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戦後70年 両陛下のパラオなど訪問を検討
6月2日 19時32分

来年、戦後70年を迎えるにあたって、天皇陛下が太平洋戦争の舞台となったパラオなど太平洋諸島の国々を戦没者の慰霊のため訪れる希望を示され、宮内庁が天皇皇后両陛下の訪問について検討を進めていることが分かりました。

関係者によりますと、天皇陛下は、来年、戦後70年を迎えるにあたって、戦没者の慰霊のため、パラオなどかつて日本が統治していた太平洋諸島の国々を訪れる希望を示されたということです。
パラオは、マーシャル諸島やミクロネシア連邦とともに太平洋戦争の舞台となり、これら3つの国では、日本軍だけで合わせて4万6000人余りが犠牲になったとされています。
両陛下は、戦後60年にあたる平成17年、天皇陛下の強い希望で太平洋の激戦地サイパンを訪問されましたが、当時も検討されたパラオなどへの訪問は、相手国の受け入れ態勢が整わないなどとして見送られました。
天皇陛下は、その後も、太平洋諸島で亡くなった人たちへの思いを抱き続け、パラオなどでの戦没者の慰霊について再び強く希望されたということで、宮内庁がパラオを含む太平洋諸島の国々への両陛下の訪問について検討を進めているということです。
訪問の日程は、戦後70年の節目にあたる来年の8月15日より前の時期で検討されていて、宮内庁は、相手国の受け入れ態勢や交通や警備の面での課題について、今後さらに検討を進めるものとみられます。

パラオなど太平洋諸島とは

パラオをはじめ、マーシャル諸島やミクロネシア連邦は、東京から南に数千キロ離れた太平洋の島国です。
サイパンと同様、第一次世界大戦で占領した日本が、終戦の頃までおよそ30年にわたって統治し続けました。
多くの日本人が移り住み、この地域を管轄する「南洋庁」が置かれたパラオをはじめ、いずれも太平洋戦争で軍の拠点となりました。
しかし、終戦の前年になるとアメリカ軍の侵攻を受け、パラオではペリリュー島など南部の2つの島で激しい地上戦となり、日本軍がほぼ全滅しておよそ1万1000人が死亡しました。
パラオ、マーシャル、ミクロネシアの3か国で犠牲となった日本人は、軍人だけで合わせて4万6000人余りに上り、ペリリュー島とマーシャルのマジュロ島には、日本政府によって戦没者の慰霊碑が建てられています。
いずれの国も、アメリカの統治を経て独立しましたが、日本人の血を引く人たちが大勢暮らし、歴代大統領には日系人もいて、親日的な国として知られています。

天皇陛下 海外戦没者への思い

天皇陛下は、海外での戦没者やその遺族にも心を寄せ続けられています。
天皇陛下は、戦後50年を迎えた平成7年、「慰霊の旅」で国内各地を回り終えると、宮内庁の幹部に、太平洋諸島を訪れて戦没者の慰霊をしたいと話されるようになりました。
これを受けて実現したのが、戦後60年にあたる平成17年の天皇皇后両陛下のサイパン訪問でした。
天皇陛下は、出発前のおことばの中で、「海外の地において、改めて、先の大戦によって命を失ったすべての人々を追悼し、遺族の歩んできた苦難の道をしのび、世界の平和を祈りたいと思います」と述べられました。
皇后さまも、この年、海外で亡くなった戦没者に寄せる天皇陛下の思いについて、「南太平洋の島々で戦時下に亡くなられた人々のことを、深くお心になさっていらっしゃいました。外地のことであり、なかなか実現に至りませんでしたが、戦後60年の今年、サイパン訪問への道が開かれ、年来の希望をお果たしになりました」と文書で述べられました。
宮内庁は当時、パラオをはじめ、マーシャル諸島とミクロネシア連邦への両陛下の訪問も検討しましたが、これらの国については、相手国が受け入れ態勢を整えるのが困難だとして訪問は見送られました。
しかし、天皇陛下はその後も、太平洋諸島で亡くなった人たちへの思いを抱き続け、ことしに入る前から、パラオなどでの戦没者の慰霊について再び強く希望されていたということです。

両陛下 戦没者慰霊の歩み

天皇陛下は、一貫して先の大戦と向き合い、皇后さまと共に各地で戦没者の慰霊などに当たられてきました。
戦後50年を迎えた平成7年には、「慰霊の旅」に出かけ、まず、被爆地の広島と長崎で、原爆による犠牲者の霊を慰められました。
続いて、住民を巻き込んで激しい地上戦が行われた沖縄を訪れ、沖縄戦最後の激戦地、糸満市で戦没者の墓苑に拝礼されました。
この前年の平成6年には、小笠原諸島の硫黄島を訪れ、飢えや渇きに苦しんだ戦死者を思い、慰霊碑に水をかけ白菊を供えられました。
戦後60年には、太平洋の激戦地サイパンを訪問されました。
多くの日本人がアメリカ軍への投降を拒んで「天皇陛下万歳」と叫びながら身を投げた、「バンザイ・クリフ」などを訪ね、遺族らが見守るなか、黙とうをささげられました。
両陛下の外国訪問は、通常、相手国からの招待を受け国際親善のため行われますが、戦没者の慰霊を目的としたこの訪問は、天皇陛下の強い希望で実現した前例のないものでした。

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