June 3, 2014
1973年にアポロ計画が終幕して以来、NASAの予算は連邦政府支出の1.35%から0.6%以下へと毎年着実に減り続けている。インフレ調整された資金の長期に渡る減少は、予算削減という名の下、ここ数年で急激に下降した。2014年度予算はいくぶん回復したものの、削減された額をすべて取り戻した訳ではない。
オバマ政権は今後10年間で小惑星探査への“布石”となる計画を支持している。
しかし、2012年末に発表された全米研究評議会の報告書は、NASAの小惑星探査に向けての戦略的計画は“不明瞭”で、「なぜ納税者の投資の価値があるか」十分に説明できていないと指摘した。
生命体探査(SETI)への資金投入も、宇宙科学への投資に関するより大きな議論を映し出している。赤外線宇宙望遠鏡からボーイング747搭載の望遠鏡に至る、ここ数十年間の苦しい資金繰りによって既に圧迫されている様々なミッションが現在中止の危機に直面している。
◆難しい選択・・・
オバマ政権は今後10年間で小惑星探査への“布石”となる計画を支持している。
しかし、2012年末に発表された全米研究評議会の報告書は、NASAの小惑星探査に向けての戦略的計画は“不明瞭”で、「なぜ納税者の投資の価値があるか」十分に説明できていないと指摘した。
生命体探査(SETI)への資金投入も、宇宙科学への投資に関するより大きな議論を映し出している。赤外線宇宙望遠鏡からボーイング747搭載の望遠鏡に至る、ここ数十年間の苦しい資金繰りによって既に圧迫されている様々なミッションが現在中止の危機に直面している。
◆難しい選択
今年3月、NASAは2015年度の予算計画を発表した。その計画によると、ボーイング747搭載された遠赤外線天文学成層圏天文台(SOFIA)の予算が削減される。
NASAは年間8500万ドル(約85億円)のSOFIA事業費を負担してくれる新たなパートナーを見つけない限り、今年初めから既に定期的な操業が始まっているこの天文台は予算計画通り凍結されるだろう。
NASAは2年ごとに上級再調査パネル(SRP:senior review panel)を開催しており、ミッションによってもたらされる科学的知識が費用を掛け続ける価値があるかどうかを確認する。宇宙船が使い物にならなくなる前に、SRPがミッションの終了を勧めることは珍しい。
だが今年は幾分違うようだ。
◆金庫荒らし
今月SRPは、追加資金がなければスピッツァー宇宙望遠鏡を操業停止にすることを勧告した。2003年に打ち上げられたこの赤外線望遠鏡は、年間1500万ドル(約15億円)を費やす。現在も良い状態で良質の科学的知識を与えてくれるが、他の天文学的ミッションを危うくすることなく操業中の望遠鏡を維持する十分な資金はないとSRPは結論付けた。
NASAの惑星科学ミッションは独自の上級再調査を進めており、この夏までに完了する予定だ。今の予算では操業を維持するため、2大ミッションである火星探査車キュリオシティと土星探査機カッシーニのどちらかを選ぶようNASAは決断を迫られると科学者らは懸念している。土星の大気に急落下させることで2017年にカッシーニが操業停止になる計画が現在進行中だ。
NASA惑星科学部の部長であるジム・グリーン(Jim Green)氏によると、NASAが補正予算要求に含まれる3500万ドル(35億円)を受け取ることができれば、現行の惑星ミッションすべてを継続させることができる。
ハッブル宇宙望遠鏡の後継者となるJWSTの予算が、当初の見積もりの10億ドル(1千億円)を大きく上回って80億ドル(8千億ドル)以上になるという2011年のニュースは、NASAを意気消沈させた。2018年の打ち上げが計画されるJWSTの超過経費を賄うため、既に乏しい資金までが消耗されている。
◆ロスト・イン・スペース
SETI研究所のセス・ショスタック(Seth Shostak)氏は、無線信号の処理を向上するコンピューター技術の進歩により、比較的近い将来に生命体の信号を受信する可能性があると楽観的である。
だがSETIにとって、技術の向上より予算を取ることのほうがより大きな挑戦のようだ。現在SETIのプログラムは民間の資金に完全に頼っており、わずかな額で運営されている。
◆議会による救援?
今週、米国下院議会は2015年度予算案の決議を予定している。予算が通ればNASAが要求する額を4億3500万ドル(約435億円)上回る、179億ドル(1兆7900億円)の資金が提供されるだろう。それによってNASA天文物理プログラムはホワイトハウスが提案する額より12%増、惑星科学プログラムは13%増の資金を得るだろう。
さらに議案は、大統領が提案するオリオン宇宙船のカプセルと大型打ち上げロケット用スペース・ローンチ・システムに2億7000万ドル(270億円)を上乗せするだろう。その一方、国際宇宙ステーションへ宇宙飛行士を運ぶための民間による宇宙船開発を支援するNASA民間搭乗員プログラムの資金が10%近く削られる。
また議会は、2020年代初頭に打ち上げられる氷で覆われた木星の衛生、エウロパへの探査計画に対する1億ドル(100億円)の予算も取り消すだろう。
資金増加を約束する予算案は今週下院を通過し、その後上院議会で採決されなければならない。
PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH