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【政治】

「後方支援」歯止めなき拡大 戦闘地域で武器提供も

 政府は三日、憲法九条に基づき禁じられる「他国による武力行使との一体化」の判断基準を大幅に緩める新たな四条件を与党に示した。海外での国際協力などで自衛隊が後方支援できる活動を増やす目的とするが、これまで認められなかった戦闘地域での他国軍に対する武器弾薬の提供などをできるようにする狙いがある。直接的に戦闘を支援することで相手国の攻撃対象となり、結果的に戦闘に加わることにつながりかねない。

 安倍晋三首相は五月十五日の会見で、武力行使目的で自衛隊が戦闘に参加することはないと明言したが、新たな四条件は首相の発言から逸脱する恐れがある。

 三日に行われた集団的自衛権行使容認などに関する自民、公明両党の与党協議で、政府が示した新たな基準では「戦闘行為との密接な関係」など四条件をすべて満たした場合に限り、自衛隊の活動が戦闘行為と「一体化」すると定義。一つでも該当しなければ自衛隊の支援を可能とした。「戦闘行為と密接な関係」に何が当たるかは明らかではないなど、条件の基準は曖昧で、「非戦闘地域」や「後方地域」といった地理的制限もなくなった。

 これまで行われた自衛隊の海外支援は、他国軍と自衛隊との距離などを考慮して活動内容を判断。非戦闘地域での食料・水の補給や医療支援などに制限していた。政府・自民党は新基準で、戦闘地域で他国軍に武器弾薬の提供や医療部隊の派遣を可能にしたい考え。

 安倍首相も、国会答弁で「何が武力行使と一体化する行為か明確にすることが課題。非戦闘地域、後方地域の概念も含めた検討が必要だ」と、基準を見直す考えを示していた。

 一方、公明党は新基準について「自衛隊の活動範囲が広がりかねない」と反発。この日の与党協議でも、「戦闘行為との密接な関係」という条件について「弾薬が尽きた部隊への補給は、戦闘行為と密接に関係するためできないが、武器・弾薬が足りている戦闘地域の他国軍に定期的に届けることは許容されるか」と追及すると、政府側は「そういうことだ」とその可能性を認めた。

 このため、公明側は「具体的に何ができるのか」と、政府側に事例を示すよう要求。協議後、公明側メンバーは「これは大問題になる。自衛隊は前線に行って、ほとんどのことができるようになる」と懸念した。

<武力行使との一体化> 他国の武力行使に密接に関与すれば、日本が武力行使していなくても「一体」と見なされる考え方。内閣法制局は、一体化しているかどうかは(1)他国軍と自衛隊の地理的関係(2)自衛隊活動の具体的内容(3)他国活動との密接性(4)他国の活動の現況−を総合的に勘案して判断すると説明してきた。自衛隊は海外での武力行使を禁じられてきたため、政府はイラク派遣などでも活動を「非戦闘地域」「後方地域」に限定してきた。

 

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