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2014年6月 2日 (月)

吉田調書をスクープした朝日新聞を叩いてるオタク共は『海上護衛戦』に墨でも引いて読んでろ

原発事故から3年経過した2014年5月になって故吉田昌郎所長が政府事故調に語った証言記録、通称「吉田調書」が朝日新聞に流出し、原発論議を沸かせている。

興味深いのは、日頃「情報は公開されている。反対派が調べないだけ」といった主張を声高に強調してきた反反原発(原発推進派)の間で反発が激しいことだ。

今回も、軍事オタク・反反原発界隈を中心として眺めてみよう。

軍事オタクとは言いかねるがこんな科学オタクもいる。

加藤アズキ氏の発言は【事実と真実】 吉田所長の「調書非公開」を望む上申書の趣旨について 【遺志と恣意】というまとめにまとまっている。上の解釈だと「吉田氏は神という肥大した自意識の持ち主」となるのだが、いいのか。

なお、サニー氏もこのようなことを述べている。正直失望。

一応、科学者代表としてこの人も挙げておく。

こうやって脊髄反射するから春雨と馬鹿にされるのでは。他にも何時もの連中がツイートしたりRTしたりしてるだろうがきり無いからこの辺で。

結論から言うと、彼等の主張は著しくバランスを欠いている。

【1】中味と入手経路の問題は別

まず、軍事オタク共が類似例として引く西山事件だが、情報の入手経路と公表された内容の問題を摩り替えるという、ネット右翼に典型的な反応に過ぎない。西山氏がどうであれ、密約として締結したことは日本政府が責を負う。相手が米国だから心情的に世間の支持を得たに過ぎない。もし中国相手のODA供与に関する「密約」などだったら、今の世なら袋叩きだろう。しかも、今回の件は外交問題ですらない。元々は政府が公開していれば済んだ話に過ぎない(上申書の件は後述)。

朝日新聞にしても同様で、調書の丸写しはメディアとしてハードルが高いが、工夫は出来るだろう。実際に例もある。東電テレビ会議の一件がそれだ。朝日新聞はこの問題のためだけに『プロメテウスの罠』とは別に本を一冊出版しており、公平性の高い仕事も出来ることを改めて証明した。何せ「文化大革命の軽い奴」を所望された石井孝明氏も賞賛する一冊だ。

後は吉田調書で同じことをすれば良い。まぁ多分、するだろう。それまで待っても遅くは無い。闇雲に騒ぐネット右翼はその程度の予想も出来てないし、文献も読まない。

【2】朝日新聞は原発報道では大手五大紙で最も優れている

そもそも、例示に西山事件を引くこと自体も疑問を感じる。他新聞の案件であり、外交問題だから、共通点が少ない。四式戦闘機弁務官やMIBkaiのようなネット右翼系軍事オタクは「朝日と毎日は一緒」「左翼=反原発」と主張したいのかも知れないが、『東電帝国―その失敗の本質』他で示された通り、朝日毎日両社共、社の方針として原発を容認してきた過去を持つし、その件に対する検証も進められている。要は、そう単純では無い。原発報道に対する朝日の底力を測るには、「「反対派のせいで建替え出来なかった」「対策出来なかった」というデマ 第2回」で取上げた下記の記事を示す方が適切である。

ドイツでも、七〇年代から過酷事故対策の研究に着手。八六年にPWR、翌年にはBWRにガス抜きパイプを設置するよう勧告が出て、既に大半の原発の 格納容器に取り付けられた。米国でも八七年から過酷事故時の格納容器の性能を改善する作業が進められ、八九年、BWRにガス抜きパイプを設置するよう勧告 が出されている。欧米の動きについて日本の電力関係者は「チェルノブイリ事故で盛り上がった反原発運動を鎮める狙いもあった」と話している。

ある電力関係者は「日本では手続きに時間がかかる。外国の動きに影響された面もある」と打ち明ける。「対策の遅れは、積極的にやりたくないという業 界の意向を反映したもの」と原子力情報資料室の高木仁三郎代表。「スリーマイル島事故の反省から、原子力安全委員会が八一年に出した五十二項目の『安全対 策に反映させるべき事項』もあまり実施されていない。こうした姿勢こそが問題」という。

