鑑定留置の被告逃走:地検「責任の所在は今のところ不明」

毎日新聞 2014年06月02日 12時20分(最終更新 06月02日 13時02分)

 福岡市東区の雁の巣病院で鑑定留置中の被告が2日未明に逃走した事件。約5時間後に福岡県警によって身柄は確保されたものの、この間、地域に緊張が走り、住民は不安に陥った。鑑定留置中、被告に対して看守はおらず、鑑定留置を執行した佐賀地検は「看守は通常つけない。責任の所在は不明」としている。だが、過去にも同様の逃走事件があり、警備や管理のあり方が改めて問われそうだ。【野呂賢治、山本太一、福永方人】

 逃走したのは佐賀地検に強盗強姦(ごうかん)罪などで起訴された佐賀市の飲食店従業員、大隈保之被告(32)。福岡県警などによると、大隈被告が留置されていたのは個室で外側から施錠され、病院職員が定期的に見回りをしていたが、看守はついていなかった。

 刑事訴訟法は、必要があれば裁判所命令で警察官を看守にすることができると定めているが、今回は命令が出ていなかった。佐賀地検は「病院側に逃走を阻止するまでの管理責任があるとはいえない。鑑定を命じたのは裁判所で、執行指揮をとったのは検察なので、責任の所在は今のところ不明」としている。

 同様の事例は2002年4月、北海道千歳市の精神病院から、強盗殺人事件で逮捕された男が鑑定留置中に逃走。翌日に確保されたが、留置先の病室が無施錠で看守がついていなかったなど管理態勢の甘さが問題となった。

 元最高検検事の土本武司・筑波大名誉教授(刑事法)は「鑑定留置は令状に基づく強制措置なので、本人の身柄確保と周辺住民の安全の観点から厳格な監視体制をとるべきだ。看守の必要がないという判断は理解できない」と指摘する。

 雁の巣病院はアルコール依存症の専門治療で知られる他、精神科、重度認知症患者のデイケア、内科などがある。周辺は住宅街で、約500メートル東には奈多小学校もあり、近くの女性(29)は「『怖い』の一言」。無職男性(83)も「病院が新しくなって開放的になったのはいいが、こんなことがあると不安だ」と言い、自営業男性(58)は「約15年前にも雁の巣病院に入院中のアルコール依存症の男が自宅の倉庫に侵入したことがあり、住民らで患者の管理をしっかりするよう病院に要望書を提出したことがあった。管理責任をしっかりしてほしい」と話した。

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