業界動向
Access Accepted第424回:AMDとNVIDIAの争いが表面化
大手GPUメーカーとして長年にわたりライバル関係にあるAMDとNVIDIAだが,その対立がいささか露骨な形で表面化した。これは,NVIDIAのゲーム開発支援プログラム「GameWorks」が,Radeonの性能を意図的に制限するとAMDが訴え,それに対してNVIDIAが反論を行ったというものだ。PCだけでなく,ゲーム市場全体を巻き込む論争だけに,多くの欧米メディアやゲーマーが成り行きに注目している。
AMD,GameWorksが同社製品の3D性能低下を
誘導と主張
AMDのRadeonとNVIDIAのGeForceは,PCだけでなくコンシューマ機にとっても必須のハードウェアとなっているGPUの二大ブランドだ。
ゲームグラフィックスの処理を行うだけでなく,最近はプログラムが要求する複雑な演算をCPUに代わって行うなど,ゲームのパフォーマンスを向上させるためにもなくてはならない存在になっており,長い期間,両社は競ってGPUの性能を向上させてきた。
こうした両社の切磋琢磨があればこそ,プレイヤーは,ゲームの中に描かれたリアルなキャラクターや各種エフェクト,そして,より広大で美しい世界が楽しめるようになったのだ。
ところが,そんなAMDとNVIDIAの長年にわたる対抗心がいささかきな臭い形で表面化し,メディアやゲーマーの間で大きな話題になっている。
発端は2014年5月26日,AMDで技術面の広報を担当するRobert Hallock(ロバート・ハロック)氏が,経済誌Forbesのオンライン版の取材に応じた記事だ。
Hallock氏は記事の中で,NVIDIAが開発者向けに提供しているGameWorks(関連記事)を取り上げ,NVIDIAの支援を受けたタイトルのソースコードがAMDに提供されないことが問題であると述べている。そのためAMDは当該ゲームタイトルに向けた最適化を行えず,結果としてAMDユーザーが不利益を受けるというのだ。
「NVIDIAのシェアをさらに広げることを目的としたGameWorksは,市場の40%を占めるAMD製品の性能低下を誘導することで,多くのゲーマーにとって脅威となっています。彼らはGameWorksに参加したゲーム開発者に対し,パフォーマンス向上のためのAMDの提案を排除するように求めているのです」。
これを受けて,記事を執筆したForbes誌のJason Evangelho(ジェイソン・エヴァンジェロ)氏は,両社のさまざまなグラフィックスカードを使って,NVIDIAの技術提供を受けて開発されたUbisoft Entertainmentの新作「Watch_Dogs」のベンチマークテストを行った。それによれば,NVIDIAのハイクラスGPUである「GeForce GTX 770」がAMDのフラグシップGPU「Radeon R9 290X」と肩を並べているという結果になっている。
AMDの主張に対してNVIDIAはすぐさま反論を行った。5月28日に掲載されたForbesの記事でEvangelho氏の取材に応じているのは,NVIDIAのCem Cebenoyan(セム・セベノヤン)氏だ。同氏はエンジニアリングディレクターとしてNVIDIAのエンジニアグループを率いて,ゲーム開発に協力してきたという。
Cebenoyan氏は記事中,GameWorksにおいて彼のチームは,ゲームの企画段階から開発に関与し,どんなグラフィックス技術が最適かを提案するだけでなく,ときにはプロトタイプのコーディングまで代行すると述べている。
スタッフは,必要に応じて長期間出張してゲーム開発会社に協力することもあり,NVIDIAが開発した技術「HBAO+」や,独自のアンチエイリアシング技法「TXAA」などの実装をNVIDIA主導で行っていくなど,自分達の仕事を詳しく説明している。
プロジェクトによっては,制作発表の前からこうした共同作業を行うこともあるそうだが,E3 2012で制作が発表されたWatch_Dogsの場合は,発表から1年ほど経過した2013年の時点で共同作業に入ったことを上記の記事で記している。
そのうえでCebenoyan氏はHallock氏の主張を,「まったくの謎」とし,「NVIDIA以外のメーカーに対して,ソースコードを第三者に開示しないように強要することなどできない。そもそも,特定のゲームに最適化したドライバを開発するのに,ソースコードを見る必要もない」と語っている。GameWorksプログラムの参加メーカーが誰と提携し,誰にソースコードを見せようが見せまいが,それが自由であると力説しているのだ。
どちらが正しいのか。相反する主張
現時点ではAMDとNVIDIA,どちらの言い分が正しいのかは判断できないが,個人的には,両社の見解の違いは,それぞれの思想の違いから生まれてくるものであるように思える。
AMDは,オープンな環境を重視しており,普及を図っているグラフィックスレベルAPI「Mantle」はAMD以外のアーキテクチャにも対応しているし,GPUによる汎用演算については,オープンソースの「Open CL」を採用している。
これに対してNVIDIAは,モットーである「The Way It's Meant to be Played」(遊ぶってのは,こういうことだ)の言葉どおり,GeForceを極限までチューンナップすることで最高のグラフィックスを引き出そうとしており,汎用演算についても,NVIDIA製CPUでしか使えない「CUDA」を開発している。
今回の論争は始まったばかりで,どういう方向に向かっていくのかはまだ見えない。それぞれのメーカーのファンは多いだけに,AMDとNVIDIA,どちらの主張が正しいにせよ,一般のゲーマーにとってはいささか迷惑な話になる。早く何らかの形で決着をつけてほしいところだ。
著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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