【リレーコラム国分論】天才・武豊にとっても「ダービーは特別です」
今日、「第81回 東京優駿(日本ダービー)」が東京競馬場で開催される。昨年はキズナが優勝し、騎乗した武豊(45)は通算5度目の栄冠を手にした。ダービー2勝の騎手は11人いるが、3勝以上は彼だけである。
以前、武騎手と食事をした時、お遊びで「(時計を見ずに)30秒を言い当てられますか?」と振った。ペース配分が命というジョッキーの“体内時計”はすごいという話を聞いていたからだ。結果、0・1秒も違っていなかった。腕時計を何度か振って「あと刺し身ひと切れは大丈夫かな」といって箸を進めた。時計バンドのちょっとした回り方、締まり具合の変化で体重を判断できるという。神業を見せつけられ、一流の者が持つスキルと責任感に脱帽した記憶がある。そんな“レジェンド”が顔を紅潮させた瞬間があった。「ダービーは特別です。競馬サークル全体がその日(東京優駿)に合わせて1年間の計画を立てますから。誰もがこのレースだけは勝ちたいと思っているんです」と熱っぽく語った。
特別なレースを勝てない騎手もいる。G1・10勝以上の現役では福永祐一(37)と蛯名正義(45)の2人だ。それぞれ2着の実績があるが、手が届かない。今回はどうか。蛯名騎乗のイスラボニータは1番人気で本番を迎えることになるだろう。また、福永のレッドリヴェールは桜花賞2着からの挑戦。牝馬で64年ぶりにダービーを制したウオッカと同じだ。しかも当日は皇太子殿下が7年ぶりにダービーを観戦されるが、この時はウオッカが優勝と流れもいい。今年は蛯名、祐一どちらかの初戴冠が見られるかも。もちろん“レジェンド”もトーセンスターダムで虎視たんたんと2連覇を狙っている。特別なレースのスタートは午後3時40分。皆さんも約2分25秒に凝縮された深い人間模様を味わって下さい。(毎月第一日曜日掲載)
◆国分 敦(こくぶん・あつし)プロ野球、芸能担当、レース部を経て昨年1月から編集委員。安くて旨い居酒屋の開拓が趣味で、酒は日本酒から焼酎、ワインまでオールマイティー。