先月出版されたガイトナー前米財務長官の回顧録では、新たな火災にすぐ対応できるよう常に待機する火消し役としての同氏の姿が描かれている。ガイトナー氏が最初に受けた試練は1994年に起きたメキシコ金融危機だった。その後、タイ、韓国、ロシアと続いた危機において経験を積んだ。ガイトナー氏は自らの経験を踏まえ、あらゆる火種に気を配りながら、何かあれば大量の水で消火活動を続けるよう注意を促している。
こうした比喩表現には多くの誤りがある。問題とされる火災とはハリケーンや地震のような自然災害でない。人災だ。ガイトナー氏は火事の現場に駆けつける度に同じ放火犯のグループに出くわしても、対応しない。
消火のために使うのは冷水ではなく、そもそもの火事の原因である信用を浴びせることだった。火種となるマッチや燃料の入手を制限したり、防火帯を設けたりするほうがよいのではないだろうか。消防団のような火消し役だけでなく、警察のように取り締まる役割も必要なのではないか。消防ホースと同様に手錠も便利な道具になるだろう。
■金融危機は国内政情の結果
一方、チャールズ・カロミリス氏とスティーブン・ヘイバー氏の共著は別の切り口から金融危機の原因を示した。この本はガイトナー氏が取り上げようとしなかった疑問を提示している。金融危機はなぜ米国やその南の隣国であるメキシコで頻繁に起こり、カナダではほとんどみられないのか。
イングランド銀行(英中銀)のカーニー総裁は世界金融危機への対応で正当な評価を得ている。だが、評価のカギとなる要因はカーニー氏自身にあるのでなく、同氏がカナダ人だということや、過去に総裁を務めた銀行がカナダ中銀だったことにあるのではないか。
天候がカナダの安定に関係しているのではないかという見方もある。ヘイバー氏は天候と政治体制の関連に関する論文を発表したことがある。
ヘイバー氏が共著者のひとりである新著には、金融危機は国内の政情の結果として起きたという見方が書かれている。この本は銀行と規制当局の関係を「銀行取引をめぐるゲーム」で表現している。政治的な思惑により、競争と協調の間に引かれた暗黙の妥協線が、金融システムを形成する要素になっているというのだ。
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