安全後進国:非常口を開けるとそこはトイレであった

【特集】安全後進国

 非常口がトイレに改装されていた鷺梁津の考試院経営者は「(安全設備は)万全ではないが、保証金なしで家賃が月18万ウォン(約1万8000円)と格安だからこそ学生が借りるのだろう」と言った。月20万-40万ウォン(約2万-4万円)さえ支払えば借りられるソウル中心部の考試院には一つの建物に数十人、多くて約100人が住んでいる。それにもかかわらず、安全設備は管理不行き届きのまま放置されていた。

 ソウル市内を代表する繁華街、弘大前(麻浦区西橋洞)にあるカラオケ店はインテリアが華やかできれいだが非常口はなかった。 2階の通路奥にある非常口は小型コーヒー自動販売機、鉄製いす、プラスチック製ゴミ箱などで前をふさがれていた。3階の非常扉には頑丈な錠が掛かっていた。

 1年に少なくとも2回、消防署から署員が来て点検するにもかかわらず、なぜこのような状況になっているのだろうか。ある消防署員は「原則通りすれば点検のたびに過料200万ウォン(約20万円)を科せられる。しかし、どの店も自営なので、(法律通りにするのではなく)勧告にとどまっている」と話す。その一方で、あるカラオケ店経営者は「公務員たちも、われわれ経営者が全ての規則を守ることはできないことを知っている」と語った。

■安全設備設置を強制する法の網に穴

 法の網も穴だらけだ。09年は釜山だけでも地下のカラオケ居酒屋火災、国際市場の室内射撃場火災などの惨事が相次いだ。政府は翌年11月に床面積が150平方メートル以上の地下階に設置を義務付けていたスプリンクラーを、面積に関係なく地下階や窓のない地上階店舗に設置させた。しかし、この法律が施行される前に許可を受けた業者には設置義務がない。12年に火災が発生し死者9人を出した釜山鎮区のカラオケ店も、法改正前に許可を受けたカラオケ店だった。

 考試院も同じだ。08年10月に6人が死亡したソウル市江南区内の考試院火災。政府は09年に通路の幅を1.5メートル以上と定め、スプリンクラーなど消防安全設備を設置するよう義務付けた。だが、この時も、改正以前に許可を受けた考試院については例外が認められた。

 ソウル科学技術大学安全工学科のイ・スギョン教授は「人命を扱う安全に関する法律は遡及(そきゅう)適用も強制できるようにしなければならない。社会的にコストよりも人命を重視する流れが強まるよう、早急に安全対策について話し合うべきだ」と語った。

社会部= イ・ミンソク記者
前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 安全後進国:非常口を開けるとそこはトイレであった
  • 安全後進国:非常口を開けるとそこはトイレであった

right

関連ニュース