安全後進国:知識・経験不足で避難訓練さえできない韓国人

【特集】安全後進国

安全後進国:知識・経験不足で避難訓練さえできない韓国人

 今月15日午後2時、ソウル市内にあるA銀行本店。地震に備えた訓練は、2時ちょうどの非常ベルで始まった。地震が起きたらすぐに机の下に隠れるのが基本だ。ところが2500人に達する行員は、上着などをゆっくり手に取ると、のろのろと非常階段に向かった。行員が通る自動ドアは、何度も開閉を繰り返した。安全に避難できるよう銀行全体の自動ドアを全面開放しておくべきなのに、開放しなかったからだ。非常階段に向かった行員らは、雑談したり携帯電話をのぞいたりしながらゆっくりと歩いた。ある行員が、後ろから来る行員を待つために立ち止まると、行列全体がストップした。2時の訓練が始まる前、ハイヒールを履いていた女性行員数十人は、既にエレベーターに乗って降りてきていた。女性行員らは、歩いて降りてくる行員を待ちながら「私たちの方が賢い」と言っていた。

 A銀行のいいかげんな避難訓練が行われた同じ日、慶尚南道宜寧郡の宜寧小学校でも地震に備えた避難訓練が行われた。児童は、訓練前に1時間ほど教育を受けて訓練のやり方をしっかり覚えた後、実際の状況と同じ訓練を行った。教育を受けた約380人の児童は、サイレンが鳴るとすぐさま、学んだ通り机の下に身を隠した。そして数分後、あらかじめ覚えておいた経路を通って児童・教師全員が広い空き地に避難した。宜寧小学校の関係者は「地震でけがをした児童が出ることを想定し、けが人の搬送訓練も行った」と語った。

 旅客船セウォル号の沈没事故を機に安全に対する意識が高まり、避難訓練を行う事業場が増えている。しかし、避難訓練に対する教育や経験が足りない上、きちんとしたマニュアルもなく、実効性のない訓練が行われている。本紙は、20階建て以上の高層ビルに入居する大企業や金融会社の社員100人に対し「緊急の状況が発生したとき、どのような経路でどこに避難すべきか知っているか」と尋ねたところ、100人全員が「知らない」と回答した。ある大企業の社員は「そのまま降りていけばいいのではないか」と語り、別の大企業の社員は「火災さえ起きなければ、エレベーターを使ってもいいのではないか」と尋ねてきた。各企業は本来、規定上、全社員がどのように避難すれば効率的かについて計画を作っておかなければならない。例えば、20階建てのビルの場合、2階から5階は1番階段で、6階から10階は2番階段で避難する、というように動線を設定しておくべきなのだ。ところがほとんどの企業では、形式的に計画を作っているだけというケースが多く、社員に計画を周知して訓練を行っている企業はほとんどない。

パク・ユヨン記者 , 李信栄(イ・シンヨン)記者
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