いつか発表されると思っていたこの手法がついにNature Methodsに発表されました。既存のwestern blottingを置き換えることはなさそうですが、FACSと組み合わせるとすごい力を発揮しそうです。
ウエスタンブロッティングについて知らないと読んでもよく分からないと思うので、興味がある人だけどうぞ。
Single-cell western blottingの流れ
この手法は、小さなウェルに細胞を1つ1つ入れ、可溶化し、電気泳動し、蛍光標識した抗体を用いてシグナルを検出すると言う流れで行われます。既存の方法と大きく違うのは、メンブレンに転写するステップが無いというところです。
1.ゲルの作製
20x20x30μmのアクリルアミドゲル製の小孔をガラス上に形成させ、そこに細胞を入れる。
2.SDS-PAGE & immobilization
細胞をRIPAバッファーにより可溶化して電気泳動する。ゲルにはbenzophenone methacrylamideが入っており、紫外光を当てることでタンパク質の拡散を抑える。
3.検出
ゲルを一次抗体と反応させ、蛍光標識した二次抗体を用いて目的タンパク質を検出する。多重染色、抗体の除去も出来る。
実際にどのようにタンパク質が泳動され、不動化されるかは、こちらの動画を見ていただくのが良さそうです。
なぜdot blottや免疫染色ではなく、わざわざSDS-PAGEをしているのでしょうか。それは分子量で分けることによって、目的のシグナルとノンスペを明確に分けられるからです。
ノンスペシフィックなシグナル(*)
このsingle cell westernは既存のwesternよりpERKとpMEKの上昇が綺麗に検出されることが示されています (Fig3 d)。
終わりに
と言うわけで面白い手法ではありますが、既存のwestern blottingより利便性が高くはありません。ゲルを作るのも細胞を1つ1つ入れるのも普通の研究室で簡単には出来ないでしょう。また、拡散によるタンパク質のロスがあるなど、解決すべき問題は多そうです。
今後、企業を巻き込んで大規模解析が自動で出来るようになれば、一部の研究者には大いに好まれそうですね。これからの発展に期待します。
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