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さて、前回の記事で申し上げました「ボカロPになるために必要なもの」で挙げさせて頂きました、それぞれの項目について解説していきたいと思います。
念のためもう一度一覧を挙げておきます。
自由にソフトウェアをインストールして、なおかつ使いたい時に使える環境がないと、公開するための作品を作り上げることは厳しいでしょう。
性能としては、2007年(初音ミク発売当時)以降に発売されたデスクトップPCであれば、とりあえず事足りると思われます(ノートPCの場合は製品による性能差が激しいので何とも言えません)。
ただし、本格的にやるのであればPCのパワーは高ければ高いに越したことはありません。特に「CPUパワー」と「メモリの大きさ」は作業効率に如実に響いてきます。
もちろん音声出力も大事です。それなりのスピーカーかヘッドホン(できれば両方)を使って、「自分が作った曲がどのような音で鳴るのか」をちゃんと確認していく必要があります。お金に余裕があるならば、モニター用ヘッドホン(筆者は定番と言われるSONYのMDR-CD900STを使用しています)などを入手してしまっても良いでしょう。
数千円程度のヘッドホンやPC用スピーカ(ただしステレオ必須)でやってできないこともないですが、あまりにもショボすぎる環境(液晶モニタやノートPCに搭載されたスピーカ、携帯プレイヤーに付属のイヤホンなど)ですと「入っているはずの音が聞こえない」などといったことが起こり得ます。他人の曲を聴く分にはそれでも案外楽しめてしまったりするのですが、作る側でそれをやってしまうと「他の環境ではとんでもない音に聞こえる」といった事態に陥りかねません。
サウンドカード(オーディオインターフェイス)については、本格的にやるのであればそれなりのものが必須でしょうが、どちらかといえば優先順位としてはスピーカ/ヘッドホンの方が高いです。
ただしこれは人によってまちまちで、2時間程度で1曲丸ごと仕上げてしまう猛者もいる一方で、筆者のように1曲あたりトータルで50時間近くかけてしまう例もあります。
おそらくこれが問題になるのは「社会人」か「受験生」か「子育て中のお母さん」あたりでしょう。
当然、社会人のボカロPは大勢存在しますが、筆者もその例に漏れず、作曲のための時間を造り出すのになかなか苦労していたりするわけです。
いわゆる普通の学生であればその辺は困らないでしょうが、逆に機材やソフトを揃えるための資金が不足しがちになると思われます。
ですが、前回の記事で述べた「金で手間暇を買う」の逆の発想で「金無しを手間暇で補う」といったことも可能ですので、そういった意味でも時間があればあるほど有利になります。
ここで言う「中級レベル」というのは「Excelでグラフが作れるよ!」とかそういった類のものではなく、「新しく入手したソフトをどんどんインストールして、誰にも教わらずに説明書とかGoogle先生の力とかで使えるようになるよ!」という方面の意味合いが強いです。
「ボカロ動画を作って投稿する」ために必要なソフトウェアは、一般のソフトウェアと比べて独特かつ複雑なものが多いため、周囲にそれらを一通り使える人がいる可能性ははっきり言って低いです。したがって、基本的にこれらの習得は独力で行う必要があります。
部分部分を他の人に丸投げしてしまうというのも手かもしれませんが、全部を他人に投げてしまうのでは、それはもはやボカロPと呼べるかどうか怪しいでしょう(ボカロPの「P」は「プロデューサー」の略のはずですが、不思議なことに「プロデュースするだけ」の人がボカロPと呼ばれることは少ないのです)。
余談ですが、昔からDTM(デスクトップミュージック=PCによる音楽制作。ボカロもいわゆるDTM用ソフトウェアに分類されます)をやってきた人の中には「本業はシステム系」という人の割合が妙に多いのですが、その理由はおそらくPC操作に関するアドバンテージにあるのではないでしょうか。
一応、体験版などを駆使すればお金をかけずにボカロ曲が作れなくもないのですが、機能制限や期間制限などもあり難易度は当然のごとく上がるため、せっかくボカロPを名乗るなら1つくらいは買っておいた方がいいでしょう。
さて、VOCALOIDと一言で言っても、その種類は膨大です。
この記事を書いている現在、一般に購入することができるVOCALOIDパッケージの種類はゆうに30を超えています。
まず、VOCALOIDは「エンジン」と呼ばれるソフトの基本部分と「DB」と呼ばれる声データの部分があり、多くの場合はそれらがセットになって売られています。
これらのエンジンとDBの組み合わせについては、Wikipediaの「VOCALOID」の記事に結構詳しく載っていたりするので、是非参考にしてみて下さい。
その中からどれを買えばいいのか? ということですが――
「実際に声を聞いて『この声で歌わせたい!』と思ったもの」
を購入するのがおすすめです。
もちろんキャラクターの好みで選ぶのもアリです。
人気のボカロで歌わせた方が曲も人気が出るのでは? という考えもありますが、逆に人気のボカロはそれだけ使う人も多く、競争率が高いので一概にそうとも言い切れません。
逆に、あまりにもマイナーすぎるボカロを使うのは(多くの人に聴いてもらうという意味では)どうしても不利になりがち、という部分は否定できません。ですが、そういったボカロで固定ファンを掴み「○○(ボカロ名)の第一人者」的な扱いを受けるようになったPも存在するので、そういったルートを目指してみるのも一興かもしれません。
ちなみに筆者が初めて購入したボカロは「MEIKO」でした。
(そもそも当時(2007年1月頃)は女声日本語ボカロがそれしか存在しなかったんですYO!)
