(2014年6月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ジャン・クロード・ユンケル氏(中央)はルクセンブルク前首相で、ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)の議長も務めた〔AFPBB News〕
ジャン・クロード・ユンケル氏が次の欧州委員会委員長になるとの考えは、英国人の間に奇妙で不合理な怒りを呼び覚ます。筆者もこの話には怒っているから、気持ちが理解できる。
彼のうぬぼれや連邦主義、つまらないジョークなど、ルクセンブルクの首相だったユンケル氏にはどこか、英国人の気にさわるところがあるのだ。
とはいえ、不合理な怒りに基づいて方針を決めるのはよくない。落ち着いて考えてみれば、それほど騒ぎ立てることでもないのではとも思う。そもそも、欧州のどの問題に優先的に取り組んでいくかを欧州委員長が決める時代は、恐らく終わっている。欧州の重要な決断がブリュッセルではなくベルリンで下されていることは、ユーロ危機の際に非常に明白になった。
現委員長のジョゼ・マヌエル・バローゾ氏は良識のある人物だが、使い走り兼スケープゴートという役回りになってしまった。ユンケル氏ならどちらの役も見事にこなせるだろう。だとしたら、どうして彼の就任について騒ぐ必要があるのだろうか?
その答えの1つは、欧州委員長というポストには――欧州連合(EU)で最も重要とは言えないものの――まだ重みがあるという点に求められる。それなりに信望に基づく権威があるのだ。また、欧州委員会はEUの立法過程をスタートさせる「唯一の法案提出権」を握っている。従って、ユンケル氏が委員長に就任すれば、ブリュッセルのEU官僚を破滅的な方向に向かわせる恐れがあるわけだ。
欧州の有権者は本当にユンケル氏を新委員長に選んだのか?
しかし、ユンケル氏の委員長就任を阻止しなければならない最も重要な理由は、欧州の民主主義を守ることにある。同氏の支持者は、民主主義的な議論はすべて自分たちの味方だと思っているが、それは大間違いだ。
ユンケル陣営は次のように指摘している。ユンケル氏は、先日の欧州議会選挙で最大会派になった欧州人民党(EPP)が承認した欧州委員長候補である。従って、同氏を拒むことは欧州の有権者を侮辱することになる――。
ドイツの大手メディアグループ、アクセル・シュプリンガーのマティアス・ドプフナー最高経営責任者(CEO)は同社発行の大衆紙「ビルト」で、「ヨーロッパ人がユンケルを選んだことは明白だ」と論じている。