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ライブに電車…変貌するショッピングモール集客戦略とは

産経新聞 5月31日(土)9時12分配信

 大型ショッピングモールがエンターテインメント施設などで集客力を高める戦略を展開している。インターネットで簡単に買い物ができるようになり、消費者の購買欲を「モノ」だけで刺激するのは困難。エンタメで得る体験などの「コト」をアピールしなければ、集客に直結しないからだ。一方、初ものテナントで話題を喚起する手法も根強く、消費者の志向がショッピングモールを変化させ続けている。

■ネットに対抗

 平成25年12月、千葉市にイオンの旗艦店「イオンモール幕張新都心」が開業した。最大のウリは体験の提供。仕事を疑似体験できるテーマパークや東映ヒーローワールドのほか、一般店舗でも体験を楽しめる。長時間滞在する客も多く、飲食店街は好調という。

 モールのエンタメといえば映画館やゲームセンター程度だったが、ここ数年、イベントや体験に重点を置く施設が増えている。ネットで口コミを調べ、発注すれば家まで届けてくれるネット通販の簡便さに対抗し、客に足を運んでもらい買い回りにつなぐ考えだ。

 平成20年開業の阪急西宮ガーデンズ(兵庫県西宮市)もその一例。開業から4期連続の増収を支える要因の一つが、屋上スカイガーデンの無料イベントだ。

 昨年開催した音楽ライブは約200回で累計8万人を動員。大物アーティストのプロモーションも多く、ライブ会場として地域に定着した。「ファン開拓につながる。CD購入率も比較的高い」と音楽業界関係者からも好評だ。同店の奥土恵館長は「ネットで何でも手に入る時代。物販だけでなく、楽しい時間と空間を提供しないと生き残れない」と指摘する。

■ライブに電車

 東急不動産が運営する「あべのキューズモール」(大阪市天王寺区)もライブイベントに注力する。昨年度下期から回数を倍増させ、年間約160回。人気バンドでは1万人を動員することもあるという。

 イベント効果の後押しもあり、開業3年目も売り上げは堅調だ。来館者数は平日約6万人、土日には約11万人。「常にイベントがあるというイメージが浸透し、顧客に期待感が生まれている。効率優先の昔とは異なり、イベントの機能は重要だ」と、東急不動産SCマネジメント・あべのキューズモール総支配人の神津秀人氏は話す。

 鉄道会社の持ち味を生かしたのが3月12日にリニューアルした京阪電気鉄道の「くずはモール」(大阪府枚方市)。引退したテレビカーを展示するミュージアムは本格的な運転体験もできる。「ネットにない、リアルな感動体験を味わえる」と京阪流通システムズの上野正哉社長。鉄道マニアはもちろん、親子連れなどでにぎわっている。

■地方はブランドで勝負

 その一方、地方都市ではブランド集積によるカンフル剤効果が顕著だ。和歌山市に3月オープンした「イオンモール和歌山」は、H&Mやフォエバー21といった人気海外ブランドなど6店舗を導入し、大阪都心部の施設に対抗する。

 「和歌山から大阪へ買い物に行く人が多かった。大阪に負けないテナント構成で足止めにつなげたい」(イオンモール和歌山)という。狙いは奏功し、平日でも約3万人が来館するなど予想以上の客が訪れている。

 関西では今秋、京都市にイオンモール京都桂川、大阪府和泉市に三井不動産のららぽーと和泉(仮称)が開業する。ショッピングモールの主戦場が都心から郊外、準郊外へと広がる中、これらのモールが主軸にするのは体験か、それともブランドか。集客戦略は重要度を一層増している。(ライター 橋長初代)

最終更新:5月31日(土)12時53分

産経新聞

 

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