DAWとは「デジタル・オーディオ・ワークステーション」の略で、本来は「デジタルで音声の録音、編集、ミキシングなど一連の作業が出来るように構成された一体型のシステム」を指すのですが、実際にはそのような機能を備えたソフトウェアを指すことが多いです。
ざっくりと簡単に言えば「音楽編集ソフト」のようなものです。
何故これが必要なのかと言うと、基本的に「VOCALOIDは、歌声を出すことしかできない」からです。
つまりVOCALOID単体ではアカペラの曲しか作れないわけです(「KAITO V3」のように、VOCALOIDを買うとDAWソフトウェアも付属してくる!などという例も一部存在します)。
オケ付きの曲を作り、そしてVOCALOIDをその曲に合わせて歌わせるのであれば、DAWもしくはそれに類するソフトウェアは必須となります。
また多くの場合、ボカロの音声はVOCALOIDから出力された声をそのまま使うのではなく、DAW上で何らかの加工(例えばリバーブで響くようにしたり、イコライザで低域/高域のバランスを整えたり)をかけた状態でオケと組み合わせられます。
これは無料で手に入るものもあるのですが、高いものになると10万円くらいするものまであります。
有名なものとしてはCubase、FLStudio、Logic、Singer Song Writer、Studio One、などといったものがある……らしいです(ぶっちゃけ個々のソフトについては筆者はあまり詳しくないですごめんなさい)。
多くのDAWは「プラグイン」と呼ばれる各種の追加ソフトウェアを導入することで機能を増やすことができるのですが、これも有料のものから無料のものまで様々なものがあります。
以前にも述べましたが、この手のソフトウェアは基本的に「高機能であればあるほど、制作にかかる手間暇を減らせる」といった特徴がありますが、逆に言えば「手間暇を惜しまなければ、無料のものの組み合わせでも何とかできる」ということでもあります。
当然、操作方法もソフトによりけりなのですが、おそらく初心者の方が一番つまづきやすいポイントが、この「DAWの操作方法の習得」ではないでしょうか。
付属のマニュアルだけでは何かとわかりづらい点もあるので、そういう時には書店でそのソフト向けの解説本などを購入してみるのも良いでしょう。
そして何より「とりあえず動かしてみて音をいろいろ鳴らしてみる」ことをお勧めします(簡単な童謡のメロディを打ち込んでみるなど)。
ちなみに筆者が使っているDAWソフトウェアは、あのよく落ちることで有名な「SONAR」です。
一部ではこれを使っているというだけで情弱呼ばわりされるそうですが、一方で結構な数の有名ボカロPが使っているという説もあります。
実はSONARも、アップデートパッチをちゃんと当てて、あとはCPUパワーとメモリが潤沢にあればそうそう落ちたりはしないのですが(古いPCでパッチ当てずに使ってた頃は一日に数回は落ちてました……)、やはり一度ついてしまったイメージというのはなかなか払拭できないようです。
楽器選びは重要なポイントです。ギターやドラムス、ピアノなどは定番ですが、他にもフルートやバイオリンなどのオーケストラ系の楽器、更には三味線や尺八などの和楽器などが使われたボカロ曲も多く存在します。
生楽器の演奏をできる人がいるのならば、実際に演奏して録音したものを使用するのも良いです(何らかの録音手段が必要になるでしょう。その辺で売られているPC用USBマイクでは少々厳しいかもしれません)。
ボカロ曲で生楽器を使うことは一般的に「売り」になるポイントであり、多く使えばそれだけ(良い意味で)「贅沢な」作品とみなされるようです。
しかし、実際には誰もが生楽器のパートを用意できるわけではありません。多くの種類の楽器を使おうとすればするほど楽器も演奏者もたくさん必要になります。
そのため、足りない部分(あるいは全部)をDTM音源に肩代わりさせる、というのが一般的です。
一言で「DTM音源」と言ってもその形態は様々ですが、大別すると「ハードウェア音源」と「ソフトウェア音源」に分かれます。
ハードウェア音源は、その名の通りPCに接続して使用する機器です。多くはMIDI規格に対応しているためMIDI音源とも呼ばれます。かつてはこちらが主流でした。
一方、ソフトウェア音源はPCにインストールして使用するもので、PC性能の向上に伴い現在ではこちらが主流となってきています。こちらは無料でダウンロードできるものも存在し、またDAWを購入するといろいろ付属してくる場合が多いです。
音源の良し悪しは、聴いた人に与える印象にかなり大きな影響を与えます。更に、音源の種類が増えることは表現の幅が増えることにも直結します。そのため、ある程度慣れてくるといろいろ追求したくなってくるものです。
ちなみに筆者はかつてはEDIROLの「SD-90」というハードウェア音源を使用していましたが、今では「KOMPLETE8」というソフトウェア音源のセットを主に使用しています(後者はHDDとCPUとメモリを湯水のように使う音源ですので、いきなりコレに手を出すのはお勧めしません……)。
「楽譜(五線譜)を読む技術そのもの」は実は(やり方によっては)全く不要だったりするのですが、しかし、実際に五線譜を利用した入力を行うか否かに関わらず「簡単な楽譜が読めるくらいの知識はあった方がいい」のが実情です。
そして当然、作曲そのものにも音楽知識の有無は影響してきます。例えば複数の音を重ねて和音を鳴らした時「なんか響きが変だなぁ」と思うようなケースはよくありますが、その際に「どこが原因でおかしくなっていて、どう変えるといい感じになるのか」といったことを知る役にも立ったりします。
ただし、この音楽知識というものは(商業作品を作るならともかく)趣味で音楽を作る際に絶対に必須かと言われると、そうとも言い切れません。
ニコニコ動画に投稿されているボカロ曲でも「明らかに高度な専門知識がないと作れないような凄い曲」もあれば「あまり知識のない人が作ったと思われるが、しかし多くの人の心を動かした曲」も存在します。
とりあえず「何も考えず勢いで一曲作って」みてから、改めて何が必要かを考えてみるという手もアリです。
ちなみに筆者は子供の頃にピアノを習っていたりしたので、音階がどうとか調がどうとかといった知識は持ち合わせていたのですが、一方で(ギター経験者であればお馴染みであるはずの)コードについてはほとんど何もわからない状態からのスタートでしたし、作曲に関する理論に至っては完全な独学でした。
