「2000人減ったのではなく、また2万8000人増えたんです」:自殺対策NPO代表・清水康之氏が語る、自殺対策のいま

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J-WAVEJAM THE WORLD』の2014年6月3日放送分よりピックアップ。

今回は「CUTTING EDGE」のコーナーから、NPO法人ライフリンクの代表・清水康之さんがゲストとしてお話しておられました。話題は、先日政府が発表した2014年度版の自殺白書の件について。

政府は3日の閣議で、2014年度版の自殺対策白書を決定した。それによると、13年の自殺者数は、前年比575人減の2万7283人となり、2年連続で3万人未満となった。自殺者数の減少は4年連続。ただ、若者の自殺率は諸外国との比較でも高水準で推移しており、白書は若年層を対象とした対策の必要性を訴えている。

自殺者数4年連続減=2万7000人、若年層は深刻

 

NPO法人 ライフリンク

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【しゃべるひと】

 

2010年より市町村区単位で対策を行えるようになった

津田大介:清水さんは鳩山・菅政権時代に政府の自殺対策の立案にも関わったそうですが、まず2年連続で自殺者が減少したことについてどんな対策が功を奏したとお考えですか?

清水康之:そうですね、2年連続というよりは2010年から4年連続で減少しているということなんですが、1998年に自殺率は高止まりをしていたのが、ここ数年間は減少していると。

これは2006年に「自殺対策基本法」が遅ればせながらできて、、

津田:じゃあ、これは2006年にできたことが2010年くらいから効果が出始めて減少傾向が続いているという理解でよろしいでしょうか?

清水:そうですね。

自殺対策に取り組むことが政府、自治体の責務になって、国が作った指針・自殺総合対策大綱が市区町村の現場におりはじめたのが2008年頃なので、そうした影響が非常に大きかったのではないかと思います。

津田:基本法が施行されて、自治体までおりてきたことで何がいちばん変わったんでしょうか?

清水:一番変わったのは、データが出るようになったことです。

自殺の統計というのは警察庁が持っているものを政府が公表する、ということになってるんですけど、2010年までは全国単位でのデータで詳細なものが公表されてこなかったんですね。

例えば新宿区なんかでは20~30代の自殺が多くて、あるいは秋田の由利本荘市では70歳以上が多くて、という具合に地域によって自殺で亡くなる人の年代・職業・要因・同居人の有無などが違うわけですけど、そうした細かい市区町村単位の情報が公表されてこなかったんです。

それが2010年から公表されるようになって、それによってそれぞれの地域で自殺の実態に則した対策を行えるようになったというのが非常に大きかったと思います。

 

自殺者が「本質的」に減ることはない

津田:なるほど。

これでも、減ってきているとは言いつつも年間2万7000人以上の方が自殺で亡くなっているというのは、他の先進諸国と比較した場合に日本はどんな特徴があると言えますか?

清水主要先進国のなかでは突出して高く、アメリカの2倍、イギリスやイタリアの3〜4倍という高さです。1日平均75人ですから、未だに非常事態が続いているという認識です。

津田「減っているから安心」というわけではなく、そもそもが異常事態だと。

清水:その通りです。

しかも「減ってる」と言っても年間ベースで見れば減っているというだけであって、本質的な意味では自殺で亡くなる方の数って減ることがないんですよね。

津田:それはなぜですか?

清水:例えば、失業者数であれば失業状態にある人が増えれば「失業者」は増えますよね?

津田:そうですね。

清水:でも、その人たちが就労すれば失業者数は減るわけです。

まさにこれは増えたり減ったり、という感じなんですけど、自殺で亡くなった人というのは一度亡くなったらもう二度と生き返ってくることはないわけです。

津田:あっ、たしかにそうですね…。

清水:たしかに3万人だった年間の自殺者数が翌年、2万8000人になったとしたら、年間ベースで見たら2000人減ってるけど本質的な意味ではまた2万8000人増えたってことなんですよ。

津田:なるほど、これは全く数字の捉え方を変えなければいけないということですね。

清水:そういうことです。

 

 生きる「意欲」を削がれている若者

津田:今回、閣議決定された自殺対策白書のデータをご覧になったと思うんですが、何かしら顕著なデータや気になった点はありましたか?

清水:一昨年から去年の変化、というよりここ数年のトレンドでいうとやはり若年世代の自殺率が他の世代より減少幅が少なく、依然として深刻な状態にあると言えます。

津田:15~34歳くらいの若年世代が自殺を選んでいる、と。これ要因はどこにあるんでしょうか?

