NATO:露へ配慮、東欧に常設部隊展開せず

毎日新聞 2014年06月04日 10時48分

 【ブリュッセル斎藤義彦】北大西洋条約機構(NATO)は3日の国防相会議で、オバマ米大統領が同日提唱した東欧などの防衛強化策「欧州再保証イニシアチブ」を大筋で支持した。強化策は米軍がローテーション方式で駐留する案。この方針は、NATOがロシアを「敵でない」と定義し、東欧に常設部隊を展開しないと約束した1997年のロシアとの合意を守る措置で、ロシアに配慮し、関係正常化へのメッセージを送るものだ。

 国防相会議では、米軍だけでなく複数の加盟国の軍が3カ月を超えない期間で数千人規模で展開するとした強化策を、大部分の国が支持した。ただポーランドなどは万単位の常設部隊の駐留を求めており9月の首脳会議に向け協議を継続する。

 冷戦終結後、NATOはロシアとの関係正常化を模索。97年に「基本文書」を締結し、「互いに敵とはみなさない」と宣言。互いが「主権」、「領土的一体性」を守ることを前提に、対話の枠組み「NATOロシア理事会」の設立で合意した。同時に、NATOは東欧への拡大を視野に、ロシアに対する融和策として新規加盟国に核兵器や、実質的な戦闘部隊を駐留させないことを約束した。

 NATOは、今回の強化策はロシアとの97年の「基本文書」に違反しないとの立場だ。オバマ政権は、東欧・バルト3国の防衛力強化要請に応えると同時に、ロシアとの約束を順守する妥協案を提示した。

 NATOのラスムセン事務総長は、ロシアがウクライナ・クリミア半島編入で、合意を「破った」と明確に非難したうえで、「NATOは国際法を守る組織で、すべての対策はロシアとの合意の枠内で可能だ」と述べた。NATOは国際合意を守る姿勢を強調、ロシアにも他国の主権の尊重など国際法を守るよう促した形だ。

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