といったところで、例えばmuzie(音楽投稿サイトの一種)あたりならあとはそのまま投稿すれば良いのでしょうが、しかしこのルートでは「ニコニコ動画」に投稿することを想定しています。
動画サイトに投稿する以上は、(少なくともデータ形式上は)「動画」作品である必要があります。
もちろん「真っ黒な画面バックに、ボカロの歌う曲だけが流れ続ける」といったものでも投稿できないわけではありませんし、実際にそのようなボカロ曲動画も稀に存在しています。
ですが、せめて歌詞表示くらいは入れた方が親切というものです。この段階で既に動画編集ソフトウェアを使った編集作業が必須となってきます。
これもフリーのものから10万以上するものまで様々です。
しかしながら、既によほど名前が知られているとか固定ファンがいるとかでもなければ、ほとんどの場合はこれでは誰も視聴しに来てくれない(真っ黒なサムネイルの動画を開こうとする人は少ないのです)、というのが今のニコニコ動画の現状です。
したがって、更にもう一歩進んで「イラスト(静止画)+歌詞+曲」といった構成が、いわば「事実上の最小構成」と言っても過言ではないでしょう。
イラストは自分で描いたり、あるいは知り合いに描いてもらったりといった方法ももちろんありますが、よく使われるのが「ピアプロなどに他の人が投稿した絵をお借りする」というものです。
当然、他人様の作品をお借りするのですから、サイトの説明や投稿者のコメントなどをよく読んで、ルールやマナーには十分気を付けましょう(この辺をおろそかにするとトラブルの元になるばかりでなく、最悪の場合は犯罪者としてお縄になることすらあり得ます)。
そして当然のことながら、ニコニコ動画が動画サイトである以上「静止画」より「動画」の方がより強い訴求力を持ちます。
最近投稿されるボカロ曲にはかなりの割合で「動画」が最初からついており、中にはどうみてもプロの犯行としか思えないようなものも少なくありません。
こればかりは「投稿された動画をお借りする」というのはまず不可能ですので、動画師と知り合いになってお願いしてみるか、もしくは自分で動画作りに挑戦してみるしかないでしょう。
ちなみに筆者は、初投稿段階から自力での動画作りにチャレンジしています。
案外なんとかなるものですよ!
使っているソフトについては黙秘します(なんかいろんな意味で罵声が飛んできそうなので……)。
プレミアムアカウントを持っていれば、動画のビットレート制限やアップロード待ち時間などの面でかなり優遇されますので、動画投稿者としては持っていて損はないでしょう。
クレジットカードを持っていなくても、WebMoney(コンビニ等で買えます)などで支払いが可能です。
ご存じの通り、ニコニコ動画の視聴者は基本的に匿名です。
現在のネット上で匿名が集まる場所は、総じてモヒカン頭がヒャッハーと叫びながら闊歩する領域であり、もちろんニコニコ動画も例外ではありません。
(ボカロ系はそれでも他ジャンルに比べればかなり平和な方ではありますが……)
そんな場所に、手塩にかけて育てた我が子(に等しい作品)を送り込むことは、とても勇気の要る行為です。
実際、筆者も初めてボカロ曲をニコ動に投稿する際にはかなり葛藤したものです(当時のニコ動が今以上にアングラ色の強いサイトであったことも原因の一つですが)。
ですが考えてみて下さい。仮に「ここで『失敗』することで失うもの」とは何があるのでしょうか?
それが「取り返しのつくもの」である限り、もはやためらう必要は何一つとしてありません。
安心してゆっくり玉砕していってね!(鬼)
さて、ここまで「ボカロPになるのに必要な物」について説明して参りましたが、ここからは「ボカロPとしての活動を続けていくのに必要な物」です。
とはいえ、基本的には上記で述べてきたものとほぼ同じなのですが、一つだけ追加で必要になるものがあります。
それがこれです。
さて、この作品が辿る運命とはいかなるものでしょうか?
【ケース1:圧倒的多数が辿るケース】
唐突ですが、ボカロ曲の再生数といえば一体どのくらいを想像するでしょうか?
ボカロ曲と言われてぱっと思い浮かぶ曲の再生数を確認してみると、「数十万」とか「数百万」といった数字が出てくる場合が多いでしょう。
ですが、そこまで多くの人の目に触れるケースというのは、全体からすればほんの一握りです。10万再生を超えると「殿堂入り」と呼ばれるようになりますが、ボカロ動画でここに至るのは全体のうちおよそ1%程度です。
それどころか、1000再生に至る割合ですらも50%に届きません。これは何年も前に投稿された動画も含めた数字なので、今からボカロ動画を初投稿して1カ月やそこらで1000再生に到達したら、これははっきり言って殊勲賞ものと言っても過言ではないでしょう。
そして、どれだけ頑張って作った作品であっても、投稿から数か月もすればほとんど見向きもされなくなるケースがほとんどです。
投稿した曲がことどごくそのような末路を迎えながら、それでも頑張って曲を作って投稿し続けて行く――これがMではなくて何だと言うのでしょうか(笑)
唯一の救いは、今のところ多くの視聴者は「伸びていない動画に対しては(比較的)優しい」ということでしょうか。
というよりも、わざわざ再生数の少ない動画にまで探索の足を伸ばしてくるような視聴者は基本的に筋金入りのボカロ曲好きなので、頑張ってボカロ曲を作ってくれるPたちを無碍に扱うような不心得者は滅多にいない、と言った方がいいかもしれません。
(ただし、夏休みなど長期休暇シーズンについてはこの限りではないのでご注意下さい)
もっとも「無反応よりは多少叩かれるくらいの方がマシ」という意見すらあるくらい、「反応が少ない」というのは投稿者にとって非常に堪えるものではあるのですが……。
そんなわけで、ちょっとでも「いいなー」と思える作品があったら、積極的にコメントで応援してあげて下さい。ほんとマジで切実です。
【ケース2:何らかの理由により爆発に至ったケース】
こちらはケース1と比べて圧倒的に少数の作品が辿る道です。
「作品のクオリティ」「話題性」「時の運」「その他の何らかのイレギュラー要因」のうち、少なくとも2つ以上が重なった時、その作品は視聴者の注目を集め、再生数は一気に伸びていくことになります。
「再生数が増える」ことは「目立つ」ことに直結するため、そこから更に再生数が増え、いわば「再生数が再生数を呼ぶ」というループが始まります。
