安全後進国:非常口を開けるとそこはトイレであった

【特集】安全後進国

安全後進国:非常口を開けるとそこはトイレであった

 狭く曲がりくねった階段を40段あまり下りていくとカラオケ店の入り口に行き当たった。禁煙区域という表示の前で20代の男性がたばこを吸っていた。店に入ると酔客7-8人が声を張り上げて歌っているため、会話もままならない。避難経路に沿って通路を2回曲がり、10メートルほど歩いたところに非常口があった。ノブを回したが鉄の扉は鍵が掛かっていた。ドアの隅には消火器が8本。本来ならこれらの消火器は店のあちこちに置いておかなければならないはずだ。 8日午前1時、ソウル市恩平区内にある個室10室ほどのカラオケ店には、ほかのカラオケ店同様、窓がなかった。

 ソウル市銅雀区鷺梁津洞の「考試村」にある4階建ての考試院。考試院とは受験生用の勉強部屋と寝室を兼ねた簡易宿泊施設だが、受験生以外も利用できる。2階通路の奥にある非常口の扉を開けたところ、非常階段があるべき場所にトイレがあった。洗濯機とシャワーの向こうに縦50センチ×横70センチの窓が二つあったが、鉄柵でふさがれていた。同じ鷺梁津の雑居ビル地下にあるネットカフェ。避難誘導灯をたどっていくと「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた表示板があり、その向こうの扉は鍵が掛かっていた。

 カラオケ店・インターネットカフェ・考試院は街中にある代表的な密閉空間だ。火事はややもすれば大惨事につながる。2008年に死者6人を出したソウル市江南区内の考試院火災、09年に死者9人を出した釜山市影島区内のビル地下にあるカラオケ居酒屋火災、同じく死者9人を出した12年の同市釜山鎮区内のカラオケ店火災もそうだった。

 7日から10日まで、ソウル市内のカラオケ店・ネットカフェ・考試院20カ所を取材した。火事が発生したと仮定して避難設備を調べた結果、非常時の避難経路が確保できているケースは6カ所(30%)だけだった。残りの14カ所は非常口に鍵が掛かっていたり、障害物があって使用できなかったりという状態だった。

■ネットカフェの非常口が喫煙場所に

 街の密閉空間をさらに危険にしているのは、客や経営者の低い安全意識だった。ネットカフェやカラオケ店では禁煙なのにたばこを吸う客をよく見かけた。

 ソウル市冠岳区新林洞の5階建てビル3階にあるネットカフェ。広さ330平方メートルの店で約20人がゲームをしていた。韓国では今年1月からネットカフェが全面禁煙となったが、40代男性は紙コップを灰皿代わりにしてたばこを吸っていた。ネットカフェ左隅の非常扉は半分ほど開いていた。中をのぞいてみると、エアコン室外機・ゴミ袋・段ボール箱が山のように積まれており、緩降機(滑車にロープを掛けて窓から下りる避難用具)には手が届かなかった。

 店舗経営者たちは安全対策を後回しにしている。ソウル市西大門区忠正路のビル4階にある考試院は通路の幅が90センチで、その両側には個室が12室並んでいた。ここに住む女性(27)は「ドアが開かなくてトラブルになることが多い。深夜に突然火事が発生した時のことを考えるとゾッとする」と言った。通路の非常灯をたどっていくと鉄製シャッターが下ろされていた。考試院の管理者は「部外者の出入りを防ぐため、午後8時にシャッターを降ろしている」と話した。

社会部= イ・ミンソク記者
前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 安全後進国:非常口を開けるとそこはトイレであった
  • 安全後進国:非常口を開けるとそこはトイレであった

right

関連ニュース