清水:若者の自殺の実態調査をしたんですけど、例えば中高年の男性の自殺に見られような明確な経済的な要因とか、仕事上の問題があるといったことよりも、もちろんそういった方もいますが、他の世代と比べて割りと多いなと思ったのが、生きる意欲が削がれていって、生きる意欲がある人から見ると「大したことないのに…」というような要因で自殺にまで追い込まれてしまう。

例えば「就活自殺」というのも話題になりましたけど、生きる意欲のある大人からすれば「仕事が見つからなかったくらいで…」って思うかもしれませんが、もともと生きる意欲が削がれている人からすると、「そこまで苦労してまで生きていたくない」みたいな。

今日まさに、関連のデータとして若者白書のなかでも「自分に満足している」という13~29歳の若者が50%切っていて、他の先進諸国と比べて日本が一番低かったと報道されていました。

生きることの意欲、「促進要因」がそれよりも生きることを阻む「阻害要因」の方が相対的に上回ったときに自殺のリスクが高くなります。

ですので、借金・過労・いじめなどの阻害要因を取り除くだけでなく、生きる意欲を持てるようなそういう社会にしていかなければならないし、教育においてもそうしたことを意識しながら子どもたちに伝えることが大事なのではないかと思います。

 

自殺は「他人事」ではなく、当事者意識を持とう

津田:はい。

困っている厳しい環境にある方を社会的に包摂するか、ということでもあるんですが、自殺の問題って単に自殺だけでなく例えば福祉の問題とか、生活保護を受けたいんだけど「若いから働けるでしょ」みたいな水際作戦で受けられなくて自殺を選んだりする方もいらっしゃると思っていて、そういう他の兼ね合いでの課題はどのあたりにありますか?

清水:自殺の背景にはまさにいまおっしゃったような生活苦の問題や、仕事上の問題、いじめの問題などさまざまな背景・要因があるので、それぞれの関係性をしっかりと見極めながら対策を連動して行っていくということが大事だと思います。

とりわけ、若者でいうとそもそも「生活が困ったときにどうすればいいか」ということを学校でちゃんと伝えていく必要があると思います。

あるいはブラック企業に入ってしまった場合は、自分にどんな権利があって、誰にどうやって助けを求めればいいのか、ということを知らないまま実社会に放り出されている状況なので。

津田:それは、なかなか「どこで教えればいいんだろう?」って思いますもんね。

清水:そうですね。

これも、一昨年自殺総合対策大綱を改定したときに、生活上の困難やストレスに直面したときに対処できる能力を子どもたちに伝える、ということが謳われたので、これがいまは十分に伝わってないのでそうした部分もしっかりケアしていくということが大事だと思います。

津田:人を雇用する企業とか、もしくは家庭、友達が悩んでいる、というレベルであるとできることってどういうことでしょう?

清水「自殺は自分とは関係ない問題だ」、って思われですし、思いたくなるのですが、実際は毎年3万人近くコンスタントに亡くなり続けているわけですよね、日本社会は。

遺族の多くが「まさか自分の家族が自殺で亡くなるとは思わなかった」と言うんです。

その「まさか」が一定数起き続けているので、いつ周りに起きるか分からないというわたしたち自身の問題という捉え方をして関心を持っていく必要があると思います。

津田:いまは減少傾向にはなっていますけど、しかしまだより進めていって2万人、1万人を切っていくために一番求められることはなんですか?

清水:一番は、「万能薬を求めない」ということだと思います。

万能薬はないので、実態をしっかり分析してその結果に基づいて対策を立てて、その施策ひとつひとつをしかるべき連携のもと確実に実行していって、それを検証してまた対策に還元していく、そうした自殺対策のPDCAサイクルを回していけるような状況を作っていかないといけないと思います。

 

自殺で亡くなった人というのは一度亡くなったらもう二度と生き返ってくることはないわけです。」 ここにはハッとさせられました。年間単位で数字が変動して「増えた」だの「減った」だの言いますが、そもそも自殺者は二度と戻ってきません。そういう意味で「減る」なんてことは本質的にあり得ないんですね。ここは数字に対する感覚をもう一度見直していく必要がありそうです。

 

ライフリンクのサイトでは「相談ナビ」なるものも設けられています。

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こうした事例や相談できる場所を知っておく、というのは安心を得るためにも非常にたいせつなことです。言葉は悪いかもしれませんが「もっと下がいる」と思うことによる安心は少なからずあります。もっと周りを見て、広い視野で社会を見つめるというのも良い意味で「逃げる」ための1つの手段です。

 

 

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就職は、世間で言われてるほど重要じゃない。日本では、働いてない人や、大学を卒業して就職できなかった人を過剰に下に見る傾向があるけど、別に働いている人がエライなんてことは全然ない。

仕事と人生を同一視する人が多いけど、僕はそんな必然性は全然ないと思っている。仕事が全然うまくいかなくても(就職さえしなくたって)、楽しい人生を送ることはできる。日本では、仕事を重要視していない人に対する風当たりが強いけど、そういう世間体を気にしてはダメだ。

 

就活なんて本当にくだらない。どうか、そんなことで思い悩まないで欲しい。

 

 

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