東京に住むロシア人のビジネスマンから、こんな話を聞いた。
親ロシア派だったウクライナの前ヤヌコビッチ政権が2月に倒れ、ロシアがクリミア併合に動き始めた直後。欧州連合(EU)と米国は「経済制裁」をちらつかせ、クリミアから手を引くようプーチン政権に圧力をかけた。ロシア企業の関係者の間でも、緊張感が一気に高まり、固唾をのんで「制裁」の発表に身構えた。
■欧米は「口先だけ」
だが、その中身が首脳会議の開催凍結や査証(ビザ)の停止にすぎないと判明すると、ロシア人の会合で、高らかな笑い声が上がったという。貿易や投資の制限など、実質的にロシア経済に影響する制裁内容に至らなかったからだ。米欧は「口先では勇ましいことを言うけれど、実際には手出しなどできまい」というわけだ。
ずいぶん甘く見られたものだ。だが、ロシア人の見方だけが正しいとは限らない。実情はどうなのだろう。そう考えて、ちょうど来日していた「ビジネス・ヨーロッパ」という経済団体のトップに、ウクライナ情勢をめぐるEU経済界の見解を聞いてみた。この団体はEUの経団連に相当し、私がインタビューした相手のマルクス・バイレル事務局長は、EU加盟28カ国の産業界を束ねる欧州経済のキーパーソンである。
「とても残念なことがウクライナで起きている……」。バイレル氏は、質問がウクライナ問題に及ぶと、途端に口調が重くなり、渋々ながらの表情で、EU産業界の立場を説明してくれた。「ビジネス・ヨーロッパ」の理事会は普段なら日中の夕方までに終わるが、「ウクライナ情勢」を主要議題とした直近の会合は、議論が難航した。理事会は夕食をはさんで、翌日の未明2時すぎまで続き、激論の末にようやく5項目から成る公式見解を決定したという。
「欧州は米国と協調しながら強い役割を果たすべきだ」、「ウクライナ経済を破綻させてはならない」など、当然ともいえる項目に交ざって、私が「おや?」と感じたのは、3番目に並んだ対ロシア経済制裁に関する見解だ。米国とEUが対ロ制裁の拳を上げているにもかかわらず、欧州産業界として「制裁は望ましくない」と明言しているからだ。
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