安全後進国:知識・経験不足で避難訓練さえできない韓国人

【特集】安全後進国

■年に4回の避難訓練を行うモルガン・スタンレー

 2001年9月11日に起きた米国同時多発テロの際、世界貿易センタービルに入居していたモルガン・スタンレーは、ビルが崩壊したにもかかわらず、従業員2687人ほぼ全員が助かるという奇跡を起こした。モルガン・スタンレーは普段から、3カ月に1度のペースでマニュアル通りに避難する訓練を行っていた。そのため、従業員は全員、ビル崩壊の恐れがあるときの避難経路を熟知しており、これが緊急脱出に決定的に寄与した。モルガン・スタンレーは、9・11の後「訓練を繰り返して多くの汗を流せば、それだけ実際の状況で流される血は減る」という教訓に基づき、全世界に避難訓練を拡大した。モルガン・スタンレーは、11年の東日本巨大地震でも、東京支店に勤務していた従業員1200人全員が助かった。

 米国政府は、全ての企業がモルガン・スタンレーと同水準の避難訓練プログラムを準備するよう勧めている。米国労働省の傘下にある労働安全衛生局(OSHA)は01年、全ての企業・機関に標準避難マニュアルを配布した。OSHAの関係者は「整理されていない避難訓練は、混乱や負傷を招く恐れがある。これを防ぐためにマニュアルを配布した」と語った。マニュアルには、視覚・聴覚障害者に避難状況を伝える手段まで明示されており、年齢などに基づく避難の順序まで定めてある。

■公務員の避難マニュアルはあるが…

 韓国政府は、公務員のための避難訓練マニュアルは持っている。ソウル中央政府庁舎の関係者は「避難訓練を年に4回実施し、ほとんどの公務員は、緊急時の避難経路を熟知している」と語った。

 しかし、企業に対して、安全マニュアルを備えて訓練するよう勧告する努力は不足しているのが実情だ。米国の標準マニュアルは25ページもあるが、韓国の消防防災庁が作った「超高層建築物災難事故対応マニュアル」は3ページしかない。しかも、このマニュアルすらきちんと普及していない。

 こうした現実を改めるため、企業と政府が避難標準マニュアルを作り、事前教育を含む避難訓練を定期的に実施すべきだと専門家らは指摘している。

 釜慶大学地球環境科学科のカン・テソプ教授は「事前教育などのない形式的な訓練は、誤った情報しか与えかねず、訓練をやらないよりも悪い。確実なシナリオがある避難訓練を周期的に実施しなければ、危機のときに人命を救うことはできない」と語った。

パク・ユヨン記者 , 李信栄(イ・シンヨン)記者
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