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    トップページ 次回の放送 伊吹山 春

岐阜と滋賀の県境にそびえる伊吹山は標高1377メートル。日本百名山の1つに数えられます。冬、日本海からの湿った季節風は大量の雪を山にもたらします。ここは年間300種類以上が育つ「花の山」としても知られています。3月下旬、雪どけを迎えた中腹の森でセツブンソウの花が春を告げると、カモシカは地面から出た草を食べて活動的になります。5月、色とりどりの花が咲き誇る頃、生き物たちは繁殖の時期を迎えます。森ではアカゲラが木の幹に新しい巣穴を掘り、オオルリは石灰岩の窪みを利用して子育てをします。カモシカは縄張りの崖で過ごしながら、まもなく出産の時期を迎えます。春、伊吹山でたくましく生きる命を見つめます。

番組内容

冬の伊吹山

1377メートルという標高にも関わらず、豪雪の山として知られる伊吹山。日本海と太平洋からの風の通り道となっており、冬には湿った北西の季節風が山にぶつかって多くの雪を降らせます。

300種類以上の花が見られる、“花の山”

伊吹山には、独特の気象と地理の影響で数多くの植物が育ちます。山に春を告げるのは、花の大きさ2センチのセツブンソウ。その後も、オドリコソウ、エゾノタチツボスミレなど、花々が競うように咲きます。

春、躍動する生きものたち

アナグマは夜行性の動物ですが、4月から6月にかけての繁殖期には、昼間も活動的になります。この日も草の茂みに頭をつっこみ、食べ物を探していました。

石灰岩からなる伊吹山

伊吹山は、およそ2億5千万年前に海底で発達したサンゴ礁が徐々に移動してできた山です。

霧の恵みが花畑をつくる

石灰岩の土壌は、雨水を貯めておくことができません。岩肌がむき出しの山頂。乾燥に耐える花々に水分を運ぶのが霧です。

石灰岩を利用して子育てするオオルリ

オオルリは、春、東南アジアなどから渡ってきて繁殖します。石灰岩のくぼみに、コケで目立たぬようにしたオオルリの巣がありました。

情報

語り 山本志保(やまもとしほ)アナウンサー
取材時期 2014年3月〜5月中旬
取材地 岐阜県、滋賀県の県境にある伊吹山 山頂、3合目
交通手段 【公共交通機関】
JR東海道線近江長岡駅下車、湖国バス「伊吹登山口」下車。そこからは徒歩で山頂まで約3時間半(3合目までは約1時間55分)。 
【自動車】
名神高速自動車道関ヶ原から上野・登山口まで約20分。そこからは徒歩となります。
名神高速自動車道米原・関ヶ原、北陸自動車道長浜、各インターから15分。伊吹山ドライブウェイへ。そこから9合目まで車で行くこともできます(普通自動車3090円)
より詳細な情報の入手先 ○米原市伊吹庁舎 環境保全課 TEL0749-58-2230
○伊吹山文化資料館(滋賀県米原市春照77)・・・伊吹山の自然と山麓の暮らし、文化を理解できるように、展示物が置かれている。
電話:0749-58-0252 入館料200円休館日:毎週月、祝日の翌日
登場する植物
  • セツブンソウ
    関東より西に分布する多年草。伊吹山では4合目より下で、3月中・下旬頃に開花。
  • タチツボスミレ
    日本を代表するスミレ。伊吹山では、麓から3合目など広い範囲で見られる。
  • スズシロソウ
    近畿以西の本州から沖縄に分布する多年草。直径1cmほどの白い4弁の花をつける。
  • オドリコソウ
    草原や林縁に生える多年草。伊吹山では5月になると麓から3合目、山頂へと咲いていく。
  • フデリンドウ
    北海道〜九州に分布。伊吹山では5月のはじめに3合目の草原などで生える。
  • エゾノタチツボスミレ
    本州の中部地方より北、北海道に分布する多年草。北方系の植物の一つ。
  • ニリンソウ
    林縁や林床などに生える多年草。伊吹山では4月から5月にかけ、麓から山頂へと開花していく。
登場する動物
  • ニホンカモシカ
    国の特別天然記念物。本州、四国、九州の山地に分布。
  • アナグマ
    体長44〜80cm。北海道を省く、本州、四国、九州に分布する、イタチ科の動物。山地から平野部の森林地帯、その周辺の草原などにすんでいる。夜行性だが、繁殖期には昼間も行動。
  • ヤマドリ
    全長125cm(オス)。低地から山地のよく茂った林などにすむキジ科の鳥。オスは長い尾を持つ。四国、九州、本州に分布。近年減少している。
  • アカゲラ
    全長23cm。キツツキ科の鳥。低山の雑木林、落葉広葉樹林などにすむ。春の繁殖期を迎えると、毎年新しい巣穴を木の幹にあけて子育てする。
  • オオルリ
    春、東南アジアなどから渡ってきて、九州以北の低山から山地の林で繁殖する。突き出た枝先でさえずりを行うので目立つ。
登場する自然現象
  • サンクラスト
    日中に太陽の光で溶けた雪が、再び冷えて凍り、雪の上に薄い氷の膜を形成する現象。

取材日記





今回の番組では、3月の取材開始から撮影終了の5月中旬まで2か月半、伊吹山に通いました。その中で、まず羽根がきれいなヤマドリに会いました。その後、初めてクマに出会い、ムササビやフクロウ、カモシカの子ども、アオバトにも出会うことができました。取材を始める前には、伊吹山は観光地化された山だと思っていました。しかし、取材を進めるうちに、雑木林と草原が残り、北尾根にはブナの森が広がる、豊かな山だとしみじみ感じました。貴重な自然を守るため、2014年5月1日から入山料の試験的な徴収が行われました。また撮影中、地元の人たちが、シカやイノシシから貴重な花々を守るため、自分たちの手でネット等を張っている姿を何度も見かけました。その努力には頭が下がる思いがしました。入山料の試みによって、これまで以上に伊吹山の自然への関心が高まり、さらに大きな力となって多様な動植物とかけがえのない自然が守られていくことを願っています。
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