Google が Windows 7 / 8 対応の64bit版 Chrome ブラウザを開発者向けに公開しました。64bit化の利点として、グラフィックスやマルチメディアで平均して25%の高速化や、セキュリティの向上、クラッシュの大幅減などを挙げています。

Chrome の64bit Windows版は、まずは一般リリース前の開発者版として提供されます。対応OS は Windows 7 / 8 64bit。

リンク先 Chromium Blog の告知記事によれば、64bit化は Chrome の理念であるスピード、セキュリティ、安定性それぞれの面で恩恵があります。具体的には、

・スピード:特にグラフィックスやマルチメディアコンテンツでは平均して25%高速化。
・セキュリティ:JIT spraying攻撃などへの耐性向上、既存のセキュリティ対策機能もより効果的に。
・安定性:特にレンダラプロセスでは、32bit版と比較してクラッシュがほぼ半減。

など。

こうした性能向上の理由としては、64bit化によって64bitプロセッサの新たな命令セットを活用でき最適化できること、関数呼び出しでより多くのパラメタをすばやく渡せること、Windows 8 の高エントロピASLRなど最新OSの機能を使えることなどを挙げています。

「64bit化 = メモリがたくさん使える」とだけ覚えていると、逆に膨大なメモリを扱わないアプリでは意味がないと思ってしまいがちですが、実際にはプロセッサもOS機能も64bit化に際して進歩しており、新たな命令セットへの最適化などで活用すれば、同じプロセッサと同じメモリ量でも多くの場面でパフォーマンスが向上します。

(たとえば iPhone 5s では、外向きには Touch IDセンサ程度しか変わらない一方、中身は市販製品で初めて ARMv8アーキテクチャを採用してより多くのレジスタやさまざまな拡張命令が利用可能。

簡易的な指標では「2コアで1GBメモリ」でしかない iPhone 5sが、さまざまなベンチマークで異様に高い数字を出せる理由には、最新GPU PowerVR Series 6などに加えて64bit化も貢献しています。

WWDC 2014 で発表された新グラフィックAPI『METAL』も、A7のGPUや64bit CPUコアに最適化することで、同一ハードウェアでも「最大10倍の性能」を実現するという触れ込み。)


Windows 64bit版 Chromeブラウザは、現在は初期テスト版 (Canary、死んで役に立つ炭坑のカナリア版アルファ) と、開発者版 (Dev、いわゆるベータ) として提供中。どちらもあくまで開発者向けのテスト版なので最適化も完了しておらず、また64bit化に伴う不具合が残っている可能性もあります。

特定の条件では速く安全になるといっても、テスト版であることや64bit化のオーバーヘッドで逆に遅くなる場面もあり、一般ユーザーが性能向上目当てに導入するものではありません。OS X 版の 64bit Chrome は未提供。Linux では 64bit OS版が以前から提供中です。