ヒロシマ国の掟?!
【20】カープ応援にはスクワット
小学生から高校まで野球をしていた記者がずっと不思議だったのは、広島カープのファンが繰り広げる「スクワット応援」だ。本拠地・マツダスタジアムだけでなく、カープの試合なら全国どの球場でもやっている。誰が始めたのか。疲れないのか。なぜ、あんなに楽しそうなのか。
まず、全国のカープ応援団をまとめる「全国広島東洋カープ私設応援団連盟」会長の新藤邦憲さん(64)=広島市中区=に聞いた。ファン歴50年以上の新藤さんによると、きっかけは1993年に旧市民球場であったオープン戦という。
右中間スタンドに陣取った制服姿の女子学生5〜6人が、応援団の太鼓に合わせ、じゃれあうように「立つ・座る」を繰り返し始めた。新藤さんは「おとなしく見い」と思ったが、学生たちは夏ごろまで通い、同じ応援を続けた。そのうち同調する人が現れ始めた。
しばらくは一部ファンの応援だったが、97年ごろ、関東のファンも神宮球場や横浜スタジアムで開始。そこから定着したようだ。新藤さんは「関東の球場ではファンが少なかったので固まって座ることが多く、一体感が生まれやすかったのではないか」と分析する。
自然発生で広がったスクワットは、今もファンの自発的応援。だが不思議と応援歌にマッチして見える。
応援歌の作成に携わる「東京緋鯉(ひ・ごい)会」のトランペッター富田耕大さん(36)=東京都大田区=によると、ファンは基本的に全ての曲にスクワットを絡ませてくる。だが応援歌は「意識しては作っていません」。そのせいか、インターネットで「堂林翔太選手のはスクワットしにくい」と話題に。例外的に発生しないのは、1軍に上がったばかりの選手向けの「跳ねろ若鯉」。曲調が合わないようだ。
通常、曲の1巡目は歌うだけ。2巡目に入ると、選手名をコールしながら一斉にスクワットが始まり、ひたすら続く。
1試合に何回スクワットしているのか。立つ・座るを1回として、1曲3回。富田さんによると、「1打席で曲は平均5巡するので、12回。点差が開いても基本的に9回までスクワットしています」。完全試合(27打席)だとしても計324回こなす計算だ。
球団の広報室によると、昨季のカープの1試合平均は約36打席。つまりスクワットは約432回。最多だった7月26日のヤクルト戦(神宮球場)は50打席で、600回もしたことになる。記者も学生時代、部活でスクワットしていた。200回を超えると足が筋肉痛になった記憶がある。
つらそうだが、本当に楽しいのか。ファンが多く集う広島市南区の「カープ鳥球場前店」で聞いてみた。同僚5人で飲んでいた東広島市の三宅昇明さん(29)と広島市佐伯区の日野智章さん(25)は「疲れません。テンションが上がります」と声をそろえる。
スクワットが一体感を生み、試合後にファン同士が仲良くなる。そのまま飲みに行くこともあるそうだ。ここでも「堂林の曲は合わせづらい」と意見が出た。
やりにくい球場を尋ねると、かつて大阪府に住んでいた日野さんが「甲子園は阪神ファンが多すぎて。やるには勇気がいります」と苦笑いで教えてくれた。
選手別応援歌やジェット風船など、カープファンが始めたとされる応援の多くは他球団に広がっている。だが、スクワットは今もカープファンだけのもの。新藤さんは「スクワット応援はファンの心を一つにする。他球団にまねされたくないね」と、笑みを浮かべた。(中野寛)
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