旅客船「セウォル号」沈没事故を受けて自信喪失状態に陥っている韓国で、与野党議員が驚くべき法案を準備している。名付けて「人格教育振興法案」。韓国社会が「基本的な倫理と道徳の崩壊」(韓国紙・中央日報)にあると位置付けて、事故根絶のためにも、教育で韓国国民の“人格を改造”しようというのだ。そんなことができるのか。
乗客を救助せず真っ先に逃げ出した船長に、利益だけを追求して安全を無視した海運会社、官僚と業界のズブズブの癒着体質…。
韓国社会では、何の罪もない高校生ら280人以上が亡くなった沈没事故について、「職業倫理や良心すら麻痺した、卑怯(ひきょう)で、無責任な人たちが起こした」(東亜日報社説)とする見方が根強い。
さらに、事故関係者だけではなく、韓国社会そのものの見直しを求める声も相次いでいる。
延世(ヨンセ)大学のキム・ジョンチョル教授は先月29日、中央日報への寄稿で「無能な国と、自身の権利実現には執拗(しつよう)だが共同体的生活に対する配慮は惜しむ荒廃した社会」と国民に反省を求めた。
こうした中で浮上したのが人格教育振興法案だ。沈没前に乗客を見捨てて逃げたイ・ジュンソク船長の名を冠した「イ・ジュンソク防止法」の別名も。失敗を糧にした“国民総懺悔(ざんげ)法案”とも読み取れる。