多くの人は「聴いてもらうために」作品を投稿しているわけですから、これは喜ぶべきことではあります。
しかしながら、ケース1で「伸びていない動画に対しては(比較的)優しい」と述べていますが、これは裏を返せば、視聴者は「伸びている動画に対しては(比較的)厳しい」ということでもあります。
これにはいくつもの理由が考えられます。とりあえず列挙してみますと、再生数の多い動画には
特に「クオリティはそこまで高くないのに、何らかの理由で伸びてしまった」動画に対する風当たりは結構なものがあります。
筆者も一度、とある理由により投稿作品の一つが(いつもと比べて)大幅に伸びてしまったことがあり、その時についた一部のコメントについては「このコメントを見た(普通の)視聴者が不快に思わないだろうか、目に余るコメントは消しておいた方がいいんじゃないんだろうか」などと真剣に悩んだこともあります。
このように、手塩にかけて育てた作品を投稿した末に待ち受けているのは、いずれにしても厳しい世界の洗礼です。
そしてほとんどの場合、労力に見合うだけの見返り(物理的・経済的な意味で)はまず得られません(というか大半の場合はほぼ完全な無報酬のはずです)。CDの売り上げや奨励プログラムなどで、労力に見合うだけのリターンが得られるほどの有名Pとなれば、今度は有名税が重くのしかかってくることでしょう。
そんな中で懲りもせず、繰り返し繰り返し曲を作って何度も投稿するとか、正直ちょっとどこかイカレてる(イカしてる、と字面は似ていますが違います)としか思えません。
身近にそういう人を見かけたら、生暖かく見守っていてあげて下さい。
仮にもしも万が一、M度が低いにも関わらずボカロPとして活動を続けていきたい!という奇特な方がいらっしゃいましたら、何よりもまず
「ニコニコ動画とはこういう場所である」
という、正しい認識に基づく割り切りが重要になってくると思います。
過剰な期待はせず、過剰に怯えることもせず、あくまで目的(個々人によって異なる)を達成するための手段としてニコニコ動画を利用する、くらいの気持ちで臨めば、まあ何とかなるのではないでしょうか。
以上、実体験に基づいているような基づいていないような、アドバイスになっているのかなっていないのかわからないような解説でした。
念のためもう一度一覧を挙げておきます。
【ボカロPになるのに必要なもの(典型的なルートの場合)】
- ある程度自由に使えるPC(インターネット接続必須)
- ある程度自由に使える時間
- 中級レベル以上のPC操作技能(「自称中級者」では少々厳しいかもしれません。ネット慣れしていることが望ましい)と、各種ソフトウェアの使い方を覚える根気
- VOCALOIDのソフトウェア本体(「初音ミク」など)
- DAWソフトウェア(音楽編集等を行うためのソフト)
- 「楽器+それを演奏できる人+録音環境」または「DTM音源(DAWに同梱されている場合もある)」
- 初歩的な音楽知識(小中学校の音楽の授業で習う程度)、もしくは「そんなものが無くても俺はやってやるぜ!」という開き直り
- 動画編集ソフトウェア
- ニコニコ動画のアカウント(プレミアムだと尚良し)
- 最初の一歩を踏み出す勇気
【ボカロPとしての活動を続けていくのに必要なもの】※ここでは「曲を作ってボカロに歌わせて、ボカロ曲動画としてニコ動にうpする」という、まさに「典型的な(ボカロPを目指す人の多くがイメージしているであろう)ボカロP像」について述べています。
- Mっ気
1. ある程度自由に使えるPC(インターネット接続必須)これは読んで字のごとくですね。
自由にソフトウェアをインストールして、なおかつ使いたい時に使える環境がないと、公開するための作品を作り上げることは厳しいでしょう。
性能としては、2007年(初音ミク発売当時)以降に発売されたデスクトップPCであれば、とりあえず事足りると思われます(ノートPCの場合は製品による性能差が激しいので何とも言えません)。
ただし、本格的にやるのであればPCのパワーは高ければ高いに越したことはありません。特に「CPUパワー」と「メモリの大きさ」は作業効率に如実に響いてきます。
もちろん音声出力も大事です。それなりのスピーカーかヘッドホン(できれば両方)を使って、「自分が作った曲がどのような音で鳴るのか」をちゃんと確認していく必要があります。お金に余裕があるならば、モニター用ヘッドホン(筆者は定番と言われるSONYのMDR-CD900STを使用しています)などを入手してしまっても良いでしょう。
数千円程度のヘッドホンやPC用スピーカ(ただしステレオ必須)でやってできないこともないですが、あまりにもショボすぎる環境(液晶モニタやノートPCに搭載されたスピーカ、携帯プレイヤーに付属のイヤホンなど)ですと「入っているはずの音が聞こえない」などといったことが起こり得ます。他人の曲を聴く分にはそれでも案外楽しめてしまったりするのですが、作る側でそれをやってしまうと「他の環境ではとんでもない音に聞こえる」といった事態に陥りかねません。
サウンドカード(オーディオインターフェイス)については、本格的にやるのであればそれなりのものが必須でしょうが、どちらかといえば優先順位としてはスピーカ/ヘッドホンの方が高いです。
2. ある程度自由に使える時間曲作りには時間がかかります。慣れていなければ尚更です。
ただしこれは人によってまちまちで、2時間程度で1曲丸ごと仕上げてしまう猛者もいる一方で、筆者のように1曲あたりトータルで50時間近くかけてしまう例もあります。
おそらくこれが問題になるのは「社会人」か「受験生」か「子育て中のお母さん」あたりでしょう。
当然、社会人のボカロPは大勢存在しますが、筆者もその例に漏れず、作曲のための時間を造り出すのになかなか苦労していたりするわけです。
いわゆる普通の学生であればその辺は困らないでしょうが、逆に機材やソフトを揃えるための資金が不足しがちになると思われます。
ですが、前回の記事で述べた「金で手間暇を買う」の逆の発想で「金無しを手間暇で補う」といったことも可能ですので、そういった意味でも時間があればあるほど有利になります。
3. 中級レベル以上のPC操作技能(「自称中級者」では少々厳しいかもしれません。ネット慣れしていることが望ましい)と、各種ソフトウェアの使い方を覚える根気まずはこの辺が壁になる人が多いのではないでしょうか。
