認知症保護:身元探し自治体で差 個人情報理由に消極的
毎日新聞 2014年06月02日 07時20分(最終更新 06月02日 10時12分)
認知症の疑いがある身元不明者を巡る問題では、個人情報保護などを理由に身元不明者の詳細な情報を公表しない自治体もある。先駆けとなって独自調査の結果を5月27日に発表した埼玉県と、30日に公表した東京都ではその内容に大きな差異が生じた。詳細な内容を公にした埼玉県の上田清司知事は「当事者が救われて有益なら個人情報保護の面からも問題はない」と強調した。【銭場裕司、山田泰蔵、和田浩幸】
東京都は身元不明者が都内に3人いることを公表したが、(1)性別(2)保護した年月(3)いずれも入院中−−の3項目以外は発表しなかった。その理由を都は「保護した自治体が公表していない個人情報を都の独断で公表していいのか現時点で判断しかねる」と説明。保護した市区町村名すら明らかにしなかった。
しかし3人のうち2人は、保護された区名とともに毎日新聞が4月に報じている。2人をそれぞれ保護した二つの区は、取材に保護の経緯や見た目の年齢、病状、現状などを説明した上、病状の進行で本人意思の確認が難しいことなどから本人への取材は受けられないと回答していた。
これに対し埼玉県は県内で保護された2人の当時の状況や見た目の年齢などを公表し、このうち狭山市で保護された男性が「ノムラショウキチ」と名乗っていることを説明。同市などの判断で男性への取材と写真撮影も行われ、広く情報提供を呼びかけた。
上田知事は個人情報について「役所が神経質になり過ぎている」と指摘し「それをたてに仕事をしない役人がいる」と憤る。身元不明者の情報公表は「本人に利益をもたらすなら問題ない」とし「担当課で判断が難しければトップが判断すればいい」と述べた。認知症の身元不明者を検索する全国システムがない問題については「まず警察で全都道府県に照会できるシステムが必要だ」と指摘した。
◇認知症の身元不明者を巡る自治体の公表内容
<東京都>
・性別
・保護した年月
・現在の状況(入院中)
<埼玉県>※上記に加え
・保護した自治体
・保護時の状況
・推定年齢
・自称の氏名
・容姿
・所持品
・電車など保護までの
移動手段(本人の話)