叩き上げのアイデアマンによる、ヒット商品を生み出すためのメソッド

印南敦史 | ライター
2014.06.02 07:30

ヒットの正体 1億人を動かす「潜在ニーズ」の見つけ方


ヒットの正体 1億人を動かす「潜在ニーズ」の見つけ方 "そうそう、それが欲しかった"』(山本康博著、日本実業出版社)の著者は、紆余曲折を経て入社した伊藤園で頭角を表し、「ぎゅっと搾ったレモン水」や「充実野菜」など、おなじみのヒット商品を企画開発。次に移った日本コカ・コーラでは、「リアルゴールド」の缶化、「ベジータベータ」などのブランドマネージャーを経験してきたそうです。他にも、さまざまな実積をお持ちの方。

現在は独立し、さまざまなリーディングカンパニーのブランドコンサルティング、マーケティングに携わっているといいますが、つまり本書では、そんな経験によって身につけた「ヒット商品を生み出すためのメソッド」を紹介しているわけです。

自身の経験から、さまざまなことがらについての考え方まで、多岐にわたった内容。紹介したい箇所が多いのですが、きょうはあえて、すぐに役立ちそうな4本のコラムに焦点を当ててみたいと思います。

           

アイデアがひらめくのは朝


アイデアをひらめかせるためのポイントは、脳が適度な緊張とリラックスした状態に置かれていること。だらけた状態だと脳の働きが弱くなり、逆に緊張しすぎたり忙しすぎると柔軟な発想が生まれづらくなるもの。

そこで著者が実践しているのは、早朝に時間をとること。朝一番、誰もいない時間に出勤してみればリラックスでき、一定の緊張状態があるため集中できるのだそうです。また、アイデアは決まったところで生まれやすいため、場所も大切。アイデアは机の上で生み出さなければならないものではないので、自分にとってアイデアが生まれやすい場所を特定しておくべきだということです。(195ページより)


脳には30%の空き容量を


パソコンのハードディスク同様に、人間の脳も、やるべきことでいっぱいだと動きが鈍ります。そこでアイデアや潜在ニーズのヒントなどたくさんの宝の山を備えておくため、脳には30%くらい、常に余裕を持たせるようにした方がいいとか。

そして著者は「覚えておかなくてはいけない」というストレスから自身を解き放つためにも、日ごろから思いついたこと、やること、ありとあらゆることを手帳にメモしているのだそうです。結果的には、その手帳があるおかげで、同時に複数のブランドマネージャーを務めることができたと痛感しているといいます。(197ページより)


仕事は「時間単位」で考える


アイデア同様、日々の細かな雑務もすべて手帳やToDoリストで管理。なぜならそうすれば、「やるべきこと」を何度も頭のなかで思い返すことがなくなり、不必要に脳のメモリを使わずにすむから。また、あらゆる仕事は「何日までにやる」「この日にやる」ではなく、「何時間かかるか」という時間単位で考えるべき。

「この日までにやればいい」と考えるとつい先延ばししてしまい、気づいたときには時間がなくなって焦ってしまうもの。だからこそ、自分自身にアポイントを入れる感覚で、時間単位でスケジュールを組み、自らそれに従うようにすればいいという考え方です。

また、この手法はチームで仕事するときにも有効。メンバー各自に不足も過剰もないように時間単位で仕事を割り振り、進捗状況を聞く際にも「いつまでにできる?」ではなく、「あと何時間かければできあがる?」と確認し、みんなが時間単位で考えるようにすればいいということです。(198ページより)


アイデアをキャッチするための道具を使う


アイデアは、すぐに逃げてしまうもの。しかもアイデアには、「それ単体では使いどころがないけれど、なにかに使えそうなもの」「直近で取り組んでいる商品では使えないけれど、ストックしておきたいもの」など、さまざまな形があります。そこで著者は、そのようなアイデアの断片を整理するために付箋を活用することを勧めています。

方法は簡単。1ネタを1枚の付箋に書き込み、机の周りや専用のスペースなどにペタペタ貼っていくだけ。そしてある程度の数が出たら、大雑把に分類したり、もう一度精査して取捨選択したり、複数のアイデアをくっつけてみたりして検討してみる。そうすることで、断片を「ビジネスに使えるたしかなアイデア」へと変化させていくことができるわけです。

付箋のメリットは、気軽に自由に動かせること。お遊びで適当に動かしてみると、意外なつながりや、画期的なアイデアが生まれることもあるといいます。同じように、言葉遊びの感覚で付箋を動かし、ランダムにくっつけてみると、そこに新たな発見があったりするものだとか。

たとえば、会議の参加者に大きめの付箋を渡し、1枚ごとに1つの文句を書き出してもらう。そしてそれらをホワイトボードや大テーブルなど大きな平板に貼り付けていく。ある程度まとまったところで整理・分類し、複数の文句をランダムにくっつけてみながら、みんなで検証していくという方法です。

アイデアは瞬間的に脳裏に浮かび、すぐに消え去ってしまうもの。ですからアイデアを書き込む付箋は、常に身近な場所に置いておいた方がいいそうです。そして、貼り付け場所も近くにしておく。見えるところに残しておくと、常にそれらを意識させておけるから。会議の席で頭をひねり、素晴らしいアイデアを引き出すのは至難の業。日ごろから断片をストックしておくのがいちばんだというわけです。(200ページより)



ところで特筆すべきは、なかなかユニークな著者の経歴です。「下から2番目の成績で」高校を卒業後、トラック運転手をしながら学費を貯め、サーフボードを持ってアメリカへ留学。しかし1年で挫折して帰国し、その後、営業職で入った伊藤園でマーケティング部に異動してからマーケティングを学んでいったというのですから。

完全な叩き上げで、机上の空論がはさみ込まれる余地がないからこそ、本書で明らかにされている「実体験に基づく考え方」ひとつひとつが説得力につながっているのでしょう。


(印南敦史)

  • ヒットの正体 1億人を動かす「潜在ニーズ」の見つけ方 "そうそう、それが欲しかった"
  • 山本 康博|日本実業出版社
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