ここで言う「中級レベル」というのは「Excelでグラフが作れるよ!」とかそういった類のものではなく、「新しく入手したソフトをどんどんインストールして、誰にも教わらずに説明書とかGoogle先生の力とかで使えるようになるよ!」という方面の意味合いが強いです。
「ボカロ動画を作って投稿する」ために必要なソフトウェアは、一般のソフトウェアと比べて独特かつ複雑なものが多いため、周囲にそれらを一通り使える人がいる可能性ははっきり言って低いです。したがって、基本的にこれらの習得は独力で行う必要があります。
部分部分を他の人に丸投げしてしまうというのも手かもしれませんが、全部を他人に投げてしまうのでは、それはもはやボカロPと呼べるかどうか怪しいでしょう(ボカロPの「P」は「プロデューサー」の略のはずですが、不思議なことに「プロデュースするだけ」の人がボカロPと呼ばれることは少ないのです)。
余談ですが、昔からDTM(デスクトップミュージック=PCによる音楽制作。ボカロもいわゆるDTM用ソフトウェアに分類されます)をやってきた人の中には「本業はシステム系」という人の割合が妙に多いのですが、その理由はおそらくPC操作に関するアドバンテージにあるのではないでしょうか。
4. VOCALOIDのソフトウェア本体(「初音ミク」など)これがなければボカロPは始まりません。
一応、体験版などを駆使すればお金をかけずにボカロ曲が作れなくもないのですが、機能制限や期間制限などもあり難易度は当然のごとく上がるため、せっかくボカロPを名乗るなら1つくらいは買っておいた方がいいでしょう。
さて、VOCALOIDと一言で言っても、その種類は膨大です。
この記事を書いている現在、一般に購入することができるVOCALOIDパッケージの種類はゆうに30を超えています。
まず、VOCALOIDは「エンジン」と呼ばれるソフトの基本部分と「DB」と呼ばれる声データの部分があり、多くの場合はそれらがセットになって売られています。
これらのエンジンとDBの組み合わせについては、Wikipediaの「VOCALOID」の記事に結構詳しく載っていたりするので、是非参考にしてみて下さい。
その中からどれを買えばいいのか? ということですが――
「実際に声を聞いて『この声で歌わせたい!』と思ったもの」
を購入するのがおすすめです。
もちろんキャラクターの好みで選ぶのもアリです。
人気のボカロで歌わせた方が曲も人気が出るのでは? という考えもありますが、逆に人気のボカロはそれだけ使う人も多く、競争率が高いので一概にそうとも言い切れません。
逆に、あまりにもマイナーすぎるボカロを使うのは(多くの人に聴いてもらうという意味では)どうしても不利になりがち、という部分は否定できません。ですが、そういったボカロで固定ファンを掴み「○○(ボカロ名)の第一人者」的な扱いを受けるようになったPも存在するので、そういったルートを目指してみるのも一興かもしれません。
ちなみに筆者が初めて購入したボカロは「MEIKO」でした。
(そもそも当時(2007年1月頃)は女声日本語ボカロがそれしか存在しなかったんですYO!)
5. DAWソフトウェア(音楽編集等を行うためのソフト)だう! と言われても何のことだかわからない方も多いと思われます。
DAWとは「デジタル・オーディオ・ワークステーション」の略で、本来は「デジタルで音声の録音、編集、ミキシングなど一連の作業が出来るように構成された一体型のシステム」を指すのですが、実際にはそのような機能を備えたソフトウェアを指すことが多いです。
ざっくりと簡単に言えば「音楽編集ソフト」のようなものです。
何故これが必要なのかと言うと、基本的に「VOCALOIDは、歌声を出すことしかできない」からです。
つまりVOCALOID単体ではアカペラの曲しか作れないわけです(「KAITO V3」のように、VOCALOIDを買うとDAWソフトウェアも付属してくる!などという例も一部存在します)。
オケ付きの曲を作り、そしてVOCALOIDをその曲に合わせて歌わせるのであれば、DAWもしくはそれに類するソフトウェアは必須となります。
また多くの場合、ボカロの音声はVOCALOIDから出力された声をそのまま使うのではなく、DAW上で何らかの加工(例えばリバーブで響くようにしたり、イコライザで低域/高域のバランスを整えたり)をかけた状態でオケと組み合わせられます。
これは無料で手に入るものもあるのですが、高いものになると10万円くらいするものまであります。
有名なものとしてはCubase、FLStudio、Logic、Singer Song Writer、Studio One、などといったものがある……らしいです(ぶっちゃけ個々のソフトについては筆者はあまり詳しくないですごめんなさい)。
多くのDAWは「プラグイン」と呼ばれる各種の追加ソフトウェアを導入することで機能を増やすことができるのですが、これも有料のものから無料のものまで様々なものがあります。
以前にも述べましたが、この手のソフトウェアは基本的に「高機能であればあるほど、制作にかかる手間暇を減らせる」といった特徴がありますが、逆に言えば「手間暇を惜しまなければ、無料のものの組み合わせでも何とかできる」ということでもあります。
当然、操作方法もソフトによりけりなのですが、おそらく初心者の方が一番つまづきやすいポイントが、この「DAWの操作方法の習得」ではないでしょうか。
付属のマニュアルだけでは何かとわかりづらい点もあるので、そういう時には書店でそのソフト向けの解説本などを購入してみるのも良いでしょう。
そして何より「とりあえず動かしてみて音をいろいろ鳴らしてみる」ことをお勧めします(簡単な童謡のメロディを打ち込んでみるなど)。
ちなみに筆者が使っているDAWソフトウェアは、あのよく落ちることで有名な「SONAR」です。
一部ではこれを使っているというだけで情弱呼ばわりされるそうですが、一方で結構な数の有名ボカロPが使っているという説もあります。
実はSONARも、アップデートパッチをちゃんと当てて、あとはCPUパワーとメモリが潤沢にあればそうそう落ちたりはしないのですが(古いPCでパッチ当てずに使ってた頃は一日に数回は落ちてました……)、やはり一度ついてしまったイメージというのはなかなか払拭できないようです。
6. 「楽器+それを演奏できる人+録音環境」または「DTM音源(DAWに同梱されている場合もある)」さて、オケを作るのはいいのですが、何の楽器で音を入れたら良いのでしょうか?
