【コラム】「魚釣り遊び」を再び始めた日本と中国

 フランス人画家・漫画家のジョルジュ・ビゴー(1860-1927)が描いた「魚釣り遊び」という有名な風刺画がある。フランスの名門美術学校「エコール・デ・ボザール」に入学するも、家計を助けるため退学し、挿絵などの仕事をしていたビゴーは、後に日本に渡って写生の指導などを行っていたが、1894年に日清戦争が起こると韓半島(朝鮮半島)に渡り、列強が勢力争いを繰り広げていた悲惨な現状を風刺する有名な絵を描いた。これがかの有名な「魚釣り遊び」だ。この絵には日本人と中国人が池の中にいる「朝鮮」という魚を釣ろうとしている様子と、それを口ひげの生えたロシア人が横取りしようとうかがう様子が描かれている。100年以上前に描かれたこの絵を今取り上げた理由は、最近の韓半島とその周辺情勢が、さまざまな面で当時と非常に似通ってきたからだ。

 現在の韓半島周辺国の中で、露骨に釣り糸を垂れているのは日本だ。安倍首相は「集団的自衛権」という概念を持ち出し、韓半島有事の際に韓国政府の同意がなくとも武力介入できる可能性を開こうとしている。韓国戦争(朝鮮戦争)のような有事の際、米国と中国が韓半島の運命を決めるのを放置せず、自国の利益を最後まで貫くのがその理由だ。安倍政権はつい先日、北朝鮮との関係改善を進めることで、韓国と中国をけん制する外交カードをも新たに切り始めた。

 これまで日本が再武装の口実としてきたのは、北朝鮮という軍事的脅威となる国の存在だった。もちろん北朝鮮による核の脅威は今も消え去ったわけではない。しかし安倍首相は先日行われたストックホルムにおける北朝鮮との交渉で、北朝鮮が日本人拉致被害者の再調査を始めた時点で、日本が独自に行っている制裁の緩和を約束した。これによって在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)による北朝鮮への送金や企業による取引、北朝鮮船舶の日本入港が可能になるのだ。しかも今後双方が貿易を再開し、数百億ドル(数兆円)ともいわれる植民地時代の賠償金が北朝鮮に支払われれば、北朝鮮の核武装は一層進展するかもしれない。安倍首相によるこれら一連の矛盾した外交カードは、韓半島における中国の影響力を弱め、韓国主導の南北統一をけん制する狙いがあると考えるべきだろう。

池海範(チ・ヘボム)東北アジア研究所長
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