人気マンガ「美味しんぼ」の主人公・山岡士郎は、福島第一原発を訪れた後に鼻血を流します。実名で登場する被災地の前町長は、「私が思うに、福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは、被ばくしたからですよ」と断言します。これでは個人的な感想をもとに「福島にはもう住めない」といっているようなものですから、風評被害との抗議が殺到するのは当たり前です。
この騒動については、「表現の自由」として擁護する声もあります。これをどう考えればいいのでしょうか。
前提として、私たちの社会ではあらゆる主張に科学的データが求められるわけではありません。
「ふくらはぎをもめば長生きできる」という本が売れていますが、こうした健康本の多くはその効果が医学的に証明されているわけではありません。それでも社会問題にならないのは、みんなが1日5分ふくらはぎをもむようになってもさしたる悪影響がないからでしょう。
厚生労働省は薬事法によって、投薬などの効果を宣伝に使うことをきびしく制限しています。臨床実験もなく製薬会社が「がんの特効薬」を売り出せば大問題になりますが、その一方で、「キノコを食べたらがんが治った」というような情報が巷にあふれています。なぜこれが許されるかというと、それが(すくなくとも)体験的事実で、個人の体験を述べることは自由だからです。
キノコを食べたあとにがん細胞が消えたとしても、そこに因果関係があるかどうかを知るには膨大な実験が必要です。そんなことは個人には不可能ですから、厳密な証明を要求すると、私的な体験を公表することまで禁じてしまうのです。
しかしこれは、体験に基づけばどのような一般化も許される、ということではありません。
借金を踏み倒された相手がたまたまユダヤ人だったとしても、「すべてのユダヤ人はウソつきだ」と差別する理由にならないのはいうまでもありません。“キノコでがんが治った”ことを理由に「抗がん剤はいますぐやめなさい」と煽れば、それを信じた患者が適切な治療を放棄するかもしれません。そう考えれば、表現の自由にも社会的な許容範囲があることがわかります。
福島第一原発の事故現場では1日4000人もの作業員が復旧作業に従事しています。福島の住人に被ばくによる鼻血の症状が出ているのなら、放射線量の高い場所で作業する彼らの被害ははるかに深刻なはずですが、そのような事実は報じられていません。こうした明らかな矛盾に反論できなければ、似非科学といわれても仕方ないでしょう。
今回の事件で気になるのは、「国や東京電力を批判するためなら多少の行き過ぎも許される」という論調が一部にあることです。しかしこんなことでは、原発に反対する主張はすべて似非科学と見なされてしまいます。
「美味しんぼ」の描写は政府関係者をはじめ、原発推進の側から強く批判されています。それだからこそ反原発派は、動機を理由に似非科学を擁護するのではなく、より徹底して批判しなければならないのです。
『週刊プレイボーイ』2014年5月26日発売号
禁・無断転載
> 借金を踏み倒された相手がたまたまユダヤ人
ここは韓国人にして欲しかったな。
「福島は、住んではいけない」とか描いてるしで、
あの漫画は終わってるよ。
低線量被爆が健康に害を及ぼすか否かは科学者間でも意見が分かれている問題ですよね。鼻血問題もそのようです。その主張は例えば、「細菌でもウイルスでも体力の無い老人や子供に問題が起きる。低線量でも人によっては鼻血が出る場合もあり、労働年代の健康な成人男子と比較することには意味が無い」と言ったもののようです。確かに「美味しんぼ」の表現は科学ではありませんが、そのような事実が無いことを原発を推進したい人、政府、東電が科学的に検証、証明すべきなんじゃないでしょうか。なぜ原発事故によって線量が高い地域に住み事故後鼻血が出ていると主張する人々がその問題を科学的に検証しなければならないのですか。彼らがすべきことはそのような人が多数いるという事実を確認するだけで十分なのではないですか。
最近、橘さんの記事に首を傾げる確率がかなり増えました。
福島県双葉町で鼻血の報告数が多いことを証明する統計資料の存在も明らかになっており、
双葉町が資料の隠蔽行為をしていた可能性も指摘されています。
福島県双葉町で鼻血「有意に多い」
http://www.j-cast.com/2014/05/16204959.html?p=2
http://www.j-cast.com/2014/05/16204959.html?p=1
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/661/661-01.pdf
また、民主党政権下では自民党の議員が鼻血について発言しています。
■参議員予算委員会8号 (平成24年03月14日)
自民党 参議院議員 熊谷大
ある小学校の、県南の小学校の保健便りです。
四月から七月二十二日現在の保健室利用状況では、内科的症状で延べ人数四百六十九名。
内科的症状では、頭痛、腹痛、鼻出血、
これ鼻血ですね、順に多くということ、これ結果で出ているんですね。
■参議員文教科学委員会3号(平成24年03月22日)
自民党 参議院議員 熊谷大
四月から七月二十日現在の保健室利用状況では、
内科的症状で延べ人数四百六十九名が利用しました。
内科的症状では、頭痛、腹痛、鼻出血の順に多く、
鼻出血というのはこれ鼻血のことですね、
外科症状では擦り傷、打撲、虫刺されが順に多かったということで書いてありますが、
平野大臣、この事実もう一度、どのようにお考えになりますでしょうか。
■参議員憲法審査会4号(平成24年04月25日)
自民党 参議院議員 山谷えり子
井戸川町長が雑誌のインタビューでこんなことを言っていらっしゃいます。
放射能のために学校も病院も職場も全て奪われて崩壊しているのです。
私は脱毛していますし、毎日鼻血が出ています。
この前、東京のある病院に被曝しているので血液検査をしてもらえますかとお願いしたら、
いや、調べられないと断られましたよ。
我々は被曝までさせられているが、その対策もないし、明確な検査もないという。
本当に重い発言だと思います。
フランスの原発関係のジャーナリストに聞きましたら、
こんなに情報公開がなくて、しかもいろいろな、
沃素剤一つ取っても国、県の指示があって初めて服用できるというような、
非常に不十分なままほったらかされていたと、
この十三条と二十五条、幸福追求権と生存権が妨げられているのではないか。
■参議員東日本大震災復興特別委員会8号(平成24年06月14日)
自民党 参議院議員 森まさこ
例えば、具体的にこんな心配の声をお寄せいただいています。
子どもが鼻血を出した、これは被ばくによる影響じゃないかと心配なんだけれども、
それを診察してもらった、検査してもらった、そのお金はどうなるんですかということです。
「私が思うに、…」
と言うのは断言なのですか?
北ウクライナ住民の疾患は4年後から急激に増えており、
風評被害とヒステリックに異常反応することの方が、かなり違和感を覚えます。
チェルノブイリ事故後の北ウクライナ住民の疾病罹患状況
http://toyama-hok.com/wp-content/uploads/2012/09/121.jpg
低線量被ばくについて
http://toyama-hok.com/hankakuishi/2012-8-2%E3%80%80%E8%AC%9B%E6%BC%94%E4%BC%9A%E3%80%8C%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%82%92%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%81%AE%E5%8D%B1%E9%99%BA%E3%81%8B%E3%82%89%E5%AE%88%E3%82%8B%E3%81%9F
「科学者間で意見が分かれ」てなんていませんよ。9割以上の科学者や医者は鼻血と今回の放射線の因果関係を否定しています。
ごく一部の学者に別の意見を主張する人がいるけれど、そういうのを「意見が分かれる」とは言いません。ヒステリックな異常反応をしているのは、誰が見てもあなたです。
とりあえずこの新聞記事が最新の結論です。
http://mainichi.jp/select/news/20140530k0000e040228000c.html