楽器選びは重要なポイントです。ギターやドラムス、ピアノなどは定番ですが、他にもフルートやバイオリンなどのオーケストラ系の楽器、更には三味線や尺八などの和楽器などが使われたボカロ曲も多く存在します。
生楽器の演奏をできる人がいるのならば、実際に演奏して録音したものを使用するのも良いです(何らかの録音手段が必要になるでしょう。その辺で売られているPC用USBマイクでは少々厳しいかもしれません)。
ボカロ曲で生楽器を使うことは一般的に「売り」になるポイントであり、多く使えばそれだけ(良い意味で)「贅沢な」作品とみなされるようです。
しかし、実際には誰もが生楽器のパートを用意できるわけではありません。多くの種類の楽器を使おうとすればするほど楽器も演奏者もたくさん必要になります。
そのため、足りない部分(あるいは全部)をDTM音源に肩代わりさせる、というのが一般的です。
一言で「DTM音源」と言ってもその形態は様々ですが、大別すると「ハードウェア音源」と「ソフトウェア音源」に分かれます。
ハードウェア音源は、その名の通りPCに接続して使用する機器です。多くはMIDI規格に対応しているためMIDI音源とも呼ばれます。かつてはこちらが主流でした。
一方、ソフトウェア音源はPCにインストールして使用するもので、PC性能の向上に伴い現在ではこちらが主流となってきています。こちらは無料でダウンロードできるものも存在し、またDAWを購入するといろいろ付属してくる場合が多いです。
音源の良し悪しは、聴いた人に与える印象にかなり大きな影響を与えます。更に、音源の種類が増えることは表現の幅が増えることにも直結します。そのため、ある程度慣れてくるといろいろ追求したくなってくるものです。
ちなみに筆者はかつてはEDIROLの「SD-90」というハードウェア音源を使用していましたが、今では「KOMPLETE8」というソフトウェア音源のセットを主に使用しています(後者はHDDとCPUとメモリを湯水のように使う音源ですので、いきなりコレに手を出すのはお勧めしません……)。
7. 初歩的な音楽知識(小中学校の音楽の授業で習う程度)、もしくは「そんなものが無くても俺はやってやるぜ!」という開き直りVOCALOIDの操作画面は、ある程度直感的に扱えるようなインターフェイスになっていますが、それでもある程度の音楽知識が無いと、細かい部分をいろいろ理解するのが難しいかもしれません。そして、DAWは(物にもよりますが)基本的にVOCALOIDより難しいと考えて差し支えありません。
「楽譜(五線譜)を読む技術そのもの」は実は(やり方によっては)全く不要だったりするのですが、しかし、実際に五線譜を利用した入力を行うか否かに関わらず「簡単な楽譜が読めるくらいの知識はあった方がいい」のが実情です。
そして当然、作曲そのものにも音楽知識の有無は影響してきます。例えば複数の音を重ねて和音を鳴らした時「なんか響きが変だなぁ」と思うようなケースはよくありますが、その際に「どこが原因でおかしくなっていて、どう変えるといい感じになるのか」といったことを知る役にも立ったりします。
ただし、この音楽知識というものは(商業作品を作るならともかく)趣味で音楽を作る際に絶対に必須かと言われると、そうとも言い切れません。
ニコニコ動画に投稿されているボカロ曲でも「明らかに高度な専門知識がないと作れないような凄い曲」もあれば「あまり知識のない人が作ったと思われるが、しかし多くの人の心を動かした曲」も存在します。
とりあえず「何も考えず勢いで一曲作って」みてから、改めて何が必要かを考えてみるという手もアリです。
ちなみに筆者は子供の頃にピアノを習っていたりしたので、音階がどうとか調がどうとかといった知識は持ち合わせていたのですが、一方で(ギター経験者であればお馴染みであるはずの)コードについてはほとんど何もわからない状態からのスタートでしたし、作曲に関する理論に至っては完全な独学でした。
8. 動画編集ソフトウェアさて、ボカロとDAWと音源とその他いろいろを使って、ようやく曲が完成しました!
