【マニラ=佐竹実】海外の投資マネーがアジアの債券市場に流入している。アジア開発銀行(ADB)は4日、2014年3月末時点の東アジアの現地通貨建て債券残高が7兆6440億ドル(約780兆円)になったと発表した。域内の経済成長を反映し、前年同月末に比べ9.5%増えた。昨年に落ち込んだ海外投資家の国債保有比率が高まっており、ADBは「投資家のリスク許容度が戻った」と分析している。
ADBは四半期ごとに日本を除く東アジア(中国、韓国、シンガポール、マレーシアなど9カ国・地域)の現地通貨建て債券発行残高を発表している。14年3月末時点では、残高ベースで全体の6割を占める中国が前年同月末比で10.5%増。インドネシアでは同21.1%増、ベトナムは同17.8%増となった。
各国の国債で海外投資家の保有比率が高まっている。インドネシアの場合、昨年9月末時点で31.2%まで下がったが、14年3月末時点は33.6%まで戻した。
米連邦準備理事会(FRB)が昨年5月に金融緩和縮小を示唆して以降、海外投資家はアジアから資産を引き揚げた。債券の保有比率もそれに合わせていったん下がっていたが、警戒感が薄らいだことで成長余地のある域内に再びマネーが流れ込んだ形だ。
域内の企業の旺盛な資金需要を反映し、社債の伸びも目立つ。3月末時点の残高は3兆690億ドルと債券全体の4割を占めた。銀行からの借り入れに頼っていた資金調達の手段が多様化。フィリピンの場合、複合企業サンミゲルなどが活発に社債を発行しており、残高は1年で27.9%増えている。
ただ、社債は国債に比べて海外投資家の保有比率は低い。企業の資金調達を円滑にして経済成長を支えるためにも、社債市場の流動性を高めるなど制度面の整備が求められている。
クーデターが起きるなど政情不安が続くタイの3月末時点の債券残高は2810億ドルで、前年同月末比で5.7%の伸びにとどまった。昨年末と比べた伸び率は1.2%とさらに低くなっている。ADBは「最近の政治の混乱で投資家は慎重になっているとみられ、タイの債券については周辺国の増加傾向に逆行する可能性がある」と予想している。
大和証券DCM部の神田謙一課長は「米国の金融緩和縮小が手堅く進み市場で安心感が広がるなか、高い利回りを求めて社債などに投資する動きが広がっている。特に成長期待が大きいアジアは買われやすい」と指摘する。
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