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【政治】

自衛隊「軍隊化」狙う 戦地で他国軍支援 政府が提示

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 政府は、今は「他国による武力行使と一体化する」として、戦闘地域以外に限定している他国軍への支援を、戦地まで拡大することを与党に提案した。憲法九条に基づき海外での戦闘に加わらなかった自衛隊が、本質的に変わることを意味する内容だ。安倍政権は集団的自衛権の問題以外でも、自衛隊を「軍隊」に近づけようとしている。 (金杉貴雄)

 Q 戦闘支援の拡大って大変なことなの。

 A 現在の自衛隊が、全く違うものになる可能性がある。日本は憲法のもとで、他国軍への支援が武力行使と同じとみられる行為を禁じている。戦闘が将来も行われないとみられる「非戦闘地域」に活動を限定してきた。つまり「戦地」「前線」には行かないということだ。支援の内容も武器・弾薬の提供は避け、給油や整備、水・食糧の提供に絞ってきた。

 Q それがどう変わる。

 A 「非戦闘地域」の考えを取り払い、戦闘地域でも自衛隊が他国軍を直接支援できるようにする。政府は三日の与党協議で、新たに活動の可否を判断する「四条件」を示したが、すべてに当てはまらない限り幅広い活動ができることを説明した。この考えなら、日本が直接の戦闘に加わらないというだけで、戦闘中の補給や定期的な武器・弾薬の提供も可能だ。

 Q 与党協議は、憲法の解釈を変えて集団的自衛権の行使を認めるのかが最大の焦点では。

 A まず武力攻撃とは認定できないグレーゾーン事態への対応から議論が始まった。続いて、国連決議などを受けた武力制裁である集団安全保障の問題も話し合った。武力で他国を守る集団的自衛権の議論に入る前に、政府は一体化の新提案を持ち出した。

 Q 一体化と集団的自衛権の関係は。

 A 一体化は集団的自衛権と集団安保の両方に関係する。政府は集団的自衛権を行使する事例として、朝鮮半島有事を想定しているが、戦闘地域で支援できるなら、今の憲法解釈のままでも自衛隊が朝鮮半島に行くことが可能になる。集団安保では、例えばイラク戦争で、市民を巻き込んだ市街戦が行われたバグダッドのような戦闘地域に自衛隊が行く可能性がある。

 Q 日本はイラクに自衛隊を派遣した。

 A 地方都市での人道復興支援を目的に「非戦闘地域」と位置づけて派遣した。しかし、当時の小泉純一郎首相は定義を問われ「自衛隊が活動している地域が非戦闘地域」と苦しい答弁をした。今回の政府提案は、そんな議論をすべて吹き飛ばす拡大案だ。

 Q 戦闘地域での支援は憲法違反では。

 A そう指摘される可能性は高い。イラク戦争当時、自衛隊がバグダッド空港に米兵を輸送したことに、名古屋高裁が二〇〇八年に違憲と判断し、確定している。だから歴代政権は激論を積み重ね、ぎりぎりの一線を引く活動を考え出した。

 Q こんな提案をした理由は。

 A 安倍晋三首相の「本丸」は集団的自衛権の行使容認だが、武器輸出を容認する新三原則を決定するなど「積極的平和主義」の旗を振り、軍事的な役割を拡大するためにさまざまな手を打っている。戦闘地域での支援は相手国から見れば攻撃と同じで、攻撃を受ければ自衛隊も反撃し、直接戦闘に加わる可能性が高くなる。非戦闘地域での活動に徹し、海外で一人も死なず、殺してこなかった自衛隊を戦地で戦う普通の「軍隊」にしようとしている。

 

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