世間はiOS8の話題で持ち切りですが、個人的に3Dプリントがマイブームです。
最近、DMMが新たにはじめたサービスDMM.makeの3Dプリンターサービスを利用して、3Dプリント初体験をしてみたので、その雑感を。
思い立ったのは5月のはじめ、Amazonで買ったO'Reillyの3D Printing Handbookを読んだ頃に遡ります。
この本が非常に素晴らしい内容で深く感銘を受けたとか、そういう訳ではないのですが(本自体はとても良くまとまっていて参考になりましたが)、かなり以前からいつか3Dプリンターで何か作ってみたいなぁ、と思いつつも何も進めていない事を思い出し、とりあえず何かしら5月以内にプリントする事を目標に、3Dプリントに手を付ける事にしました。
- 何を作るか
- さて、3Dプリントすると言っても、実際何をプリントするのかが問題です。
丁度その頃に関わっていたプロジェクトで、iPod touchのフロントカメラの画角を広くしたいというマニアックな課題があり、家に転がっていたiPhone用の広角レンズをiPod touchに付けようと試行錯誤していました。
当初、レンズを両面テープで貼り付けたり、針金を曲げて固定したりしていましたが、すぐ外れる。というより見た目が汚い。
という訳で、この広角レンズをiPod touchのフロントカメラにイイ感じに装着するためのアタッチメントを製作する事にしました。
こちらが、完成イメージのスケッチです。
こんな感じでiPod touchを表裏から挟み込み、かつレンズが嵌る穴が空いている造りを考えました。
非常に簡単そうな構造だと思ってました。そう、この時までは。 - iPod touch採寸
- 次に設計図を製図するためにiPod touchの正確な寸法を測る必要があるので、ノギスを購入しました(¥800)。
で、ノギスを使ってiPod touchの各所のサイズを計測したのですが、これが結構辛い。ミリ未満の単位を測るのが目がキツいのです。しかも全然正確に測れている気がしない。
という訳でAmazonで探したところ、デジタル表示のノギスが¥1200で売っていたので、追加で購入しました。最初からこれにしておけば良かった。
- 3Dモデリング
- 大方サイズも測り終え、いよいよ3Dモデリングを開始しました。
3Dモデリングは、1年ほど前に挑戦して挫折したCheetah3Dというアプリを持っていたので、これを使って再度トライする事にしました。
久々に使ってみるも、使い方がまるでわからずひたすらチュートリアルをこなす日々がしばらく続きました。
チュートリアルの手斧。
前回挫折した時はこの手斧さえ作れなかったので、随分進歩したものです。
チュートリアルの何かのキャラクター
チュートリアルを一通り終えると、何となく作りたいものに近い、それっぽいモデルが作れるようになってきました。
しかし、どうもCheetah3Dでは上手くいかない。なぜならCheetah3Dには物理的なサイズの設定が無いので、あくまで相対的なサイズでしかモデルが作れず、3Dプリントを行う最終段階では別のアプリで物理的なサイズ設定を行う必要があったのです。(多分)
ここまでCheetah3Dで頑張ったものの、もっと3Dプリンタに適したモデリングツールがあるのではないかと色々調べたところ、どうもAUTODESKの123Dが良さそう。
前から存在は知っていたものの無料だし、有償のCheetah3Dの方が行き届いているだろうと目を瞑っていました。
123Dのチュートリアル動画を一通り見て目が覚めました。少なくとも自分がやりたいモデルに関しては十分すぎる機能を持っていて、なおかつ使いやすい。何しろ3D特有の良く分からない言葉(モディファイアとかキャトマルとかハードエッジとか)が少なく、Cheetah3Dよりもずっと直感的に操作が出来ます。
乗り換えて1時間くらいで、これくらいのモデルはすぐに出来ました。
あまりに使いやすいので、もうちょっとデザインを凝ってみて最終的なモデルはこのようになりました。一からこのモデルを作りなおしても1時間くらい。123D素晴らしい。
- 3Dデータ入稿
- モデルが出来たらSTLファイルを書き出して、DMM.makeに入稿します。
入稿すると一旦預かり状態になり、3Dプリントが可能かどうかのチェックが入ります。翌日すぐにチェック完了のメールが届いてました。
造形が可能な素材毎に価格が表示され、今回はナイロン(ポリアミド)という石膏の次に安い素材を選択しました。¥2556。
他にもABSやアクリル、ゴムライク、ステンレス、チタンなど選べる素材は沢山あります。プラチナ(100万円!)なんていうのもありました。
- 完成
- およその完成目安は7〜9日間となってましたが、待つこと4日目には届きました。かなり厳重な梱包で。
実際出来上がったのがこれ。表面の質感がスウェードっぽく想像と大分違いましたが、ほぼほぼモデルした通りのモノが出来上がりました。
広角レンズを嵌めて、iPod touchに装着。かなりイメージ通りです。
- 反省点
- 実際にプリントして実物が出来ると、色々とアラが見えてきます。
まず、いきなり致命的な問題として、iPod touchの電源ボタンと干渉する。というか電源ボタンが押せない。更に液晶部分にかぶっていて、スクリーンが見辛いです。
折角なので、社名のMobile and Designのロゴを入れてみましたが、細かすぎて読めませんでした。
最後に造形がイマイチでした。これはデザインのセンスなので如何ともし難いのですが、3Dモデルの段階ではかなりかっこいい気がしてたんですが、見れば見るほどイマイチな感じです。
今回はDMM.makeに依頼しての3Dプリントなので、3Dモデルを直してすぐにもう一度3Dプリント。という訳にはいかないのですが、手元に3Dプリンタがあればすぐに問題点を改善して再び3Dプリントし、と高速なサイクルでのプロトタイピングが出来るんでしょうね。
うーん。3Dプリンタほしいです。 - 所感
- 実際に3Dプリントをしてみての感想ですが、自分が思い描いたものがリアルに手に取れる形に仕上がるというのは、自分のようにソフトウェアやネットに従事している者にとっては非常に新鮮な体験で、何とも言えない不思議な感覚でした。
Cheetah3Dで躓いたものの、ツールを123Dに変えてからは本当にモデリングが簡単で楽しく、自分のそれまで持っていた3Dモデリングのハードルとは相当なギャップがあったと思います。
3Dプリンターをやりたいけど、モデリングが・・という声は非常に多く(自分もそうだったし)、3Dプリンターの普及の足枷になっている大きな要因だと思いますが、適切なツールを選んで初歩的な使い方を教えてもらえる環境さえあれば、特に専門的な知識がなくても3Dプリンターを使ってのものづくりは誰にでも出来るものだと思いました。
以上、はじめての3Dプリンター体験でした。