「教育費やマイホーム資金をためてくれていると思って、私は月8万円の生活費で頑張ってきたのに」。専業主婦Bさん(37)は憤慨していました。長男が小学生になる4月を前に、家計の主導権を握る会社員のご主人(38)に貯蓄がどのくらいあるのか聞いてみたところ、「手持ち資金をかき集めて100万円くらい」。慌てたBさんはご主人を連れ、私のところに相談に来たのです。
ご主人の手取り月収は31万3000円。このうち8万円をBさんに渡し、食費や日用品、服、理美容、娯楽など日々の暮らしで使うお金を賄っています。家賃や水道光熱費、通信費、生命保険料、教育費など月単位で支払う費目はご主人の給与口座で引き落とし、小遣いは5万円です。Bさんは決められた生活費で足りない買い物がある場合は、その都度ご主人に頼まなければお金がもらえません。収支を洗い出してみると、毎月全額を使い切ることなく4000円ほど黒字を出しており、うまくやりくりできていました。とはいえ余った額も翌月以降、予定外で発生するお子さんの出費に消えているため、生活費から貯蓄はしていません。
一方のご主人は支出が25万8000円に上り、Bさんに渡す生活費を除いた収入だけだと2万5000円の赤字です。出費のほとんどが固定費で金額が読めますから、月収の範囲で賄えるよう無駄を抑える努力はできたはずです。しかし「自由に飲みに行ったり、好きなものを買ったりできないと働く楽しみがなくなる」とセーブする考えはなく、足りないぶんはボーナスで補填していました。100万円の貯蓄も積極的にためたというより、ボーナスの残りなのでしょう。
夫婦が別々にお金を管理していると、互いの懐具合と家計の全体像が見えにくくなる――。こうしたケースは2013年8月26日付「『財布は別々』貧乏の予感…新婚夫婦救った決断」で紹介したように、共働きの家庭で起こりがちです。しかし夫婦のどちらかが働いていない家庭でも同じような構図に陥ることはあります。生活費や小遣いを相手に渡し、一家の貯蓄や使い方について話し合うこともなく使い切ってしまうような場合です。