「今こそW杯に足跡を残すとき」、中田氏が語る

AFP=時事

【AFP=時事】元サッカー日本代表の中田英寿(Hidetoshi Nakata)氏がAFPのインタビューに応じ、W杯ブラジル大会(2014 World Cup)に臨む日本代表は、結果を出すよりも、50年後の青写真を描くことに専念すべきだと話した。

ブラジルW杯に出場する日本代表の23人

 日本サッカー協会(Japan Football Association、JFA)の大仁邦彌(Kuniya Daini)会長は、2002年の日韓大会で初めてベスト16進出を果たし、2010年の南アフリカ大会(2010 World Cup)でも決勝トーナメント1回戦に駒を進めたアジア王者の日本が、今大会で8強入りを果たすことを目標に掲げている。

 1次リーグで、コロンビア、コートジボワール、ギリシャと同組のグループCに入った日本は、1998年のフランス大会から5大会連続のW杯出場を果たしている。

 アジア初の現代サッカーの象徴として名声を手に入れた中田氏は、2006年に29歳の若さで引退を表明したが、今こそ日本代表が「W杯に足跡を残すときだ」という。

 W杯開催期間中、サンパウロ(Sao Paulo)で日本の伝統文化を伝えるカフェをプロデュースする中田氏は、東京のブラジル大使館でレセプションに出席し、「今後50年間のアイデンティティーを確立しなければならない」と話した。

「僕も選手でした。選手としては、どんな形でも良いからすべての試合に勝利したい」

「それは理解できます。しかし、代表チームとしては、歴史とアイデンティティーを構築し始めなければならないときだと思います。ブラジル、イタリア、ドイツ、スペインといった名前を聞いたとき、どういうサッカーをするのか想像できますよね。イメージがあるのは、長い時間をかけて彼らがそれを確立してきたからです」

 日本代表としてW杯の3大会に出場した中田氏は、1998年大会で赤毛の生意気な新人として名をはせ、イタリア・セリエAのペルージャ(Perugia、当時)に移籍すると、イタリアでプレーした7年間のうちに、ASローマ(AS Roma)でリーグ優勝を経験した。

 2006年のドイツ大会で日本が無念の1次リーグ敗退に終わると、中田氏はすぐさま現役引退を表明し、世間を驚かせた。


■中田氏、引退は「後悔していない」

 ブラジルW杯に沸く人々の姿を見ても、中田氏は自身の決断が間違っていたとは思わないという。

 現役時代、日本代表として77試合に出場し11得点を挙げた37歳の中田氏は、「一つ後悔し始めたら、人生のすべてのことを悔いなければならない」と語る。

「大きな大会での試合を見ると、いつもプレーしたいと思います。でも、僕の決断はそんなに簡単でも、軽いものでもなかったんです」

「もちろん、死ぬまでプレーしたいとは常に思っていますが、引退を決めたとき、プロとして再びプレーすることは考えない方が良いと思いました」

 日本のスタイルアイコンで、「アジアのデビッド・ベッカム(David Beckham)」と呼ばれることもある中田氏は、引退後に誰も想像しなかった道を歩んだ。

 ローマ、パルマ(Parma FC)、ボルトン・ワンダラーズ(Bolton Wanderers)などでプレーした経験を持つ中田氏は、3年をかけて世界各地を巡り、そこで自国についてよく知らないことに気付いてからは、日本文化に身を置いて、海外へ発信する活動に尽力するようになった。

 中田氏は、この活動を次のように説明した。

「ここ5年間は日本文化を学ぶため全国各地を回って、農家や職人、杜氏(とうじ)、そして寺社仏閣を訪ねてきました」

「21歳でイタリアに渡ったため、日本文化をよく知らなかった。そのため、日本各地を巡ろうと思ったんです。日本文化について最高のスポークスマンになりたいんです」

 中田氏は今夏、ブラジルで日本代表が新天地を切り開く様子を見届けるとしており、1998年の1次リーグ全敗に終わった日本が大きく進歩していることを信じている。

「日本はW杯の過去5大会に出場してきたので、今ではそれが普通のことだと思われている。もはや特別なことではないんです」

「チームにとっても同じで、W杯に出場するだけで満足できるわけがありません。今こそW杯に足跡を残し、次のステップに進むときです」

【翻訳編集】 AFPBB News

AFP=時事

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