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オリンピック・スタジアムでは爆竹も発炎筒も日常茶飯事。今年4月にも発炎筒が投げ込まれ、煙が充満してピッチが見えなくなる「事件」も。
photograph by Atsushi Kondo
ブラジルW杯通信

ギリシャと堅守速攻の複雑な関係。
サッカーが爆竹と陽気さに包まれる国。

近藤篤 = 文

text by Atsushi Kondo

photograph by Atsushi Kondo

 1994年の春だった。

 その年のW杯アメリカ大会に出場するいくつかの国をカバーする、そういう趣旨の企画があった。

 ギリシャに行きたい、僕はそういうリクエストを編集部に出した。

 なぜギリシャだったのか?

 ギリシャは前年のW杯予選で、初めての本大会出場を決めていた。でも本当の理由は、ただ単にギリシャに行きたいからだった。

 その取材では一週間ほどアテネとミコノス島に滞在し、ギリシャのサッカーを見て回った。

 いくつかのことが印象に残っている。

 ガイド役を引き受けてくれた地元カメラマンの名前が、アリストテレスだったこと、
  ギリシャ正教の神父さんにボールを蹴ってもらったこと、
  毎日通っていたレストランのウェイトレスの女の子がとてもキュートで情熱的だったこと、
  アテネ市内の道路が地獄のように混んでいたこと、
  オリンピアコス対パナシナイコスのアテネダービーで試合後の客席が炎上したこと、
  そしてギリシャのサッカーファンの多くが口を揃えてこう言っていたこと。
  W杯に出たってさ、どうせアルゼンチンにボコボコにされるんだろ。そんなら、出ない方がいい。

「パルテノン神殿をオレの家にしてくんねえかな!」

 10年後、そのギリシャは2004年のユーロで優勝を果たし、母国と世界中に散らばったギリシャ人たちに歓喜をもたらすことになる。ギリシャの優勝など、誰も、ギリシャ人だって、願ってすらいなかっただろう。当の選手たちですら優勝できるなんて、これっぽっちも信じていなかった。

 こんな話がある。

 ユーロ2004が始まる前、当時チームキャプテンをつとめていた選手が、チームメートにこう訊いた。

 なあ、もし今度のユーロで優勝したらお前は何がほしい?

 誰かがこう答えた。

 パルテノン神殿をオレの家にしてくんねえかな! ギャハハハ。

【次ページ】 話し好きで、人懐っこく、見栄っ張りで、短気。

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