BWR、PWRともにガス抜きパイプを設置した国がある中で、日本の場合はBWRとPWRで違った対策をとるのはなぜか。スウェーデンのように、放射性物質を極力外部に出さない方式をとる必要は無いのか。「原子力発電に反対する福井県民会議」の小木曽美和子事務局長は「過酷事故は絶対起こらないという説明から、発生の可能性を認めたことは評価できる」としながらも、「この対策で万全なのか」と不安がる。対策をとる前に、方針が決まるまでの議論をガラス張りにすべきだろう。とくに、BWRの地元ではパイプを開いて放射性物質を放出しても大丈夫なのか、住民が納得できるようにきちんと説明する必要がある。

「原発過酷事故対策は安全か」『朝日新聞』1994年2月17日朝刊4面より抜粋

福島事故前、一般紙の原発記事でここまで踏み込んで過酷事故対策の課題を示したのは朝日新聞だけである。確か、現物は7・8段抜きの、平時の新聞としては結構スペースを割いた内容だった。抜群のセンスであり、歴史に残る価値ある報道である。吉田調書の件で朝日の的確性を難詰する者達が絶対に知りたがらない事実でもある。偶に調査報道や私のブログに対して「後からなら何とでも言える」と反駁されたことがあるが、上記は事故の17年も前の記事である。

更に遡ると、朝日新聞は1980年に『原発の現場 東電福島第一原発とその周辺』を出版している。当時から推進反対を両論併記した入門書兼調査報道の一類型として、高い評価を受けてきた本である。このような鳥瞰的な視点を加えた福島第一原発の本を、推進側は遂に書き得なかった。『共進と共生』?『電力県ふくしま』?無価値とは言わないがあんなの所詮記念誌でしょ。

【3】政府事故調や吉田氏自身にバイアスがある

また、吉田調書を非公開にした政府事故調の問題点、更に言えば吉田氏自身のそうした姿勢に偏りがあることを無視している。政府はこの特集に対抗して吉田氏の上申書を公表、内容を抜粋すると次のようなことが書かれている。

これらの聴取結果書合計7通の中には、私が貴委員会(※編注:政府事故調)から聴取を受けた際に他人に対する私の評価、感情、感想を率直に述べた部分があ ります。これらは、私の事故当時の判断、認識を述べたものではなく、貴委員会からの聴取を受けた際の私の感情や感想を率直に表現したものであり、聴取時の 私の心理状態や聴取の雰囲気、聴取に当たった担当官との関係、前後の文脈等をきちんとふまえていただかなくては誤解を生んでしまうと危惧しております。

さらに私が貴委員会からの聴取を受けた際、自分の記憶に基づいて率直に事実関係を申し上げましたが、時間の経過に伴う記憶の薄れ、様々な事象に立て続けに 対処せざるを得なかったことによる記憶の混同等によって、事実を誤認してお話ししている部分もあるのではないかと思います。そのため、私が貴委員会に対し て申し上げたお話の内容すべてが、あたかも事実であったかのようにして一人歩きしないだろうか、他の資料やお話ときちんと照らし合わせた上で取り扱ってい ただけるのであろうかといった危惧も抱いております。

ハフィントンポスト記事の抜粋を参考)

吉田氏には申し訳ないが、言い分としては稚拙である。何故か。一つ挙げるとうした証言は「事実を誤認してお話ししている部分」があるのが当然と承知した上で、読み取るべきものだからである(オーラルヒストリーと見なせば既に一般化している)。現場にいた当事者が神様ではない、そんなことは当たり前である。また、感情で動く面があることを否定してはいけない。調書を入手した政府や朝日新聞がすべきことは、先ほども述べたようにそれをなるべく原形に近い形で提示することに尽きる。

ちなみに最悪なのは「墓までもって行く」であり、それを公然と肯定したのが「関係者に配慮」と言い換えて口ごもった原子力学会事故調である。文献踏査もろくったましないし、糞レポート以外の何物でもない。