といったところで、例えばmuzie(音楽投稿サイトの一種)あたりならあとはそのまま投稿すれば良いのでしょうが、しかしこのルートでは「ニコニコ動画」に投稿することを想定しています。
動画サイトに投稿する以上は、(少なくともデータ形式上は)「動画」作品である必要があります。
もちろん「真っ黒な画面バックに、ボカロの歌う曲だけが流れ続ける」といったものでも投稿できないわけではありませんし、実際にそのようなボカロ曲動画も稀に存在しています。
ですが、せめて歌詞表示くらいは入れた方が親切というものです。この段階で既に動画編集ソフトウェアを使った編集作業が必須となってきます。
これもフリーのものから10万以上するものまで様々です。
しかしながら、既によほど名前が知られているとか固定ファンがいるとかでもなければ、ほとんどの場合はこれでは誰も視聴しに来てくれない(真っ黒なサムネイルの動画を開こうとする人は少ないのです)、というのが今のニコニコ動画の現状です。
したがって、更にもう一歩進んで「イラスト(静止画)+歌詞+曲」といった構成が、いわば「事実上の最小構成」と言っても過言ではないでしょう。
イラストは自分で描いたり、あるいは知り合いに描いてもらったりといった方法ももちろんありますが、よく使われるのが「ピアプロなどに他の人が投稿した絵をお借りする」というものです。
当然、他人様の作品をお借りするのですから、サイトの説明や投稿者のコメントなどをよく読んで、ルールやマナーには十分気を付けましょう(この辺をおろそかにするとトラブルの元になるばかりでなく、最悪の場合は犯罪者としてお縄になることすらあり得ます)。
そして当然のことながら、ニコニコ動画が動画サイトである以上「静止画」より「動画」の方がより強い訴求力を持ちます。
最近投稿されるボカロ曲にはかなりの割合で「動画」が最初からついており、中にはどうみてもプロの犯行としか思えないようなものも少なくありません。
こればかりは「投稿された動画をお借りする」というのはまず不可能ですので、動画師と知り合いになってお願いしてみるか、もしくは自分で動画作りに挑戦してみるしかないでしょう。
ちなみに筆者は、初投稿段階から自力での動画作りにチャレンジしています。
案外なんとかなるものですよ!
使っているソフトについては黙秘します(なんかいろんな意味で罵声が飛んできそうなので……)。
9. ニコニコ動画のアカウント(プレミアムだと尚良し)これは読んで字のごとくですね。この記事を読んでいらっしゃる方であれば、大半の方が持っていると思われます。
プレミアムアカウントを持っていれば、動画のビットレート制限やアップロード待ち時間などの面でかなり優遇されますので、動画投稿者としては持っていて損はないでしょう。
クレジットカードを持っていなくても、WebMoney(コンビニ等で買えます)などで支払いが可能です。
10. 最初の一歩を踏み出す勇気実はこれが一番重要かもしれません。
ご存じの通り、ニコニコ動画の視聴者は基本的に匿名です。
現在のネット上で匿名が集まる場所は、総じてモヒカン頭がヒャッハーと叫びながら闊歩する領域であり、もちろんニコニコ動画も例外ではありません。
(ボカロ系はそれでも他ジャンルに比べればかなり平和な方ではありますが……)
そんな場所に、手塩にかけて育てた我が子(に等しい作品)を送り込むことは、とても勇気の要る行為です。
実際、筆者も初めてボカロ曲をニコ動に投稿する際にはかなり葛藤したものです(当時のニコ動が今以上にアングラ色の強いサイトであったことも原因の一つですが)。
ですが考えてみて下さい。仮に「ここで『失敗』することで失うもの」とは何があるのでしょうか?
それが「取り返しのつくもの」である限り、もはやためらう必要は何一つとしてありません。
安心してゆっくり玉砕していってね!(鬼)
さて、ここまで「ボカロPになるのに必要な物」について説明して参りましたが、ここからは「ボカロPとしての活動を続けていくのに必要な物」です。
とはいえ、基本的には上記で述べてきたものとほぼ同じなのですが、一つだけ追加で必要になるものがあります。
それがこれです。
1. Mっ気手塩にかけて育てたボカロ曲動画が完成し、晴れて投稿に至ったとします。
さて、この作品が辿る運命とはいかなるものでしょうか?
【ケース1:圧倒的多数が辿るケース】
唐突ですが、ボカロ曲の再生数といえば一体どのくらいを想像するでしょうか?
ボカロ曲と言われてぱっと思い浮かぶ曲の再生数を確認してみると、「数十万」とか「数百万」といった数字が出てくる場合が多いでしょう。
ですが、そこまで多くの人の目に触れるケースというのは、全体からすればほんの一握りです。10万再生を超えると「殿堂入り」と呼ばれるようになりますが、ボカロ動画でここに至るのは全体のうちおよそ1%程度です。
それどころか、1000再生に至る割合ですらも50%に届きません。これは何年も前に投稿された動画も含めた数字なので、今からボカロ動画を初投稿して1カ月やそこらで1000再生に到達したら、これははっきり言って殊勲賞ものと言っても過言ではないでしょう。
そして、どれだけ頑張って作った作品であっても、投稿から数か月もすればほとんど見向きもされなくなるケースがほとんどです。
投稿した曲がことどごくそのような末路を迎えながら、それでも頑張って曲を作って投稿し続けて行く――これがMではなくて何だと言うのでしょうか(笑)
唯一の救いは、今のところ多くの視聴者は「伸びていない動画に対しては(比較的)優しい」ということでしょうか。
というよりも、わざわざ再生数の少ない動画にまで探索の足を伸ばしてくるような視聴者は基本的に筋金入りのボカロ曲好きなので、頑張ってボカロ曲を作ってくれるPたちを無碍に扱うような不心得者は滅多にいない、と言った方がいいかもしれません。
(ただし、夏休みなど長期休暇シーズンについてはこの限りではないのでご注意下さい)
もっとも「無反応よりは多少叩かれるくらいの方がマシ」という意見すらあるくらい、「反応が少ない」というのは投稿者にとって非常に堪えるものではあるのですが……。
そんなわけで、ちょっとでも「いいなー」と思える作品があったら、積極的にコメントで応援してあげて下さい。ほんとマジで切実です。
【ケース2:何らかの理由により爆発に至ったケース】
こちらはケース1と比べて圧倒的に少数の作品が辿る道です。
「作品のクオリティ」「話題性」「時の運」「その他の何らかのイレギュラー要因」のうち、少なくとも2つ以上が重なった時、その作品は視聴者の注目を集め、再生数は一気に伸びていくことになります。
「再生数が増える」ことは「目立つ」ことに直結するため、そこから更に再生数が増え、いわば「再生数が再生数を呼ぶ」というループが始まります。
多くの人は「聴いてもらうために」作品を投稿しているわけですから、これは喜ぶべきことではあります。
しかしながら、ケース1で「伸びていない動画に対しては(比較的)優しい」と述べていますが、これは裏を返せば、視聴者は「伸びている動画に対しては(比較的)厳しい」ということでもあります。
これにはいくつもの理由が考えられます。とりあえず列挙してみますと、再生数の多い動画には
- 冷やかし目的の視聴者も多い
- 最初からある程度のクオリティを求めて来る人が多い
- 他の伸びてる曲(プロが作ったような曲がゴロゴロしています)と比較される
- 自分が好きじゃない作品が伸びているのが気に食わない!と思う人もいる
- 伸びている曲の作者=有名P、つまり有名人が相手なら何を言ってもいい、と思っている人がいる(芸能人を叩くようなノリで)
- 妬み、僻み、嫉みが集まりやすい(漢字の読みクイズではありません!)
