准看護師遺体:元同級生の女 中国はブラジル強制送還か
毎日新聞 2014年06月03日 15時00分
大阪市西成区の准看護師、岡田里香さん(29)が遺体で見つかった事件で、元同級生の日系ブラジル人の女(29)が中国公安当局に拘束されてから3日で1週間を迎えた。大阪府警は事件のカギを握る人物として外交ルートを通じ女の引き渡しを求めるが、外交筋や専門家の間では、母国のブラジルに強制送還されるのではとの見方が広がっている。
女は5月3日、岡田さん名義のパスポートで上海に出国した。27日昼過ぎ、現地の日本総領事館に出頭した後、不法入国の疑いで中国公安当局に身柄を引き渡された。
日中外交筋は「女はブラジルに送還される可能性が高い。中国側はこれまでも、日本で犯罪に関わった疑いがある外国人を引き渡したことがない」。日本の外交当局者も「日中間には犯罪人引き渡し条約がなく、原則通りブラジルに送還されるだろう。殺人事件に関与した可能性があっても事情は変わらないと思う」としている。
中国の司法に詳しい一橋大の王雲海教授(比較刑事法)は「中国では公安当局が最大2カ月、さらに検察当局が最大1カ月、身柄を拘束できる。今回も中国の手続きが終わるまで時間がかかる可能性がある」と話す。不法入国罪の場合、検察当局が不起訴処分にして母国に強制送還することが多いという。
中国側が日本に女を引き渡すことはないのか。王教授によると、中国では身柄の引き渡しを裁判所が審理する仕組みという。中国の最高裁が引き渡しを相当と認めたうえで、上海の裁判所が引き渡しの理由となる事件を審理し最終決定する。
府警は岡田さんのパスポートを不正取得したとして旅券法違反などの疑いで女の逮捕状を取っている。王教授は「重罪とは言い難く、中国の裁判所が特例で引き渡しを認めるか微妙だ。岡田さんの事件への関与の疑いを、日本側がどれだけ中国側に説明するかが重要だ」と指摘している。
冷え込んだ日中関係が影響するとの見方もある。早稲田大の小口彦太教授(中国法)は「中国では刑事司法手続きにも政府の意向が強く働く。現在の日中関係を考えると、政治的な思惑が絡む懸念もある」と語った。
捜査関係者によると、岡田さんの遺体は3月下旬、宅配便で東京都八王子市の女の自宅に配送され、遺体を梱包(こんぽう)した遺留品からは女の指紋が採取された。府警は女が遺体の遺棄に関与しただけではなく、死亡の経緯についても何らかの事情を知っているとみている。