上申書には国会事故調への懸念についても言及されているが、それは吉田氏が類型的東電社員だったことの証明である。例え調書の公開先を限定するにしても、国会事故調は立法府の事故調であり、党派的な判断基準で資料を制約すべきではない。国会事故調で津波問題に取り組んだ添田孝史氏は私のブログを紹介して頂いた際、小林論文を「新たな資料」とツイートしている。このことは、東電が小林論文を国会事故調に提出しなかったことを暗示する。吉田氏や政府事故調の態度にも同質の恣意性があるように思われる。

政府事故調以外に調書を示すのが問題なら、客観性を維持するために例えば民間事故調や学会事故調にも示すとか、やりようは幾らでもあった筈だし、相互に批判すれば良いだけの話。実際、政府事故調の主要委員は『福島原発で何が起こったか-政府事故調技術解説』で国会事故調を批判している。

多くの人間の生死に関わる決断を行なった事例が多数記録されている例としては第二次世界大戦の政軍関係者のものが代表的だ。米国は戦後、旧敵国関係者にも詳細な質疑を行ない、自国公式戦史に反映、調書自体も公開している。これは情報公開の本質である「判断を読み手に任せ、一方向の歴史観押し付けをしない」という観点から満点の対応と言えよう。

勿論、戦史研究の世界では、当人や遺族に許可を貰うハードルがあるのも知っているが、今回は政府事故調の作成した調書であるから、ライターの取材活動と同一レベルでは比べられないだろう。

【4】吉田特集の真価は更なる情報開示を促したこと

朝日新聞の吉田特集は、事故調査の進展に明らかにプラスの効果をもたらした。自民党が政権に復帰してから国会事故調の収集資料を非公開のままに留め置くなど後ろ向きの対応が目立ったが、スクープを受けて政府は合意の取れた関係者については調書を公開する方針を示したのである。全面開示で無い点は宿題だが、ただ盲目的に政府の言うことだけを支持し、或いは脊髄反射的に「左翼」を叩いて回る上っ面だけの右派軍事オタクや科学オタクやそれに同調するライター等には、このような成果は期待出来ない。

しかも政府事故調が調書を取った関係者は数百名に及ぶ。朝日新聞が撤退問題に一石を投じた件は耳目を集める手段としては有効かもしれないが、吉田特集の本当の価値はそんなものではない。吉田氏の後に続く、膨大な調書の開示へのトリガーになったことが重要。そこを意識しないで場当たり的に引用された僅かな分量の記述に良し悪しを述べても無駄である(しかも朝日新聞の記述を良く見ると別の内部資料も手に入れている)。

【結論】朝日新聞を叩いてるオタク共は『海上護衛戦』に墨でも引いて読んでろ

ここで挙げたような一部軍事オタクや科学オタク等は歴史に対する姿勢が朝日新聞以上に不誠実である。何せ「墓までもって行く」を直接間接に支持してるのだから。こんなあっけなく、ネット右翼の分派に過ぎないことを暴露したのは想定外だった。戦史研究では昔から問題になっていることなのに、「原発問題」に置き換えただけで全く応用出来ていない。そんなに吉田調書をはじめ、原発再稼動やら推進運動に不都合な記述が世に出るのが嫌なら、今後は歴史研究など一切止め、ナチスの手口に学んで焚書活動に邁進されたら如何か(傍迷惑極まりないが)。

最近、奇しくも『海上護衛戦』が角川文庫から復刊された。私の父はあの本の初期の版を持っていたが、当時は一部関係者の名前を伏字にしてあった。出版から約20年、戦後30年余りを経た再版時にこの伏字は公開された。朝日新聞が原発推進だったことも頭から抜けているアホで間抜けな軍事オタク達は、角川版を手に入れてもう一度墨でも塗ったら良い。そうすれば、理想的な『海上護衛戦』が完成する。

まぁ、墨塗り教科書、墓までお持ち帰りで満足する程度の頭でしかないのだし、『アーロン収容所』に出てくる絵本のシェイクスピアで学位を取った植民地人と同等の扱いが分相応だろう。

※ここで挙げた例が軍事オタクやライターの全てではないことは当然である。例えば山崎雅弘氏は常識的な感想をツイートしている。

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