル・ネットワーク等を最大限に活用し、グローバル・スナックカンパニーへの飛躍に向け、おやつカンパニー事業基盤の強化、海外展開を加速していきます。

このようにカーライルに期待するものとしてグローバル・ネットワークを挙げています。

東洋経済オンラインの記事では、 

果たして、カーライルの資本を仰いだことで、「グローバル・スナックカンパニー」へと変貌を遂げられるのか。それとも、経営体制の刷新で支障を来すようなことはあるのか。いずれにしても、”カーライル流”海外展開の一手が待たれるところだ。

というように締めくくっていますが、日本のカーライルの投資先は公開されているのですから(投資先 | The Carlyle Group)、こんな誰でも書ける締めの言葉ではなく、それらの企業がカーライルと組んで海外展開したのかどうかを経済誌には期待したいところです。

 

余談

東洋経済オンラインは2012年11月にリニューアルされ、その後爆発的にアクセス数を増やしました。当時の編集長だった佐々木さんはインタビューで、

佐々木 ウェブメディアは、若干プロレス的な部分がある。プロレスはエンタメとしては面白いのですが、総合格闘技のような本当の意味での真剣勝負ではありません。ですので、東洋経済オンラインでは、ガチンコのジャーナリズムと若干プロレス的なエンタメとを共存させたい。実際に、前述のユニクロの記事はガチンコのジャーナリズムですが、そういった記事でもウェブでしっかり響くことがわかりましたから、エンタメとガチンコをいかに両立させていくかですね。

なぜ東洋経済オンラインは4カ月でビジネス誌系サイトNo.1になれた?編集長に聞く (4/4) | ビジネスジャーナル

東洋経済オンラインでは、プロレス的なエンタメを共存させたいという話をされています。

 

佐々木編集長は今年5月にも、SPEEDAを提供するユーザベースのニュース媒体であるNewsPicksに移られたそうですが、編集長が変わっても、エンタメ路線に変更はなく、読者からすると多少無知にも読める釣り記事を意識的に公開していくんでしょうね。

東洋経済オンライン佐々木編集長、ニューズピックスへ:朝日新聞デジタル

 

なお、カーライルの日本代表の安達さんは、以前東洋経済オンラインのインタビューで、こんなことを語られていました。

安達 チャンスの「始まり」という意味では、13年前と似ています。ただ、当時はPEが理解されていませんでした。まず「PEとは何か」「カーライルとは何か」を理解いただくことが先決で、わかってもらうまで時間がかかりました。

カーライル、投資ファンドの知られざる実像 | インタビュー | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

同じ東洋経済オンラインで冒頭に紹介したような記事が掲載されるのですから、がっかりされていることでしょう。