特に「クオリティはそこまで高くないのに、何らかの理由で伸びてしまった」動画に対する風当たりは結構なものがあります。
筆者も一度、とある理由により投稿作品の一つが(いつもと比べて)大幅に伸びてしまったことがあり、その時についた一部のコメントについては「このコメントを見た(普通の)視聴者が不快に思わないだろうか、目に余るコメントは消しておいた方がいいんじゃないんだろうか」などと真剣に悩んだこともあります。
このように、手塩にかけて育てた作品を投稿した末に待ち受けているのは、いずれにしても厳しい世界の洗礼です。
そしてほとんどの場合、労力に見合うだけの見返り(物理的・経済的な意味で)はまず得られません(というか大半の場合はほぼ完全な無報酬のはずです)。CDの売り上げや奨励プログラムなどで、労力に見合うだけのリターンが得られるほどの有名Pとなれば、今度は有名税が重くのしかかってくることでしょう。
そんな中で懲りもせず、繰り返し繰り返し曲を作って何度も投稿するとか、正直ちょっとどこかイカレてる(イカしてる、と字面は似ていますが違います)としか思えません。
身近にそういう人を見かけたら、生暖かく見守っていてあげて下さい。
仮にもしも万が一、M度が低いにも関わらずボカロPとして活動を続けていきたい!という奇特な方がいらっしゃいましたら、何よりもまず
「ニコニコ動画とはこういう場所である」
という、正しい認識に基づく割り切りが重要になってくると思います。
過剰な期待はせず、過剰に怯えることもせず、あくまで目的(個々人によって異なる)を達成するための手段としてニコニコ動画を利用する、くらいの気持ちで臨めば、まあ何とかなるのではないでしょうか。
以上、実体験に基づいているような基づいていないような、アドバイスになっているのかなっていないのかわからないような解説でした。
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長記事お疲れ様です。
私からは動画編集ソフトの選び方に関する法則性を少し補完しておきます。
まず、”下手な有料ソフトよりもその辺にあるフリーソフトのほうが優秀”という理論を頭に入れておいてください。
理由としては、ソフトを使用する利用者の想定が違うからです。
商用ソフトの場合(2万円代くらいまで)
ターゲット 初心者
となるので主に使いやすさ
無料ソフトの場合
ターゲット ある程度PCに慣れていて高度な編集がしたい人
となるので機能数及び拡張性
を重視して作られている場合が多いです。
商用ソフトの最大の利点は”サポートが有る”事、そして、使いやすく作られているためさほど迷わずに作業できる場合が多いことだと思います。
ですが、裏を返せば作れる動画のバリエーションも少なく必要なことができない場合もあります。
逆に無料ソフトの場合は使いやすさを犠牲に拡張性・機能性を重視しているためスキル次第で某10万のソフトとも引けをとらない動画を作成可能です。
というわけで某プロ向けソフトと某ニコニコ一有名な動画編集ソフトを比較して締めたいと思います。
・Aviutil
無料ソフトの代表格、レイヤーをほぼ無限に重ねたりフィルターを掛けたりすることによってAE(後述)にも負けないような動画を作ることが可能。
ニコニコに流通しているMAD・ゆっくり実況プレイはほぼこのソフトかその派生のソフトで作られているといっても過言ではない。
・AE
プロ向け編集ソフト。
三重の人さんが使用していることで有名。
10万という価格帯にも関わらずニコニコでは結構普及している。
ボカロPVではこれが主流。
結論 Aviutilに慣れろ
私からは動画編集ソフトの選び方に関する法則性を少し補完しておきます。
まず、”下手な有料ソフトよりもその辺にあるフリーソフトのほうが優秀”という理論を頭に入れておいてください。
理由としては、ソフトを使用する利用者の想定が違うからです。
商用ソフトの場合(2万円代くらいまで)
ターゲット 初心者
となるので主に使いやすさ
無料ソフトの場合
ターゲット ある程度PCに慣れていて高度な編集がしたい人
となるので機能数及び拡張性
を重視して作られている場合が多いです。
商用ソフトの最大の利点は”サポートが有る”事、そして、使いやすく作られているためさほど迷わずに作業できる場合が多いことだと思います。
ですが、裏を返せば作れる動画のバリエーションも少なく必要なことができない場合もあります。
逆に無料ソフトの場合は使いやすさを犠牲に拡張性・機能性を重視しているためスキル次第で某10万のソフトとも引けをとらない動画を作成可能です。
というわけで某プロ向けソフトと某ニコニコ一有名な動画編集ソフトを比較して締めたいと思います。
・Aviutil
無料ソフトの代表格、レイヤーをほぼ無限に重ねたりフィルターを掛けたりすることによってAE(後述)にも負けないような動画を作ることが可能。
ニコニコに流通しているMAD・ゆっくり実況プレイはほぼこのソフトかその派生のソフトで作られているといっても過言ではない。
・AE
プロ向け編集ソフト。
三重の人さんが使用していることで有名。
10万という価格帯にも関わらずニコニコでは結構普及している。
ボカロPVではこれが主流。
結論 Aviutilに慣れろ