認知症保護:身元不明者、20府県未調査

毎日新聞 2014年06月02日 07時10分(最終更新 06月02日 10時11分)

認知症身元不明者の調査状況※市区町村への調査について(◎調査済み○実施中×実施なし)カッコ内は身元不明者の人数
認知症身元不明者の調査状況※市区町村への調査について(◎調査済み○実施中×実施なし)カッコ内は身元不明者の人数
認知症身元不明者の調査状況
認知症身元不明者の調査状況
認知症身元不明者の調査状況
認知症身元不明者の調査状況

 認知症などの疑いで行方不明になり身元不明のまま保護された人について、47都道府県に人数などを調査しているか尋ねたところ、調査実施は27都道県と57%にとどまることが分かった。把握された身元不明者は6人だが、毎日新聞が4月までに政令市など74自治体に尋ねた際は5人で、多くは重なっている。専門家は、実態解明には行政による調査や検証が急務と指摘している。

 認知症の身元不明者を巡る問題は、大阪市で保護され2年以上仮名で暮らす男性について毎日新聞が4月に報じて顕在化した。男性は兵庫県の74歳と判明して家族と再会。その後も群馬県館林市で7年前に保護された女性が東京都台東区の67歳と判明した。こうしたことから埼玉県は独自に県内各市町村に問い合わせ、18年前に狭山市で保護された認知症の男性ら2人(このうち9年前に日高市で保護された女性は全生活史健忘症)が今も身元不明という調査結果を5月27日に公表した。

 これを受け毎日新聞は28〜30日、全都道府県に対し、身元不明者の数や状況について各市区町村に調査したかを尋ねた。調査を終えていたのは栃木、埼玉、新潟、石川、三重、島根、高知の7県で、埼玉以外に身元不明者は確認されなかった。

 調査実施中は北海道、青森、山形、福島、茨城、群馬、千葉、東京、神奈川、富山、山梨、岐阜、静岡、愛知、奈良、和歌山、広島、福岡、熊本、大分の20都道県。広島は認知症に限定せず身元不明のまま保護されている人の有無を尋ね、福岡は市町村のほか高齢者施設にも照会したという。

 一方、調査未実施は20府県で、このうち京都と岩手は近く実施予定としている。秋田、福井、鳥取などは生活保護費などの県負担実績を調べて「身元不明者はいない」とするが、市町村への調査をしていない。担当部署すら決まっていない県もあった。

 埼玉の2人以外の身元不明者は、東京の3人と神奈川の1人。このうち東京の2人と神奈川の1人は毎日新聞が4月に報じており、これとは別に東京都内で2月に保護された男性がいることを都は5月30日に公表した。東京と神奈川は、他にも身元不明者がいないか調査している。【銭場裕司、山田泰蔵】

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