ワタミが深刻な業績低迷に苦しんでいる。居酒屋チェーンを中心とする主力の外食事業の売上高がピーク時の8割まで落ち込み、平成26年3月期の連結決算は上場以来初の最終赤字に沈んだ。今期は安価な大衆店から高収益の専門店業態への転換に本腰を入れる計画だが、一方で、サービス業の「要」である人材の確保難が行く手に影を落とす。業績を回復軌道に乗せるためには、デフレ環境下で成功した事業モデルから脱却するだけでなく、従業員の労働環境や「ブラック」の評価が根付いた企業イメージの改善も急務だ。
「365日24時間死ぬまで働け」という表現を改めた――。
ワタミは今月19日、ホームページ上にこうした「お知らせ」を掲載し、社員6000人余りに配布している「グループ理念集」の改訂を明らかにした。理念集は創業者・渡辺美樹氏のメッセージをまとめた内部文書で、その激しい文言が、社員に過酷な労働を強いるブラック企業の証左だとみられてきた。
同社は「言葉が一人歩きし、誤解された」(広報)と釈明しつつも、批判が高まる発端となった6年前の過労自殺事件にふれ「ご遺族の心情を察し、表現は慎重であるべきだった」と、改訂理由を説明する。
「長時間労働の慢性化」
「勤務時間の不適正管理」
ワタミの労働環境をめぐっては、昨年設置した外部有識者委員会の調査報告書にも、その過酷さを厳しく指弾する言葉が並んだ。
これを受け同社は3月、運営する居酒屋の約1割に上る60店舗を今年度中に閉鎖する苦渋の決断に踏み切った。4月以降20店舗余りを閉じ、社員の別店舗への再配置を進めている。
従来は1店舗平均1.86人と少なかった社員数は今年度末に同2.2人まで増え、1人当たりの負担が軽くなるという。店長ポストが減ることで、社員のモチベーション低下という副作用も懸念されるが、桑原豊社長は「今年度の重点目標は、まず第一に労働環境の改善だ」と決意を語る。
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