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- 全焼した本殿前に立つ加々見勝八郎さん。「地域の宝」の再建に意欲を見せる=1月16日、三島市川原ケ谷
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- 火災前の滝川神社=2012年12月、古川久雄さん(三島市)提供
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鎌倉時代ごろから修験者のみそぎの地として知られた三島市川原ケ谷の滝川神社が昨年10月、放火によって焼失した。容疑者は今月12日に逮捕されたものの、由緒ある社殿への地元住民の思いは募るばかり。再建を目指して氏子総代の加々見勝八郎さん(72)らは既に動き出している。
神社のある山田地区に暮らすのは約30世帯。「神社は地域の宝だった。県外から訪れる方もいて、自分たちが思う以上に信仰を集めていた」と加々見さん。募金箱の設置や寄付金集めなどの地元での活動に力を入れる。必要資金は約3千万円とされる。住民らだけで賄える額ではないが、「何年先になろうと、何としても再建を果たしたい」と決意を見せる。
協力の輪は地区外にも少しずつ広がっている。昨年11月、三嶋大社の新嘗祭(にいなめさい)を前に全焼直後の滝川神社でみそぎに臨んだ三島商工会議所青年部は、祭りなどの場で募金活動をした。企画した青年部の伊丹雅治さん(37)は「募金してくださる方の再建への関心は強い。力になりたいので、昨年始めたみそぎもずっと続けていきたい」と協力を惜しまない考えだ。
三嶋大社の植松英生禰宜(ねぎ)も「木組みや彫刻など非常に高い技術が施されていた。あれだけ文化的価値の高い社殿が失われたのは大きな損失」と惜しむ。江戸時代から1988年まで8月の例祭前に大社の神職が滝川神社でみそぎをしていた縁もあり、支援する意向を示している。
<メモ>滝川神社は、みそぎの聖地として「滝不動」の名で民間信仰を集めた。昨年全焼した本殿は、安政の大地震(1854年)で全壊した三嶋大社を再建した宮大工の棟梁(とうりょう)平田伝之輔が建築。名工として知られた平田は三嶋大社の再建の時期に滝川神社周辺に居を構えたため、同時期に滝川神社本殿も手掛けたとされる。